クリエイターインタビュー

第13回:大人気タイトル続編開発を通じて感じたことは?【バンダイナムコスタジオ クリエイターを深掘り!】

バンダイナムコスタジオのクリエイターたちは、「自分の開発したゲームでみんなを楽しませたい!」という熱意を持って、ゲームを開発しています。その気持ちはどこからくるのでしょうか?この記事では、弊社のクリエイターの好きなモノや出来事を通して、ゲーム開発に繋がる想いを紹介します。

第13回目は、「Tales of ARISE – Beyond the Dawn」のプロジェクトマネージャー/プロデューサーの押山 萌香さんにお話を伺いました!

『Tales of ARISE – Beyond the Dawn』プロジェクトマネージャー/プロデューサー 押山 萌香

「Tales of ARISE – Beyond the Dawn」
プロジェクトマネージャー/プロデューサー
押山 萌香

— 現在の所属や業務内容を教えてください。

大学卒業後、新卒でバンダイナムコゲームスに入社しました。ただ、採用試験の時は旧ナムコでした。ちょうど社名が変わるタイミングで、バンダイナムコゲームス新人1期生という形で入社させていただきました。

入社後は、複数のプロジェクトにまたがって関わっていたところを「アイドルマスター」シリーズの当時のディレクターの方に誘っていただき、それからしばらくは新作アイドルマスターの開発に関わっていました。

その後、新人研修プロジェクト「GEMini」の立ち上げに関わりました。実は「GEMini」という名称の名付け親だったりします(笑)。

その後、「テイルズ オブ」開発チームの方にお声掛けいただいて、直近は「Tales of ARISE」「Tales of ARISE – Beyond the Dawn」に関わっていました。

—「GEMini」の立ち上げについて詳しく教えてください。

ある日突然、当時の上司から「新人研修でゲームを作ってSteamの専用レーベルで出したい。なので、よろしく!」というとんでもない話がありました(笑)。

その当時、全職種横断のゲーム開発の研修はここ数年行われておらず、さらにBNS単独でSteamに専用レーベルで、という実績も知見もなく私も詳しくない中、なんとか形にせねばと慌ただしく準備を進めていました。そこに加えて、企画職用の研修プログラムの企画立案も私が進めるなど、かなりタイトなスケジュールでした。

正直研修中のメンターの方々の貢献が非常に大きいと思っていますし、実現に尽力してくださった各組織の長の方々、ほかにもいろいろお手伝いをお願いしたり、ご協力いただいたりした皆様がいなければGEMiniはここまで続いていないと思っています。自分がやったのはその場を作るところまでなので……。そう思いつつも、最終的にその年はSteamでのリリースはしていませんが、あの研修内容を軌道に乗せるのはハードでしたね。

今考えれば、これまでゲームデザイナー、ディレクターとしての企画の立ち上げ、計画、実行、調整をした時の経験をフルに生かし、また、たくさんの方々にご協力いただいて何とか研修を実現できたと思います。

現在では、毎年のように新人研修で開発した作品をSteamで発表できるようになったので、その土台を作れたことは、とても嬉しい経験でした。

新人研修プロジェクト『GEMini』にて2022年度に開発された4タイトル。Steamにて無料配信中
新人研修プロジェクト『GEMini』にて2022年度に開発された4タイトル。Steamにて無料配信中

— 現在の仕事で、大変だったことや頑張ったことなど、印象深いエピソードはありますか?

テレワークが主流になって久しいですが、コロナ禍での開発・チームビルディングは、今振り返っても印象深いです。

「Tales of ARISE」の開発終盤でテレワークに強制移行になったのですが、一斉に何も準備せずテレワークに切り替えるわけにも行かず、数名ずつテストでテレワークしながら問題点を見つけて解決しながら徐々にテレワークする人を増やすという動きをしていました。

出社していただいている人たちがいつ倒れるか、自分がいつ倒れるか、見切り発車で全員テレワークにしてしまった方が良いのじゃないか、焦っていくつか小さなパニックも起きる中何とか全員移行し、移行後も出てくるたくさんのトラブルを毎日遅くまでチームで話し合いながら進めていきました。誰かがパニックを起こしたら他の人が冷静にフォローして、を繰り返していた覚えがあります。

移行後も、しっかりコミュニケーションをとりながら開発する傾向にあったチームがバラバラになってしまったということで、そこをどうフォローアップするか、全メンバーが孤立しないようにどう声を掛け合っていくか、開発終盤の詰めをどう担保していくか、通常の開発と並行してチームのリビルディングにも気を使いました。とにかく連絡を取り合うことを義務付ける体制を作り、開発が今どういう状態になっているかの確認や、各人の不安の吐き出しができるようにして何とか乗り切っていったと思います。

