『テイルズ オブ アライズ』ができるまで(後編)

人気RPGシリーズ『テイルズ オブ』シリーズ最新作として、PlayStation5(※1)、PlayStation4(※2)、Xbox Series X|S(※3)、Xbox One(※4)、STEAM(※5)にて、2021年9月に発売された『テイルズ オブ アライズ』。『テイルズ オブ アライズ』ができるまで(前編)では、開発の紆余曲折から、グラフィックやバトルシステムについての開発経緯をお聞きしました。後編では、さらに深い開発秘話や、いまだからこそ語れる苦労したポイントなどをお聞きしました。
なお、座談会は前編に引き続き、Zoomによるオンライン形式で実施されました。(2022年1月実施)



『テイルズ オブ アライズ』の開発を担当するプロジェクトメンバー

田中 成昌
開発プロデューサー

池上 修司
プロジェクトマネージャー
次世代機版 開発プロデューサー

香川 寛和
ディレクター

岩本 稔
アートディレクター
キャラクターデザイン

小林 弘幸
グラフィックプログラマー

押山 萌香
プロジェクトマネージャー

最後に調整したシオンの描きかた

■田中:香川さんはディレクターの傍ら、シナリオ面の見直しもしていましたよね。

●香川:ええ。シナリオでは、開発終盤にシオンに関する部分に手を加えました。 理由としては、ゲーム序盤のシオンはキツめの性格の女の子なので、どうしてもツンケンしているシーンが多くて…。
一見言動がキツく見えてもしっかりと芯を持っていて、かつ彼女ならではの可愛らしい一面を感じてもらえるようなキャラクターに見えるよう、シナリオを調整しました。実際に彼女の魅力をどう感じていただけたのかはプレイヤーの皆さんがそれぞれに感じてくださっているかと思いますが、少しでもシオンが好きになってくれていたら、最後まで調整して良かった、と思います。

■田中:たしかに以前のシオンは、かなり尖っていた印象ですね。

●香川:シオンは仲間たちとともに、ある目的のために突っ走るわけですが、その背景は謎に包まれています。それまでのシオンは「謎を持っているんだな」ということが感じられにくく、ただキツい女の子が何かの目的のために戦うようで、シオンの隠された部分が感じ取りにくい描きかただったんです。そこをセリフやカットシーンの表情などを調整することで、シオンもちゃんとバックボーンがあり、何かを抱えているからこそキツい一面が出てしまう女の子なんだな、と感じてもらえるようなものを目指しました

Tales of Arise™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

■田中:シナリオの描きかたといえば、開発終盤にショートチャットを追加していましたよね?

●香川:すみません、追加させていただきました(苦笑)。それまでのものでも十分足りていたのかもしれませんが、見直してみると、道中でキャラクターたちがワイワイと盛り上がったりするような描写が足りないなと、『テイルズ オブ』シリーズとして考えたときに思ったんですね。他愛もない話から、物語の中身を補助するような内容まで、本当に終盤ですが追加させていただきました。

■田中:あと、今回はスキットの表現が大きく変わりましたね。結構作り直していた印象です。

●香川:あの形式になるまでには時間が掛かりました。最初に作ったのはもっと漫画的な表現で、描いていたのですが、いろいろな人にチェックしてもらったところ「今回のキャラモデルに対しては誇張しすぎている」という意見が多かったです。そこからまた再度、一から表現を作り直したりして、いまの形に落ち着きました。たしかにいまのほうが誇張しすぎず、かつ遊びも加えられたので、いい表現になったと思っています。

『テイルズ オブ』シリーズを作るということ

Tales of Arise™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

■田中:何年も開発をしていただいて、大変だったと思います。開発プロデューサーとしても、感謝しかありません。プロジェクトを長く続けていく中で、大変だった時期も耐えながら『テイルズ オブ アライズ』の開発を続けられたのは、どんな想いがあったのか聞いてみたいです。

