クリエイターインタビュー

第7回:テクニカルディレクターが考える“幅広い経験を積むのが必要”と思ったその理由とは?【バンダイナムコスタジオ クリエイターを深掘り!】

バンダイナムコスタジオのクリエイターたちは、「自分の開発したゲームでみんなを楽しませたい!」という熱意を持って、ゲームを開発しています。その気持ちはどこからくるのでしょうか?

この記事では、弊社のクリエイターの好きなモノや出来事を通して、ゲーム開発に繋がる想いを紹介します。

※以降の文中では、バンダイナムコスタジオをBNSと省略表記を用います。

第7回は、テクニカルディレクターの能登啓太さんに取材しました。能登さんが「幅広い経験を積むのが必要」と思った理由や、ゲームクリエイターを目指す人に向けてのアドバイスなど、たっぷりとお話を伺いました。

第2スタジオ第2グループ第3プロダクション所属
テクニカルディレクター
能登 啓太

――― 現在の所属や業務内容など、簡単に教えてください。

第2スタジオ第2グループ第3プロダクションプログラムセクションという部署でテクニカルディレクターをしています。

ナムコ(当時)に、キャリア採用で2005年に入社しました。入社のきっかけは、新卒で入った会社に現BNS取締役の小林賢也さんがいらして、その縁ですね。

その会社が解散して、次に入社した会社では、レースゲームを開発していました。そんな中、久しぶりに小林賢也さんと会った時に、「うちの会社で作っているレースゲームの開発メンバーが足りないんだけど、やらない?」と声を掛けられて、当時のナムコに入社したのがきっかけです。それが、『リッジレーサー』の開発チームでした。

入社当時は、神奈川新町の横浜クリエイティブセンターではなく、中目黒駅前にある中目黒オフィスに勤務していました。

入社後は、エンジニアとして、「リッジレーサー」「ファミリースキー」「ゴーバケーション」などの開発プロジェクトを経験し、現在はテクニカルディレクターとして、エンジニアを見る立場としていくつかのプロジェクトに関わっています。

――― いろんなタイトルに携わっているんですね! レースゲームやスポーツゲームが多いでしょうか。

レースゲームやスポーツゲームが特別好きというわけではないですが、前職でもレースゲームを開発していたので、そういったタイトルの開発チームにアサインされることが多かったのかもしれません (笑)

ナムコ時代から振り返って、UIプログラマー、シーケンス制御のプログラム、ネットワークエンジニアとして、いろいろな業務を経験してきました。ずっと同じ技術に特化して開発しているエンジニアには、知識量や技術力で勝てないなと思いますが、逆に幅広い経験に基づいた知識の深さが自分の強みだとは思っています。実際にいろんな業務のエンジニアをまとめるテクニカルディレクターになった現在は、これらの経験が役に立っているようにも感じます。

――― テクニカルディレクターとはどんな仕事ですか?

テクニカルディレクターの仕事は、一般企業でいえば課長っぽい仕事でしょうか。

簡単に言えば、プロジェクトを遂行するためにプログラマーをまとめて、指揮する役職です。プログラミングの設計や方針を決めたり、社内の他部署や外部の会社と調整したり、技術窓口としてアドバイスをしたり、といった業務をしています。プロジェクト全体を俯瞰して見たり、それをもとに技術領域の指針を決めていくようなスキルが必要だと思っています。

現在は、社内の複数のプロジェクトに関わって、新しい企画を立案したり、開発スケジュール案を考えたりしています。プロデューサーやディレクターが考えた企画に対して、「それなら、技術的にはこういうアプローチができそうですね」とエンジニアの立場から見解を述べるのも重要な仕事です。

PlayStation 3用ソフト『リッジレーサー7』
RIDGE RACER™7 & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

――― エンジニアを目指すきっかけはどんなものだったのですか?

もちろん、プログラムを組むこと自体に興味がありましたが、ゲームクリエイターに憧れてプログラマーになりました。

将来はプロデューサーやディレクターを夢見てゲーム業界を目指す人は少なくないと思いますが、ゲームに関わりたいなら、その手段のひとつとして自分と同じようにプログラマーになってゲーム業界に入るというのも良い方法だと思っています。

サウンドクリエイターやビジュアルアーティストになるためには、向き不向きというか、ある種の才能が必要かと思います。プログラマーは技術を習得することが苦でなければ、比較的目指しやすいのではないでしょうか。