Tales of ARISEは、開発終盤で、ある程度チームメンバー同士の関係性が出来上がった状態でテレワークに移行したのですが、その後の「Tales of ARISE – Beyond the Dawn」チームはチームの立ち上げからテレワークで、これもまた初めての経験でマネジメントチーム全員が戸惑いながら進めていきました。

とにかくチームの動きが見えるように赤裸々に現状を話す、小さくても毎週成果をスクショして共有する、出来上がったゲーム画面を全員で確認して議論する機会を作る、ということを徹底して全員が現状を把握し、同じゴールを見て自分ごととして参加し、走れるような体制づくりを目指すことを意識してチームビルディングを進めました。

同じコロナ禍、テレワーク問題といっても、特にゲーム開発は時間がかかるものなのでタイミングによってプロジェクト・チームの状況はまちまちで、どのタイミングでコロナ禍に遭遇したかでやったこと、得られた知見、経験は違うと思います。3年経っても大変なのは、組織が3年前とは違う状況なので何度も「初めて」の事態に遭遇するのが大変なことでした。

テイルズ オブ アライズ -ビヨンドザドーン

仕事に取り組むにあたって譲れない「自分ルール」はありますか?

とにかくゴールを明確にして常に意識する努力をしようとはしています。できているかな……といつも心配ですが(笑)。

ゲームを作るのもチームのマネジメントをするのもすべてが選択の連続で、その選択の根拠は何か、それは最終的にチームのゴールやゲームのコンセプトを意識した選択か、を常に意識しています。

そのためにも実は忘れがちな「そもそものゴールやコンセプトをしっかり立てる」ということも大事だし、今の状態がそのゴールと比較してどの程度差があるのかも考えるようにしています。

プロジェクトマネージャーっぽいことを言っている気がしますがディレクターの時もやっぱりこれは意識していたなと思っていて、何でもかんでも面白そうだからやってみよう、やった方が良さそうだからやろう、ではやりきれないので、選択肢をいつも取捨選択していたと思います。考えてばかりだからいつもヘトヘトです(笑)。

「これだけは自信がある」と言えることはありますか?

いろいろ極まった人たちばかりの会社で「自信があります」と言いにくいのが本音ですが、人に伝えるためには手段を選ばないようにはしています。

ゲームデザイナーの時も今もそうなのですが、結局はチームの皆さんにやりたいことを伝えてそれを一緒に作っていくことが仕事です。そのためになにをどうしたいのかを伝えるのが一番重要だと思います。

大体はパワポやエクセルでお堅い資料を作ることが多いのですが、結局「面白い」ものを作るのにお堅い資料だとニュアンスが伝わらないことも多く、苦悩の連続です。

美術2の成績ですが頑張って絵をかいたりコンテをきったり、ゲーム画面を捏造したり、おしゃれなデザインを研究して真似た資料を作ったり、動画を撮ったり作ったり、小説を書いたりコスプレしたり小芝居をしたり、チームの皆さんやプレゼン相手にどうにか伝えるために、工夫は欠かせません。

最近はゲームデザイナーではなくマネジメント側なのでさすがにはっちゃけたことをすることも減りましたが、先日久々にほんの少し、最終イメージのサンプルサイトもどきを作って説明をしていました。

最初は、お堅い資料を作っていたのですが、なんかうまく伝わらない気がするなぁと悩んで、そういえば昔は自分でサンプル作っていたじゃないか、と思い出して突貫でそれっぽいものを作ってみました。と言いつつ、他の方も意識していることですし、最近はお堅い資料の方が多いので自信があります、と言いにくいのですが。それでも、「伝える」ことを重視してお堅い資料だろうとフォント選びから気にするようにはしています。

最後に座右の銘を教えてください!

「人生、清く楽しく面白く」です。

小学生のころからずっとこれを座右の銘にしています。たぶん漫画かなにかにあったのだと思いますが、とにかく最終的には自分が楽しい、面白いと思うことをしようと思って日々を過ごすようにしています。

当然人生嫌なことや面倒なこともあるのですが、その中で楽しいことを探したり、最終的には自分の楽しい方向にもっていけるようにしたり、嫌なことがあった日は必ず切り替えて好きなこともして、最悪な一日だった、ということを無くそうとしています。

入社した時のメンターの口癖が「面白いものを作るんだったらその仕事を楽しくやらないと」だったので、ゲーム開発もこの座右の銘と同じかなと思っています。正直ちょっとモヤモヤしながら進める仕事は最終的に没になったりするので「楽しい!面白い!」と自分が思いながら過ごしていくべきだなと思います。

ありがとうございました!

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