●香川:とくに辛いとは思いませんでした。私自身が、「もう疲れたから仕事したくない」みたいな感覚はあまり持たない人間な部分もありますが……。それよりも純粋に僕は『テイルズ オブ』シリーズが大好きで、そのおもしろさを途絶えさせたくない、もっと広いプレイヤーの方々に遊んでほしいという一心で取り組んでいました。根本にそういった気持ちがあったからこそ、最後まで走りきることが出来たのだと思います。とはいえ、ディレクターとしての目から見ると、やはり個人、チームによっては疲弊してしまっている方々もいらっしゃいました。
しかし、大変な時期を乗り越えてお客様に喜んでいただけて良かったなと思います。

■田中:ゲームからも、開発への取り組みからも、『テイルズ オブ』シリーズへの愛や想いは、本当にスタッフ陣から感じました。その想いこそが、クオリティにもつながったように思います。

●香川:僕は『テイルズ オブ』シリーズが作りたくてゲームクリエイターを目指しましたから、いまが楽しくて仕方ないんですよね。

■田中:『テイルズ オブ』シリーズといえば長い歴史を持つ作品です。歴代シリーズ作品に関わったスタッフも多いですよね。開発初期から大きく変えたところも多いので、スタッフたちからの反発などはありましたか?

●香川:本当に最初期のころは、実存感を重視しようという方向性でした。アクションもリアリティを重視して、重々しいようなアクションでしたね。それを作っているうちに、スタッフたちが「もうこれは『テイルズ オブ』シリーズではないのでは?」という声が大きくなってきて。ゲームとしては、すぐにその方向性は諦めました。岩本さんは、絵作りのほうではどうでしたか?

●岩本:『テイルズ オブ アライズ』では踏襲すべき点と、変えていくべき点をすべて見つめ直しました。たとえばなぜ必殺技名を叫びながらくり出すのか、はたまたなぜ回復アイテムの「グミ」で回復するのかまで見直しました。何もかも再検討しようと考えてたときは、正直迷走していたと思います。もう「ほかのタイトルのRPGでいいんじゃないか」という声さえ聞こえてきました。『テイルズ オブ』シリーズは長いタイトルですし、やはり思い入れの強いスタッフも多いですから。そんな中、「継承と進化」というワードをもとに、『テイルズ オブ』の良いところは残し、進化させるべき部分は進化させるという方向性に決まり、軌道に乗ったイメージです。正直、それまではかなり不安でした。

Tales of Arise™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

●香川:あと、スタッフ全員がそうだったのですが、『テイルズ オブ アライズ』はこれまでのものから変えた部分が多いので、『テイルズ オブ』シリーズファンに、本当に受け入れてもらえるのか心配で。開発が終わってもまだドキドキだった中、いよいよ発売を迎えて世界中のファンたちから感想をいただけたときは、ようやくホッとしました。

●岩本:僕も同じ気持ちです。ファンの方々から「おもしろかったです」とか「あのキャラクターが良かったです」と感想をもらって、ようやく安心しました。「いろいろと練ったけど本当に大丈夫かな」みたいな気持ちが発売までずっとありましたが、ファンの方々に喜んでもらえたおかげで、いまはやり切ったと思っています。

苦労の連続だった開発裏話

■田中:本作の開発が最終的には順調に進んだのも、押山さんなどのスケジュール管理のおかげだと思っているんですよ。どんな苦労がありましたか?

●押山:開発終盤になると、「もうこれはこのやり方だとゲームに入れることができないから別のアプローチをしよう」という要素も出てきました。全スタッフが、より良い作品にしたい気持ちはもちろん分かります。ですが、発売までのスケジュールは迫るわけで。そこをどう解決するのか、解決できるように動くのかの見極めは苦労しましたが、それが私たちの仕事ですから。

●池上:次世代機版の開発チームとしては、現世代機チームがこだわって作ったものを、再度もう1度移植開発しなきゃいけないわけで。そこをどう間に合わせるのか、といったせめぎ合いがありましたね。