ゲームエンジニアといっても、その中の職種はたくさんあります。テストエンジニアならば、タイトルの品質を担保・向上させるためにテスト(ゲームデバッグ)をして、そこで見つけたバグを担当エンジニアに報告して修正してもらうのが仕事ですが、このテスト作業自体を効率化させるのもテストエンジニアの仕事です。常に効率化や改善案を考えることが好きな人はきっと向いていると思います。

また、昨今のタイトルはクロスプラットフォームに対応したタイトルが多いので、サーバエンジニアとしてどのゲーム機でも快適にプレイできるシステム開発など、オンラインプレイの技術向上に努めるのも面白いのではないでしょうか。自分の興味や得意分野に合わせて、専門性の高いエンジニアを目指すのも良いですし、自分のように、いろんな業務を経験して幅広い知見を持つというキャリアプランもあります。

ちなみに、プロデューサーやアーティストと比べて、エンジニアの名前はどうしても外部に出ることは少ないのが現状です。ですが、どのエンジニアも「ゲームを動かしているのはエンジニアなんだぞ」という意識や自負は持っているのではないでしょうか(笑) 各職種の方が作った素材を動く形で実装するのがエンジニアの仕事です。どの職種も平等に大切ですが、ゲームを実装するエンジニアのことも忘れないでほしいと思っています。

――― ゲーム開発のエンジニアならではの特徴はありますか?

正解がなく、ちょっとくらい噓をついても大丈夫な仕事です(笑)

というと、誤解が生じそうですが。銀行は1円単位で計算がずれたら使えない、医療系や生活インフラ系のシステムであれば、生活や命に関わるのでミスがあるシステムは絶対にダメですよね。ゲームだったら、物体などの物理演算が現実世界と多少違ったとしても、結果としてプレイが良くなるのであればそれはOKになります。

皆さんにより楽しく遊んでいただくことが目的なので、必ずしも現実にあるものそのまま再現する必要はないです。もちろん、プレイに影響があるバグは絶対にダメですけどね。

また、厳密な正解がない分、自分で考えて実装できる幅が広いのではないかと思います。

――― 今までの仕事で印象深いエピソードはありますか?

プログラマー時代の話になりますが、納期まで時間がない、仕様が決まっていない、作業が全然進んでいない、ということはよくあります。

プログラマーとしては、決まった仕様をもとにプログラムとして組み込むので、納期が決まっているのに、前の工程が遅れている時はモヤモヤしますね。ただ、過ぎたことを考えてもしようがないので「なるようになるだろう」と考えるようにしています。自分の番になったら、納期までに決まったことを急いで入れる。急いで入れつつも、自分の前後も気にしながら柔軟に対応することを心掛けています。

――― 「これだけは自信がある」といえることはありますか?

自分のプロジェクト内で、進行が良くないなと思ったら、すぐフォローに入るようにしています。自分の担当箇所だけやっていてもダメだと思っていて、ここができればもっと良くなると思えば、できる限り自分も介入するようにしています。大変なことが増えても、ゲームをより良くできるならベストを尽くしたい想いが強いです。

自分は「この技術が得意」といった強みが弱いと感じていたため、逆に幅広い経験を積んで総合的な技術力を身に着けることを心掛けていました。プログラマー時代も、人が不足しているプロジェクトがあれば積極的に参加するようにしていました。

――― 今後チャレンジしてみたいこと、抱負などはありますか?

今までやったことがない、新しい知識を身につけることです。

いち早く最新技術を積極的にキャッチアップしていくようなタイプではないのですが、気になったことは後追いでも詳しく追っかけるようにしています。ネット記事などでなるべく広く情報に触れるようにして、その中で自分が面白そうだなと思う部分を深掘りすることを心掛けています。ゲーム開発の技術だと、年に一度開催される『CEDEC』というイベントの講演を視聴して、業界の流れなんかを知るようにしていますね。

今はクラウド関連の技術に興味があり、業務でもなにか役立てられないかといろいろと学んでいる最中です。

CEDEC

――― 座右の銘はありますか?

座右の銘ではないですが「苦労はどんどんしていこう」ということですね。皆さんにも身に覚えがあるかと思いますが、ものすごく大変なことがあっても、しばらく経って振り返ると結局は良い話に記憶が置き換わっていることがあります。

その経験から、年齢が若い部下に対しても、「若い時の苦労は買ってでもした方が良い」とアドバイスしています。自分の与えられた仕事だけではなく、機会があればいろんなことに飛び込んでいく方が良いです。苦労は自分の経験値になるはずです。たまには、追い込まれることも大事なことなので、ぜひいろんなことにチャレンジしていきたいですね。

――― ありがとうございました!


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