「コードヴェイン」ができるまで(後編)

『コードヴェイン』ができるまで(後編)では、ドラマティック探索アクションRPGと銘打って、世界中のお客様に楽しんでいただいている本作の開発を振り返り、開発終盤のエピソードや開発全体を通して工夫した点などをお伝えいたします。
今回はZoomによるオンライン形式の座談会を実施しています。(2021年1月実施)


『コードヴェイン』の開発を担当するプロジェクトメンバー
吉村 広 ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター・開発プロデューサー
依田 優一 ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター・主にアクション関連を担当
板倉 耕一 アーティスト/ 『コードヴェイン』アートディレクター・ダンジョン関連を担当
小林 くるみ アーティスト/『コードヴェイン』キャラクターデザイナー・プロジェクト立ち上げ時はアートディレクションも担当
茅 頓 ゲームデザイナー/『コードヴェイン』プランナー・ゲーム調整・ローカライズ・グローバルコミュニケーション担当

戦闘のアクションについて

●依田 優一(よだ ゆういち)
ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター
主にアクション関連を担当

依田:アクションは今回、アニメーションの作り方がガラッと変わりました。
ゴッドイーターでは基本的にアニメーターさんがアニメーションを付けていたのですが、『コードヴェイン』では、およそ9割はモーションキャプチャーを使っていました。
この業界では普通の手法なんですけど、僕としては初めてだったので新鮮味があって楽しかったです。
もちろんならではの苦労もありましたが…。モーションキャプチャーはキャラクターの細かな所作にも自然さが出るので、キャラクターの魅力を引き出す点において素晴らしい技術だと思いました。

吉村:アクションは方向性も含めて何度も調整しましたよね。

依田:そうなんです。スピード感は何度も調整を入れたところの一つですね。最初は割とリアル寄りのスピード感で、演技の流れは『ゴッドイーター』からの流れを汲むものだったんですけど、色んな人に触ってもらったら、ちょっと爽快感に欠けるよねという感想がありました。それで、徐々にスピード感を上げて、操作レスポンスも改良して、爽快感を得られるように何度も調整をしていきました。

■吉村:ここは苦労しましたね。プレイした方の「もっさりしている」という言葉で(笑)。

●依田:ネットワークテスト版での、あの「もっさり」の正体を突き止めるところが、すごい喧々諤々で盛り上がりましたね!「もっさりの原因は動きなのか、レスポンスなのか?」って(笑)。

吉村:一方では「軽い」って言われて……。
プロジェクトとしては、プレイした方がパラメーターで自キャラをビルドして、アクションの変化する幅を持たせる、という思想で進めていました。それがプレイした方によっての振れ幅の感じ方が違って、ブレちゃうんだなと思いました。

●依田:そうですね。それがあって、初期装備を鉄パイプにして一番軽い装備ではステップが軽快で、武器の振りも早いというアクションの提示をする調整をしました。

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

■吉村:アクション周りでは、気付きが多かったなと思いますね。

調整とデバッグ

●吉村 広(よしむら ひろし)
ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター・開発プロデューサー

吉村:この話をしなきゃいけないと思うのが、最後の大苦労ポイントってとこで、調整とデバッグ。
あのー……大変でしたね(笑)。
ご存じのとおり『コードヴェイン』は発売日を発表してから、1年間それを延期しています。

●依田:クオリティ向上のために時間をかけさせていただきました。当時僕らとしても……大変すぎて、当時のことを覚えてませんね……(笑)。

■吉村:衝撃の展開過ぎて……。発表した発売日に間に合わせようと、バグを取って、クオリティ上げも全力を尽くしていたんですが、最終的により良い状態にして、お客様に届けるべきだという経営判断をいただきました。