●香川:スケジュールを守るために、これなら順調にいけるだろうと予定を組んでもらうわけですが、開発としてはもっともっとブラッシュアップしたいから、「どうにかしてくれ」と言うわけです(笑)。そこを押山さんが取り入れたほうがいい、やめるべきだと取捨選択してくれたので、次世代機チームともうまくできました。

●押山:スケジュールは優先させなければいけないので何でもかんでも入れてOKとはしないというスタンスをとりつつも、開発側が入れたい要素で「絶対それはいれたほうがいいな」と感じたものは何とか入れられないものかと、表向きは怖い顔をしつつも裏でスケジュールとにらめっこをしてましたね…(笑)。

●池上:もう最後のほうのスケジュールは、1週間に2回は変更があったような気がしますね。

●押山:あと、私はRPGの開発に関わるのが初めてで、今回RPGはメチャクチャに大変なんだということがわかりました。初めて会議したとき、何を開発しなくてはならないのか羅列していったのですが、もう開発すべき要素が多すぎて、何を優先すべきなのか開発側も把握し切れていなかったんです。これはひとつひとつを確認しないと、不都合が生まれるなと思い、その都度スケジュールを確認したり、整えることに尽力しました。

■田中:今回、世界同時発売なのも大変でしたよね。

●押山:はい。これまでの『テイルズ オブ』シリーズは日本語版が完成してからローカライズして、海外版を発売していました。ですが、本作は全世界同時発売です。そのため、翻訳にどれだけ時間が掛かるのか、ということも考慮してスケジュールを組む必要がありました。テキスト翻訳、ボイス収録もあるので、そこの情報共有はとても苦労しました。

●香川:とくに、先ほど言ったシオンのシナリオを調整する際には本当に手助けしてもらいました。これは反省すべきことですが、それまではスケジュールをしっかり管理しての開発が、ほとんどできていなかったんです。世界同時発売というのも初めてだったので、押山さんたちに管理していただいた意味がすごくありました。

●押山:「このエピソードを追加したいです」と言われたら、「いつまでですか? テキスト翻訳はありますか? 英語の音声収録はありますか?」と全部明確にする必要があって。しかも海外はコロナ禍の状況がより大変で、地域によってはロックダウンしていたり、収録スタジオ閉鎖ってこともあって、より時間が掛かりました。

●香川:これも先ほどの話ですが、ショートチャット追加はめちゃくちゃ大変でした。押山さんが「シナリオが何日までにFIXしているならならいいよ」と言うので、急いでスタッフ総出で追加したいものをリスト化して……(苦笑)

●押山:その裏では翻訳担当などとも、「さらにあと何日までなら伸ばせますか?」などと交渉してましたから(笑)。ただ、やはり入れたおかげでゲーム全体が良くなったと思います。

■田中:岩本さんと小林さんは、グラフィック面での苦労はありましたか?

●岩本:私はアートディレクターでもあったので、みんなのゴールを定める必要がありました。当初の発売予定日でには、100点を超えた200点を目指して開発に取り組みました。100点というのは、その当時発売されていたゲームや、その時考えられるテイルズの100点のグラフィックです。ただ、発売するのは数年先なので、開発を続けていく中で、お客様はもっと良いビジュアルや価値にふれて、目指していたものが古くなってしまうかもしれません。つまり開発初期は200点のテイルズビジュアルになるよう想像し、発売時には100点以上になるような絵作りを目指しました。うまくいかないことも多々ありましたが、僕としてはつねに楽しかったので、大変ではありましたが、苦労とは思いませんでした。ただ、それを実現するために小林さんに無茶を言うこともあったので……。

●小林:いえいえ。

●岩本:普通、高い理想の画作りを掲げてお願いすると、そこに到達するまでかなり試行錯誤をして時間がかかりますが、小林さんは想定通り、想定以上のものを提案、制作してくれました。本当に小林さんだから実現できたことも多いんです。僕の中では小林さんはプログラマーでありながら、アーティストだと思って接していました。

