第10回:絵描き志望がなぜ演出担当エンジニアに?【バンダイナムコスタジオ クリエイターを深掘り!】

第10回はゲーム内の“見た目”の部分を担当する演出パートリードエンジニアの三宅洋平さんにお話を伺いました。

もともとは絵描きになりたかったという三宅さんがエンジニアになったきっかけや、「ゲーム業界ってすごい!」と衝撃を受けた先輩のひと言、さらにはプライベートでもゲーム開発をしているというゲーム愛に溢れるエピソードがたくさん!

また、大ヒットタイトルの立ち上げに携わった経験から語る「チームで仕事をする上で一番大事なこと」なども伺いました。明日の仕事に活かせるヒントが得られる記事ですのでぜひお読みください!

 

第3スタジオ第2グループ
第5プロダクション
テクニカルセクションテック/演出パート
リードエンジニア
三宅 洋平

 

―現在の所属とお仕事内容を教えてください。

 

現在は第3スタジオ第2グループ第5プロダクションという部署で、新規ゲームタイトルの開発に向けて演出パートリーダーという立場でプログラムを組む仕事をしています。職種としてはエンジニアですね。

 

ゲーム内の演出や映像に対してプログラムを組んだり、やりたい演出を実現するためのツールを作ったり、新しい表現を提案したり。主にゲームの見た目に関わることを全般的に担当していますね。

 

例えば、ここにあるモノに対して、こちらからライトの光が当たったらこっち側に影ができて、ここは輝く、とか。

 

見た目に関わること、というとテクニカルアーティストというグラフィックにガッツリ寄り添う職種もあるのですが、そこまでグラフィック専任というわけでもなくて、ゲームのプログラム部分を担うクライアントエンジニアとの中間的な立ち位置です。

 

―ゲーム内部のグラフィックを描くアーティストさんと、それを実現させるエンジニアさんの間を繋ぐ重要な役割ですね。バンダイナムコスタジオに入社される以前はどんなお仕事をされていたんですか?

 

バンダイナムコスタジオに入社したのは大体2年半くらい前なのですが、前職もゲーム会社に勤めていました。

 

そこではユーザーインターフェースという、例えばゲーム内でタップするボタンだったり、スコアを表示したりとか、そういう部分を専任していましたね。

 

その以前もゲーム会社で働いており、そこでもゲームの見た目に関わることをやっていたので、会社は変わってもやっていることは変わっていません。

 

―なるほど、これまでもずっとゲームをどう見せるかという部分に携わってこられたのですね。キャラクターのデザインなどではなく、ゲーム全体の演出に興味を持ったのはなにかきっかけがあったんですか?

 

実は父親が絵描きで、僕自身も昔は絵描きになりたかったんですよ。それもあって昔から美術的なことが好きで、自分が作ったキャラクターを動かしたいなと思ってゲームの専門学校にいきました。

 

そこでキャラクターデザインも学んだのですけど、思ったよりゲームのプログラムの成績が良かった事と、あとはプログラムでも絵が描けるんだっていうことが分かって。そこからは、プログラムによってキャラクターをどう動かすかとかどういう見た目に出来るかとかを学んでいって、現在の仕事に至るという感じですね。

 

 

―ご自身が絵描きになりたかったというところがルーツなのですね。現在は、どのようなことに取り組んでいるのでしょうか?

 

今はUnityという開発環境を使ってゲームを開発しているんですけど、そのUnityの仕組みというのがものすごい速さで変わっていく過渡期みたいな状態なんですよ。

 

その中でも新しい描画を組み立てるための仕組みとしてUniversalRPというものが最近では主流になりつつあって、その変化を追いかけるのに必死です(笑)それこそ1年に2回ほど大きなバージョンアップがあって、半年に1回はそれを取り入れていかないといけない。

 

日々新しい表現ができるようになる一方で、これまで出来ていた表現が出来なくなったりすることもあって、そういった面での技術研鑽が必要なのでそのあたりはすごく挑戦し甲斐があるなと思っています。

 

―Unityは無料で使えることもあって、一般の方もゲーム作りに挑戦しやすくなりましたよね。

 

そうなんです。ゲーム作りの敷居がすごく低くなったのはいいことですよね。ただ、細かく作り込んだりするにはUnityの内部をしっかり見て理解しないと使いこなせないところもあるんですよ。

 

Unityの基本的なマニュアルは存在するんですけど、その通りに作るといかにも「Unityで作ったな」 というものになってしまいます。

 

Unityが一般的に使えるものだからこそ、会社の色を出したり、作品独自の特徴を打ち出すための差別化にいつも苦労していますね。

 

―現在は、演出パートのリーダーというポジションでお仕事をされているということですが、仕事をする上で気をつけていることはありますか?