●依田:「クオリティを良くしなさい。そのためには、どれくらいかかるんだ?」って聞かれて……。

■吉村:私が「1年です」って答えて、「嘘―っ」って言われましたけど(笑)。
最終的には、お客様にも1年間待っていただいて、色々な部分を見直ししました。関係各所の皆さんにも、ご迷惑をおかけしたのですが、クオリティをしっかり見直しました。ほぼリスタートに近いですね。
振り返ると、非常に苦労した期間ではありますが、とても楽しい期間でもありました。
一度作り上げたものを、プロジェクトのメンバー全員で、ここはダメなんじゃないかと洗い出して、結構なところまで手を入れましたね。

●依田:攻略するフィールドの順番が変わりましたしね。

■吉村:そうそう。フィールドの順番は変わったし、ストーリーの流れも変わったし、フィールドの難易度の段階も、全部再調整かけたし。

●依田:錬血も増えて、敵も増えて。

■吉村:茅くんは、この辺りから参加ですよね。

●茅 頓(まお とん)
ゲームデザイナー/『コードヴェイン』プランナー
ゲーム調整・ローカライズ・グローバルコミュニケーション担当

茅:調整が入って、ゲームが生まれ変わったと思いました。
新しいザコキャラを増やすとかアクション錬血(技錬血)を増やして、結果的に全然違うものになった印象があります。

■吉村:レベルデザインの調整は、かなり効果的だったと思います。フィールドができて、それに対応した所感に沿って調整していきました。この敵の横に、こういう敵がいたらいいなとか、バディのキャラクターのセリフも改めて収録しましたね。

●依田:そうですね。結構新規でセリフを追加しましたね。

■吉村:キャラクターが、このフィールドに入ったら、こういうことを言うだろうというのがわかるようになったので、それに合わせてセリフを追加収録していきました。

●依田:ゲームシステムも大きめの追加がされています。以前はミニマップも無かったんですよね。

■吉村:キャラクターの衣装も追加しましたね。アクション錬血の追加、強敵の追加、これが一年間頑張った結果ですね。それでやっとお客様の元にお届けできたと思います。
小林さんは苦労したポイントはありますか?

●小林:私は、プロトタイプの時期に深く関わっていたのでその時の話になってしまいますが、世界観を作りながら絵作りというか、アイディア出しも一人でやったので、未知の体験でした。世界観と背景と武器と敵を同時に描くのは初めてでした。

●板倉:「脳の違う部分を使っていて疲れる」ってその頃言ってましたね(笑)。

●小林:そうでしたね。まさに立ち上げの時期だったので、皆で同じ方向を向けるようにと、説明のために書面を用意して、絵でも見せて、ミーティングにも全部参加して、アートディレクターって大変なんだなと思いました(笑)。

■吉村:あの時に小林さんが出してくれたイメージは、形は少し変わったところもありますが、しっかり表現されていますよね。

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

開発上のこだわり

■吉村:開発全体を通して工夫したポイントについて話していきたいと思います。

●依田:プレイアクションのレスポンスには気を使いました。レスポンスの良いアクションというのが、『ゴッドイーター』の流れを汲むアクションゲームとしては、必須であると考えていましたね。
個人的なこだわりとしては、攻撃アクションに隠し要素っぽくキャンセルできるタイミングを設定して、テクニック的な小ネタを仕込んだりしました。

●板倉:モーキャプの演技のこだわり点は?

●依田:モーキャプした素材ごとに人間っぽさが出すぎる部分を調整して動きを活かしたり、逆に人間っぽい演技を活かして味にするといった取捨選択をしつつゲームバランスとの調整をしました。
演出の観点からボスの登場モーションも2回目専用のモーションを入れたりしましたね。どれもキャラクター性の理解を膨らませて演技をつけましたが、アクターさんにアドリブで演技してもらったところもあります。

●茅:私はもっさりしたモーションを解消するために、ひるみモーションの素材を使って、Unreal® Engine(※1)で調整しました。あと、英語のローカライズテキストについて、最初に翻訳したものが専門用語がバラバラだったので、統一してわかりやすくすることにこだわりました。