●小林:ありがとうございます。でも、僕はプログラマーですよ(笑)。

●岩本:気持ちとしては、アーティストで(笑)。
キャラクターデザインについて、決まったときはうれしかったのですが、果たして僕がデザインしたキャラクターたちを、『テイルズ オブ』シリーズファンの皆さんが迎え入れてくれるのか、とても不安でした。正直、プレッシャーが強くて、つねに胃が痛いような感覚で。もちろん未だにいろいろ意見はあると思いますが、ファンの方々から「好きです」みたいな声を聴いたとき、ようやく肩に乗った重しが取れたような感覚でした。


Tales of Arise™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

コロナ禍での開発

■田中:『テイルズ オブ アライズ』は2020年以前から開発していたので、コロナは誰も経験していなかった中で、テレワークなどに移行するのはなかなか大変でしたよね。

●押山:そうですね。ただ、やはりコミュニケーション部分などで、見えなくなる部分はあるなと予想していました。ですので、無理やり毎日話をする時間を作りました。何かが起きたらミーティングをするのではなく、何もなかったとしても会議をしましょうと。当初は1週間に1度くらいでしたが、終盤はもう毎日朝と夕に1回ずつやって、開発ペースがどうなのか、つねに確認する日々でした。無理やりそれを作ることが、コロナ禍でのコミュニケーションにつなげられたのかなと思います。

■田中:ただ幸いにも、開発メンバーが一からコロナ禍に入ったわけではなく、ある程度の関係性があった中でのテレワークの形だったので、やり取りがしにくいということは少なかったかもしれませんね。

●池上:次世代機の開発はユークスさんとのやり取りだったので、とくに影響がありました。次世代機版の開発はコロナ禍でしたので、開発を担当していたユークスさんとも、リモートでのやり取りでした。結果的には問題なく進んでいたのですが、どうしてもリモートでは解決できない問題があって。
PlayStation5には、コントローラーから感触が伝わる「ハプティックフィードバック」があり、本作も対応しています。コントローラーの感触を確かめ合って言語化し、皆で共有するのは、どうしてもオンラインではできなかったことです。そこはユークスさんにお越しいただいて、みんなで感想会みたいのをやりましたね。

最後に

Tales of Arise™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

■田中:皆さんのおかげで、素晴らしい作品になったと思います。最後に、『テイルズ オブ アライズ』で注目してほしいポイントを教えてください。

●香川:ビジュアル表現の進化と、そして脅威感のある敵を倒す爽快感。それらを感じながらも、入り込みやすいストーリー体験を楽しめます。『テイルズ オブ』シリーズが初めてという人にも、ぜひ遊んでもらいたいですね。

●小林:本作はすべての面において映像表現が向上しています。バトルの術技演出や、イベントシーンなど細かいところからも、映像表現の進化に注力した要素を感じ取ってほしいです。

●池上:次世代機版はロード速度が速く、解像度も高い素晴らしい体験ができると思います。個人的にはPlayStation5版の、ハプティックフィードバックはこだわった点なので、ぜひ体験してほしいです。仲間それぞれのアクションで、手触りも変えているんですよ。

●岩本:アートディレクターとしては、イラスト的な質感を細部までこだわって作りました。その場所の質感や空気感、豊かな色の変化や光の表現にも力を入れています。お気に入りの場所があれば、ぜひ足を止めてキャラクターと世界をじっくり眺めてほしいです。キャラクターデザイナーとしては、じつは各キャラクターの個性を表現するために、動物のモチーフを取り入れたりしていますので、よければ探してみてください。


オフィシャルサイト
https://toarise.tales-ch.jp/

販売元:バンダイナムコエンターテインメント
Bandai Namco Entertainment Inc.

※記載されている会社名・製品名は、各社の商標、または登録商標です。

(※1、※2)“PlayStation”は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
(※3、※4) Xbox Series X|S および Xbox One は米国Microsoft Corporationおよび/またはその関連会社の登録商標または商標です。
(※5)©2021 Valve Corporation. Steam 及び Steam ロゴは、米国及びまたはその他の国のValve Corporation の商標及びまたは登録商標です。

「Tales of ARISE」
Tales of Arise™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.