 

技術的なことで言うと、出来るだけ負荷が軽い素材で綺麗な見た目を作るという工夫は心がけています。例えば、演出を良くしたいからといってデータサイズがすごく大きかったり精細な画像をゲーム上で出そうとすると、動作が重たくなっちゃうんですよ。

 

そういうところのバランスはすごく大事なので、立派な演出をするために、単純にデータをリッチにするのではなく、いかに少ない素材で綺麗に見せることが出来るか。この部分では特に工夫をしていますね。

 

―アーティストの方が描くものは精細で高画質といったイメージがあるので、ゲームの動作とのバランスは難しそうですよね。それぞれの立場の意見をどうやってまとめていくのでしょうか?

 

その難しさはめちゃくちゃあります!(笑) アーティストさんが描いてくれたものを表現するためにプログラムを組んでいるのですが、明らかにデータが重たいものはちゃんと伝えて削ってもらうこともあります。

 

そのやり取りで、納得してもらえるところを探るというのは常に大事にしていますね。コミュニケーションをとる上でも、何に不満を持っているのかを聞き出したり、プログラム的にこういう見た目だったら出せますよっていう提案をこちらから出すとか。

 

アーティストさんが必ずしもプログラムに詳しいとは限らないのですが、結局ゲームってプログラムで動くんですよ。

 

だからこそ、アーティストさんがやりたいことをプログラムからの切り口で考えて提案して、双方納得した状態で進めるようにはしています。

 

―そのためには、膝を突き合わせて相談する時間をたくさん設けるんですか?

 

そうですね。ただ、今はどうしてもリモートワークが中心で文字ベースのやり取りになってしまうんですよね。そこで大事にしているのは、画像を添えて説明することですかね。やっぱり見た目の説得力ってすごく大きくて。

 

例えば、画像の解像度をどこまで縮めるかという話でも、「これ半分にしておきますんで!」 と突っぱねちゃうとすごい感じ悪いじゃないですか。そういう時に、「画像の解像度を半分にするとこれくらいの見た目になるんですけど、いかがでしょうか?」 という感じで見てわかるようにしています。

 

 

―ご自身が絵描きになりたかったからこそ、アーティストさんの気持ちに寄り添った進め方が出来るのかもしれませんね。では、これまでゲーム業界でお仕事をされている中で、なにかターニングポイントになったような出来事や印象深いエピソードはありますか?

 

新卒の頃の話なのでもう20年近く前のことなんですけど、先輩に教えてもらった「ロードが間に合わなかったときの工夫」ですかね。

 

ゲーム内のキャラクターが次のマップに移動しようとしたときに、「そのマップを読み込めなかったらどうしたらいいか?」っていうのを先輩に振られて。その時新卒だった僕は、全然分からなかったんですよね。

 

テクスチャーを軽くしますか、とかロード画面を流しますか、とか普通の答えしか思い浮かばなくて。その時先輩が教えてくれたのが、「そういう時は、主人公をコケさせればいいんだよ」って。

 

要するに主人公をパタッて転ばせて、その間にロードすればいいんだっていうことなんですが、当時めちゃくちゃ衝撃を受けたんですよね。そんなことしちゃっていいんだ、みたいな。

 

プレイヤーがキャラクターを走らせるから、マップを急いで読み込ませないといけない。でもキャラクターが走るから、転ぶ。転んだら起き上がるから、その間にロードできる。

 

しかも、走っているキャラクターが転ぶことって全く不自然じゃないんですよね。それに1回転ぶと、操作しているプレイヤーもそれ以降は走りすぎない工夫をする。

 

―たしかに、あんまりスピード出したらコケちゃう!って思うと自然と走らせないようにするかもです。

 

そうそう。その発想が本当にすごいと思って。例えば、工場で使うような機械のプログラムだとすると、ちょっとでも変な動きがあったらそれはダメとみなされるじゃないですか。

 

でも、ゲームでは面白かったり、自然だったり、世界観に馴染んでいたら許されるんだなっていう。問題を解決するための答えがひとつではないっていうところが、ゲーム業界の面白いところだなと。「ゲーム業界ってスゴいっ!」と思いました(笑)

 

―ゲームのタイトルごとに問題を解決するためのアプローチがすごく多彩にある。ゲーム業界の奥深さが垣間見えた気がします。三宅さんのゲーム愛も伝わってきました(笑)

 

ありがとうございます。ちょっとアツくなっちゃいましたね(笑)

 

 

―ゲーム業界っていうと、自分が考えたこういうゲームを作りたい!っていうこだわりの強い方が多く働いてらっしゃるのかなという印象もあるのですが、三宅さんは働くうえで譲れない「こだわり」や「自分ルール」はありますか?

