クリエイターインタビュー

クリエイターインタビュー

私にとっての「Fun for All into the Future」―サウンドが創り出す“Fuuuuuun!”とは?

サウンドディレクター 矢野義人

―バンダイナムコグループに入社されたきっかけを教えてください。

小さい頃にポップスやゲームミュージックを耳コピして演奏するなど音楽に夢中になり、大学では軽音楽サークルに入りました。ここで楽曲制作に没頭したのはもちろん、今でも覚えているのが当時発売されたばかりのPlayStation®で『リッジレーサー』をプレイしたこと。ゼミの友達6人ぐらいでこたつに入り、交代で仮眠を取りながら遊び続け、気づいたら25時間経っていました。遊び疲れてヘトヘトになって「なんて魔力のあるものを創るんだ、ナムコは!」と頭を抱えたことを今でも覚えています。
そこから音楽×ゲームをキーワードに就職先を探し、ナムコにエントリー。記念受験のような感覚ではあったものの、運よく採用いただきました。

全ての仕事で出会う人、聞いてくれる人をファンにしたい

―これまで担当した楽曲は?

デビューは『アルペンレーサー2』というスキーゲームの効果音でした。
実際にスキーをしているときには風の音が耳に当たって“ボーーーッ”というノイズのような響きが生まれるので、それをシンセサイザーで再現し、プレイヤーの速度によって滑走音やジャンプ音の音量や音程を変えて滑走の速度を表現して…と、様々な工夫を入れながら効果音作成の楽しさを実感しました。
その後に『ソウルキャリバー』、『塊魂』、『太鼓の達人』、『アイドルマスター』シリーズの様々なプロジェクトでサウンドを制作しました。直近では、島根スサノオマジックのオフィシャルチアパフォーマンスグループ 「アクア☆マジック」への楽曲提供や、『塊魂 Rolling LIVE』のサウンドディレクターを担当しています。

―キャリアの中で、転機や印象的だったことは?

2004年にリリースしたゲーム『塊魂』のエンディングでスタッフロールとともに流れる歌曲「愛のカタマリー」というバラード曲です。作詞・作曲・編曲と全て手掛けたことに加え、リコーダーの演奏や合唱を社内のメンバーで録音したことも良い思い出です。
そして何といってもボーカルを担当いただいた松崎しげるさんの存在。テレビのイメージ通りとにかくエンターテイナーな方で、現場でもずっとスタッフを盛り上げてくれました。人を楽しませること、目の前、そして画面越しのファンを徹底的に意識している方だと感銘を受けました。
僕も仕事への意識がぐっと高まって、関わる全ての仕事で会う人、聞いてくれる人をファンにしたいと考えるようになりました。

全てを音に変換するために五感を研ぎ澄まして観察

―楽曲を生み出す時に意識されていることや、矢野さんならでは!というアプローチがあれば教えてください。

日々の生活、目の前の景色、観た映像…全て音に変換できたらいいなと思っています。だから、あらゆる場所で五感を研ぎ澄ませてよく観察をします。例えば、会議室で「ここは壁に吸音の要素があるので残響がそんなにない」とか、部屋で手を叩いてみて「高域で共鳴が起こっているな」とか。トンネルに行ったら毎回手を叩きますよ。「このトンネルいいな、豊かな音が出るなあ」とかね。
高校時代に柔道をやっていたので、その感覚も音作りと繋がっています。柔道って相手の力を利用して自分の技をかけるのですが、そのときの重心移動のイメージを曲の中で使うこともあります。サビでドーンと感情の爆発を出す時には畳にしっかりと足をついて、Bメロで気持ちの不安定さを表現する時には重心がちょっと揺れるような感覚をリズムに入れたりします。
あとは料理とも感覚が似ています。ベースとなる旨味、辛味や酸味、歯触り、あとはお酒を飲んでほろ酔いになったときの空間の広がりはエコーのようだなとか。そういった目で見えないものを表現するのは、まさに音作りに共通します。日々こんなこと考えているので、この仕事に対して飽きることはありません(笑)。

―バンダイナムコグループのサウンドVIや配給ムービングロゴのサウンド、 事業紹介動画楽曲(タイトル:「Fun for All into the Future」)などもご担当されていますよね。動画楽曲は矢野さんのサウンドを聞いたときに、「これだ!」と満場一致だったそうです。

そうでしたか、嬉しいですね!
まず、事業紹介動画の楽曲から説明すると、パーパスのメッセージである「もっと広く、もっと深く。夢・遊び・感動を…」を口ずさみながら手で簡単な振り付けをしてみたんです。そしてパーパスに込められた言葉がどんな音の動きを持っているのかを分析しながら、さらにはバンダイナムコという響きからどんな音楽が生まれるのか、もしかしたらバンダイナムコって言葉そのものにメロディが含まれているんじゃないか、など考えて。時には夜に散歩して「バンダイナムコ、バンダイナムコ」とつぶやいて、それをだんだんメロディ化していった経緯があります。
サウンドVIは1秒なんですが、どこから聴いても楽しく、明るくなるように調整して、結果的に「レb、ミb、ド、シb、ラb」に。フラット記号が多い今の形に落ち着いたのは、人の温かさとか、豊かさのようなものが音から感じられたからです。
今年新しくなった配給ムービングロゴのサウンドは、劇場で流れること、様々な作品で使用されることを踏まえ、奥ゆかしく、香りが空間に漂うようなことを意識しました。

サウンドVI制作時の過程をここから確認いただけます!

作成過程の音源別案

作成過程の音源をどこから聴いても明るい音声に調整

最終的な完成版

「Fun for All into the Future」楽曲はBNHDサイト内グループナビサイトで聞くことができます
https://www.bandainamco.co.jp/group/index.php

金太郎飴のように、どこを切ってもファンがあって、ファンがいる“Fuuuuuun!”

―曲作りの過程を言語化していただいて感動です!サウンド化の過程で向き合っていただいていますが、矢野さんにとっての「Fun for All into the Future」とは何でしょうか。

音でも表現したことですが、楽しさ、ファンとのつながりがどこまでもどこまでもずっと続くというイメージです。我々の発信する「夢・遊び・感動」のアイデアの源も、クリエイティブの過程も、もちろん成果も。全てファンと共有し、そこにファンも存在し、共にアーチを描くように楽しいことが繋がり、幾重にもなってファンに届くーー。金太郎飴のように、どこを切ってもファンがあって、ファンがいる。表現すると、“Fuuuuuun!”ですね。
“Fuuuuuun!”をつなげていくことで、自分たちサウンドチームも楽しい仕事ができるし、グループも楽しくなる。
「ファ」の音も柔らかく、楽しい音ですからね。音作りも歌も短い音も全部ファーンがつながっているということで一貫させています。

―“Fuuuuuun!”は音の響きも楽しく、遠くにいる人にも届くようで素敵ですね!最後に、矢野さんが今後挑戦したいことを教えてください。

これまで培ってきた音楽や効果音を創り上げてきたスキルを活かしながら、それを水平展開させることができたらいいなと思っています。例えばアニメとゲームのメディアミックスに関して、サウンドをキーワードに新しい何かを注入したり、あとはゲームの技術の部分とテーマパークのアトラクションをつなげたりとか、そのあたりのアイデア出しも含めて今までのノウハウの重心移動ができたら楽しいことが増えるかなと思います。
ともすると、サウンドクリエイターとは全く違う、仕事や職業名さえも定義されていない何かでもいいですよね。敷かれたレールを進むだけよりも、未開拓の道を作っていくようなことに参加できたら、より “Fuuuuuun!”の可能性が広がっていく気がしてワクワクします。

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