第6回:見ればどんなゲームか分かる! コンセプトアートに込めるこだわりとは?【バンダイナムコスタジオ クリエイターを深掘り!】

バンダイナムコスタジオのクリエイターたちは、「自分の開発したゲームでみんなを楽しませたい!」という熱意を持って、ゲームを開発しています。その気持ちはどこからくるのでしょうか?

この記事では、弊社のクリエイターの好きなモノや出来事を通して、ゲーム開発に繋がる想いを紹介します。

※以降の文中では、バンダイナムコスタジオをBNSと省略表記を用います。

第6回は、ビジュアルアーティストの田中陽子さんにお話を伺いました。2022年3月4日にリリースされた『Survival Quiz CITY(サバイバルクイズシティ)』ではイラスト全般を担当していますが、そこにはどんなこだわりが込められているのでしょうか。イラストから伝えられるゲーム開発を伺いました。

第1スタジオ 第8プロダクション所属
ビジュアルアーティスト
田中 陽子

――― まずは、現在の所属や業務内容などを教えてください。

現在は第1スタジオ第8プロダクションに所属しており、『Survival Quiz CITY(サバイバルクイズシティ)』(以下、SQC)の2Dアート全般を担当しています。

キャラクターデザイン、メインイラストのほか、ゲーム内ショップのアイコン、チュートリアルの時に出てくるステッカーなども描いています。そういえば、マッチング中に流れるイラストやSQCのTwitter用イラストもですね。結構いろいろと描かせてもらっています。

――― サバイバルクイズシティの世界観はポップで可愛いですよね。どうしてこのようなテイストになったのでしょうか?

私の好きなテイストが採用された形になりました(笑)

最初に、プロデューサーの重田やアートディレクターの安藤から「こんなイメージのゲームを考えているんだけど」といった感じでお話を頂き、キャラクターデザインを担当することになりました。

このゲームのコンセプトは、プレイヤーが勝ち組と負け組に分かれる下剋上スタイルでして、人間のキャラクターだと過激で生々しく見えてしまいそうだったので、ちょっとポップな世界観の方が合ってそうだなと考えました。それをベースに「ステッカーっぽいデザインが似合うのでは?」と私の好きなテイストで案を出していたら、それを見たプロジェクトメンバーが気に入ってくれて、この世界観になりました。

ゲーム中に出てくるアイコン

――― 90年代っぽさがあるイラストですよね!

ゲーム中に「ラミィちゃん」という女の子が出てくるのですが、まさに90年代テイストのキャラクターです! 前述の安藤から「田中さんっぽさがバリバリ出ているキャラクターを1体入れてみたい」と言われて、自分が好きな作風で自由にデザインしましたが、最後まで「それ、ほんとうに入れて大丈夫ですか?」と不安でしたね。

ラミィちゃん

――― 元々、こういったレトロでポップなイラストが得意なのでしょうか。

そうですね。自分の元々の作風がSQCの世界観に近い気がしています。とはいえ、既存タイトルのキャラクターを描く業務もあり、そういう時はそのタイトルの作風に寄せて描きますし、そういう作業も好きだったりします。絵を描くこと全般が好きって感じですね。

余談ですが、ゲーム中のプレイヤーキャラクターであるギャー君のテイストはプロデューサーの重田の雰囲気を参考にしています。もしも、重田がギャー君の描かれているTシャツを着ていたら似合うだろうなと思いながらデザインしました(笑)

――― 現在の仕事で、大変だったことや頑張ったことなど、印象深いエピソードはありますか?

ゲーム内容を制作チーム内で共有する為に、ゲーム広告の様にまとめる作業を行ったのですが、あの作業はとても勉強になりました。表にタイトルとイラストがあって、裏を見るとゲームの概要が描いてある、ゲームパッケージのようなものをデザインしたんです。

いろんな情報がある中で、どこが大切な情報なのかを考えることがとても大変でしたね。イラストの配置の仕方だったり、「大人数で遊ぶハチャメチャサバイバル」「アクションゲーム」「勝者と敗者がいる」などの重要なキーワードの取捨選択をしたりと、そのゲームのシステムやコンセプトとなる情報を精査して抽出していくという作業が私の中ではすごく勉強になったなと思います。

この作業の趣旨は、優先順位を付けて、物事を説明するということだと思うのですが、これをやったことで、頭の整理にもなったなという実感がありました。別の作品でコンセプトアートを描く時や、新入社員向けのコンセプトアート研修の時にも役立ちました。

――― このような文字ベースのコンセプトアートはあまり見かけないですよね。コンセプトアートを作るときに気を付けていることはありますか?