 

面白いゲームを作るためには、楽しい気持ちじゃないと作れないなっていうのはいつも思っていて。それも、自分一人が楽しいって思っているのではなくて、チーム全体が、作っているゲームに対して期待を持っていたり、楽しい気持ちで取り組めるように、環境づくりに注力するというのを自分ルールとして持っています。

 

先程のアーティストさんが表現する上でなにか難しい問題があった時に、別の切り口から提案するのも自分ルールですかね。

 

―たしかに、チームでひとつのプロジェクトを進めている以上やっていることに対する期待感があるかないかで仕事へのモチベーションが変わりそうです。チーム全体が「このゲーム面白い!」っていうマインドでいる状態が一番良い環境だと思ったのは、なにかきっかけがあったんですか?

 

前々職時代に「新規オリジナルゲーム」を世に出すとなった時、社内がものすごく盛り上がっていたんですよ。これはいける!これは面白い!とチームみんなが思っていて。

 

その時の勢いを知ってしまったので、みんなが売れる!と確信を持った時はチームや会社の雰囲気が良くなるんだなあという実感があります。

 

―チームの雰囲気をいい方向にもっていくために実践していることはなにかありますか?

 

例えば、自分でめちゃくちゃいいなって思う表現ができたらチーム全体のチャットで「こんなのが出来ました!見てください!」と送って見せたり(笑)

 

チームには新卒の方からベテランの方までキャリアがバラバラの方が集まっていますが、下手に遠慮はしないようにしています。

 

なんというか、自分が頭良くても、それで嬉しいのって自分だけなんですよね。変に格好つけて、完璧な見た目になるまで見せないとかではなくて、「こんなのどうですか?」とか、「僕、これ良いと思うんですけど」みたいなことをフランクに出していく。そうすることでチームのみんなも自分の好きなものを言いやすくなるのかな、と思っています。

 

―三宅さんの好きなもの、と言えばやっぱりゲーム開発ですか?プライベートでもゲームを開発していると伺ってちょっとびっくりしました(笑)

 

そうですね、プライベートでもゲームを作っています。仕事で見た目のプログラムをしていると、見た目以外のところを触れないんですよ。せっかくならそれ以外の、ゲーム全体を触ってみたいなというのがプログラマーとしては思うところで(笑)

 

例えば、バナー広告のプログラムなどは仕事ではまず書くことがないんですよね。でもプライベートで作っているゲームだったらそういうところも全部触れるし、そういった発散をするからこそ仕事では見た目の部分に全力投球できるという感じです。

 

三宅さんがプライベートで開発したスマートフォンゲーム「時効1分の世界」

 

―ゲーム全体のことを分かっておけば、それが見た目に還元できることもあるというか。

 

そうなんです。なんとなくこの辺の処理は重たいから、豪勢な見た目はちょっと控えようとか。見た目以外のプログラムを熟知することも、見た目を作ることに繋がっていますね。

 

―今後の抱負や、チャレンジしてみたいことを教えてください。

 

Unityが出てきてゲーム開発の敷居が低くなった一方で、やっぱりUnityっぽいゲームだったり、AIによる画像生成とかも含めてゲーム内の表現が画一化されているな、ということはちょっと思っていて。

 

その中で自分独自の色というか、ひと癖あるような印象付けができるような表現はちゃんと考えていきたいなと思っています。

 

ツールがどんどん進化するので、気を抜くと当たり前の表現になっちゃうんですよ。それこそAIも何でも出来るようにはなっていきますけど、人間が作ったからこその面白さ、あるいは表現というものがあるはずなので。そこは自分の持ち味をしっかり表現できるように向き合っていきたいですね。

 

―最後に、座右の銘を教えてください。

 

「なにくそ」ですかね。幼稚園の時の先生に、わからなくてもいいからその言葉だけ覚えておけと言われました。

 

意味としては「不屈」ということなんですけど、当時「不屈」って言われていたら多分覚えていないんですよ。なにくそ、っていう小さい子でも覚えやすくて言いたくなる言葉だったのが印象深いですね。

 

仕事をする上で、うまくいかないことや嫌なことがあった時に、そこでしょげちゃうのではなくて「なにくそ」という気持ちでもう1段階上を目指す。

 

生きていれば大変なことはたくさんありますから、そういう時に負けてしまったり、すぐに辞めてしまわないようにするための指針になっているなと思います。

 

―先輩のとあるひと言で「ゲーム業界ってすごい!」と感動したという三宅さん。20年経ってもその感動は色褪せず、常に新しい表現を求め続ける三宅さんが次にどんなゲームを作るのかとっても楽しみです!三宅さん、ありがとうございました!

 

前回「第9回:自分の得意を広げることで応用できたこととは? 」はこちら

 

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