●板倉 耕一(いたくら こういち)
アーティスト/ 『コードヴェイン』アートディレクター
ダンジョン関連を担当

●板倉:ビジュアルデザインとしては3つくらいあるんですが、まず牙装の変形ですね。有機物の変形のような感じじゃなくて、人工物がメカニズムをもって変形している感じにしたいというオーダーを受けて、すごく悩みました。結局、ベルトと金属部品が溢れ出てくるってことを思いついて、デザインが進められるようになったので、工夫した甲斐がありました。
あと、せっかく吸血鬼ものなので、色んなガジェットに吸血鬼らしさが感じられるようにしたかったんですね。吸血鬼の象徴って牙だと思うんですが、開発途中で「ガスマスク付けたいんだよ」って話になって、そこでマスクにも牙のようなディテールを入れるように、チームで協力して。今のような素敵な感じになって良かったと思います。

■吉村:良かったですよね。

板倉:3つめは、拠点のデザインですね。私がやったのは、小林さんのイメージボードの雰囲気をどう再現するかという工夫でした。本当はあの絵のとおりに、なるべく忠実に再現したかったんですよ。
ただ、レベルデザイナーからいただいた設計が、初期のアートと比べてめちゃめちゃ広くてびっくりしました。

●小林:大聖堂ですよね(笑)。

●板倉:カメラがキャラクターの周りを回るときの空間的な余裕が必要ということで、広かったですね。本当は狭く雑然とした雰囲気にしたかったんですけど、広くて空間が埋まらないので物を増やしていったら、だんだん男子学生の秘密基地っぽくなっていって……。

■吉村:最終的に、各キャラクターの好きなものをどんどん配置していこうってことになりましたね(笑)。

●板倉:それぞれのキャラクターのスポットにちなんで置いてみて、あとは運動器具とか、冷蔵庫とかビリヤードとか。

■吉村:バイクとかね(笑)。よくあの広い空間が埋まったと思います。

●小林:素晴らしいと思います。

●板倉:そこが楽しくて、やり甲斐がありました。

●小林 くるみ
アーティスト/『コードヴェイン』キャラクターデザイナー
プロジェクト立ち上げ時はアートディレクションも担当

●小林:私はいままで自分が制作したイメージボードから、あそこまで高解像度のキャラクターモデルを作ることが無かったので、どこをゴールとして設定するかを決めるのにこだわりました。もちろん、私のイラストとモデラーの池内さんの作ったものとは違う絵柄なんですけど、お客様の受ける印象としては、揃っていてどちらを見ても成立するラインであって欲しかった。それが、プロトタイプと第二評価版で、結構変わったところだと思います。
決して、プロトタイプの時でも悪いとは思っていなかったんですけど、1段階、2段階とレベルを上げることを、妥協しないで良かったなと思っています。

■吉村:最初期のアイディア出しでも、こうなんじゃないかって会話の中で広がりましたよね。

●小林:そうですね。開発はとても大変でしたが、そういうことが楽しくて、クリエイターで良かったなと思う瞬間ですね。

■吉村:今作のこの『コードヴェイン』というタイトルは、今まで自分が携わってきたどのタイトルよりも、規模が大きかったんです。決めることなどが膨大だったのもあり、一人の判断では難しかったので、チームの開発者の皆さんの意見やアイディアを重視しました。
当然、最終的な判断や締めるところは締めないといけないんですけど。
もうひとつ、プロジェクトを通してのこだわりは、立案の時からワールドワイド、世界の市場で存在感を示したいという事でした。
なので、クオリティ基準もこれまで通りではいけないと思っていて、チームの皆さんには苦労をかけましたが、今回の成果につなげることができたのではないかと思います。
ただ、もっとAAAタイトルとの距離感を意識して進めるべきだったというのが、発売後の自分の反省点ですね。それは、今後につなげていきたいと思います。

プロジェクトを通じて得られたもの・今後の目標

■吉村:このプロジェクトに関われて良かったことや得られたものとしては、どんなものがありますか?