コンセプトアートに関しては、それぞれで解釈が違う気がするのですが、私としてはぱっと見て「これってこういうゲームなんだ」というのが伝わることが重要だと思っています。

店頭に並んでいるパッケージを見ると、「これは子供向けの対戦ゲームなのかな」とか「仲間を連れて冒険するゲームのようだ」とかなんとなく伝わると思います。おそらく、キャラクターの頭身や色遣いなどの違いから無意識に情報を得ているのではないでしょうか。

視覚から得られる情報は結構多いと思うので、対象となるプレイヤー層を考慮して、「こういうゲームが好きな人たちだったら、こういうビジュアルにすれば手に取ってくれるかな」というのを考えて描いています。SQCに関していえば、ライトな層にも刺さってほしいと思う部分があるので、ちょっとハチャメチャな感じでみんなでワイワイ遊べそうなイメージにしています。

仮にキャラクターはリアリティある描写で、全体的に彩度が低いというだけで、あまりゲームをしない層から見れば「これ私には難しいかも?」と思ってしまうかもしれません。そういう部分の感覚値の調整という意味でも、コンセプトアートは大事かなと思います。

――― そのほか、イラストを描く際に気を付けていることはありますか?

ラミィちゃんのような90年代風のイラストがそうですが、意識的に見せ方を考えないと、あの年代をリアルに知っている人たちが見た時に、若干の古さを感じたり、少し違和感を覚えてしまうだろうと思っています。

新しさや古さの判断基準のためにも、最新の描き方やトレンドは見るようにしています。

一見、ラミィちゃんも懐かしいデザインに見えますが、90年代当時のイラストと比べると、色使いやフォルムに最近のイラストの手法を足してみているので、懐かしい中にも新しさを感じてもらえるイラストになっていると良いなと思います。

――― 仕事に取り組むにあたって譲れない「自分ルール」はありますか?

時間をかけて納得出来るまでやりたいという想いがあるのですが、期限を守る事も大事だと思うのでそこのバランス調整でしょうか。期日というのは、一番優先されるべき事項だと思っていて、でもその中で製品クオリティを担保することが重要だと思っています。これらが世に出た場合に「バンダイナムコスタジオ」の開発タイトルとして、会社の評判になってしまうので、期限内にある程度のクオリティを担保した上で進めることができれば最高ですね。

期日まで余裕がある段階で、最低限人に見せられるものを作っておいて、そこからクオリティを上げていく方が安心じゃないかと思っています。それから、やっぱり期限前になると焦ってしまいメンタル的に良くないので、自分のメンタルを守るためにも、焦らずに済む方法を考えていますね。

――― 「これだけは自信がある」と言えることはありますか?

なにも決まっていない状況の時に、イラストに関することであれば、自分なりに「こういうのはどうですか?」とアイディアを出すのは好きですね。引き出しはそこそこ多い方かなと自負しています。

最近こういうのが流行っているとか、これだったらここの層に刺さるのでは、ということに興味があるので、それをもとに考えたり提案したりするのは結構好きかもしれません。

――― 最新のアートに関する情報はどこから得るのでしょうか?

大体なんでも見るようにしていますが、サブスクで流行っている映画やアニメを観たり、ピンタレストをチェックしたりしています。そういう情報にアクセスして、過去の絵柄の移り変わりを見ていると、イラストもファッション業界のように一定のサイクルで流行が回っているように感じます。

最近は動画配信サービスなどで古い作品も新作と同じタイミングで観られるので、特定の絵柄を新しく感じるとは一概には言えなくなってきているような気もしています。

――― 座右の銘はありますか?

「人間万事 塞翁が馬」ですね。

実は、今まで座右の銘は無かったのでこれを機にめちゃくちゃ調べました(笑)

担当していたプロジェクトがダメになった時はものすごく悲劇なんですけど、後々、あれもいい勉強になったなと冷静に振り返ることができることも多くて。なにがどうなるかは確かに分からないものだったりするので、一喜一憂するのはやめようと考えるようになりました。逆に、上手くいって喜んでいたら、そのあとにいろいろあって喜び損になってしまうこともありました。何が幸運で何が不幸に繋がるかは分からないなと考えるようになりました。

様々な経験を経て、短期的な視点ではなく、中長期的な視点を持って働いていければなと思います!!

――― ありがとうございました。

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