●依田:最新のゲーム開発トレンドに触れることができ、プレイヤーキャラの全体的なディレクションにも関わる事ができて、新しい経験がこの期に及んでもまだあったんだと思いました。
ワールドワイドを前提としたタイトルに関わるのも初めてだったので、海外の流儀に合わせるという点でも知見が広まり、クリエイターとして成長ができたので、大変良かったです。

●茅:個人的にはチームワークがとても良かったなと思っています。気軽に論議ができて、全員の実力が発揮できたのも良かったです。

●板倉:目標だった大規模なダンジョンをしっかり作ることが達成できて、すごく良かったです。今後のノウハウとして活かしていければと思っています。

●小林:私も依田さんと同じで、『コードヴェイン』に関わって、知見がとても広がったと思いました。こんなに大規模なプロジェクトで、モノづくりができたので、感謝しています。今後もこの成功体験を活かせていければなと思っています。

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

■吉村:さまざまな苦労もあったんですけど、一番良かったのがワールドワイドの土俵がどういうものなのかに触れられたことです。今回の『コードヴェイン』は、何とか土俵に手をかけて覗いてみたくらいですが、今後は、よりすごい体験が作れたらいいなと思っています。

■吉村:最後にみなさんの今後の目標を聞きたいと思います。まずは依田さんいかがですか?

●依田:アクション方面に関して、ゲームのコンセプトに沿ったかたちで、ハイレスポンス、爽快感、敵とのやり取りを楽しいと思えるバトルデザイン、そういうものを突き詰めていきたいと思っています。ゲーム業界の色々なトレンドの流れを読んで、その時の最良のアウトプットを出していきたいです。

■吉村:アクションの最近のトレンドはありますよね。余計なことを考えないで済むようにとか……そういったトレンドを入れていきたいのはありますね。

●依田:おっしゃる通り、年代を追って見ていくと、どんどん無駄な要素が減っています。それなら次はこういう仕様にした方が良いんじゃないか、っていう変遷が常に起こっているので、それを考えるのが楽しいですよね。

●茅:私は、今回はプロジェクトの後半に入ったので、これからやりたいことは沢山ありますね。PS5などの次世代機やクラウドゲーミングとか、そういうトレンドを上手く読み取って、取り入れていこうというのが目標です。

●板倉:もっと世界自体の空気感が出したかったなと思っています。今後作るなら、目に見えないはずの大気とか、空気の広がりや情感をもっともっと表現できる画面作りをしたいと思っています。
『コードヴェイン』のような、リムライトやコントラストが強めな表現だけじゃなくて、より繊細な表現ができるように研究していきたいです。

●小林:私は、ワールドワイド対応のキャラクターデザインがしたいと思いました。日本の漫画寄りなキャラクターを、海外のお客様が触ってみてくださっているというのはあるんですけど、さらにデザインの幅を広げたり、色々なお客様に向けていきたいなと思います。
あと、主人公のカスタマイズ関係もしっかりやっていきたいです。

■吉村:私の根本には、主人公体験をしたいというのがあります。なので、お客様に今までにないスリリングで楽しい主人公体験を提供したいと思いますし、それを突き詰めて、より多くの方に新しい感動を提供できるように、こだわりを持ってゲーム開発を進めたいなと思っています。
プレイヤーが主人公体験できるゲームを、ずっと作り続けているチームも他にないと思うので、それを我々の強み、一番の資産だと思って活かしていきたいです。


オフィシャルサイト
https://www.code-vein.com/

販売元:バンダイナムコエンターテインメント
BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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(※1)Unreal® is a trademark or registered trademark of Epic Games, Inc. in the United States of America and elsewhere. Unreal® Engine, Copyright 1998 – 2019, Epic Games, Inc. All rights reserved.

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