インタビュー

「CODE VEIN(コードヴェイン)」ができるまで(前編)

『コードヴェイン』ができるまで(前編)では、ドラマティック探索アクションRPGと銘打って、世界中のお客様に楽しんでいただいている本作の開発を振り返り、プロジェクト立ち上げから開発初期に至るエピソードをお伝えいたします。
今回はZoomによるオンライン形式の座談会を実施しています。(2021年1月実施)


『コードヴェイン』の開発を担当するプロジェクトメンバー
吉村 広 ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター・開発プロデューサー
依田 優一 ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター・主にアクション関連を担当
板倉 耕一  アーティスト/ 『コードヴェイン』アートディレクター・ダンジョン関連を担当
小林 くるみ  アーティスト/ 『コードヴェイン』キャラクターデザイナー・プロジェクト立ち上げ時はアートディレクションも担当
茅 頓 ゲームデザイナー/『コードヴェイン』プランナー・ゲーム調整・ローカライズ・グローバルコミュニケーション担当

開発エピソード第11弾では、2019年9月にPlayStation®4(※1)/Xbox One(※2)/STEAM®(※3)で発売されたドラマティック探索アクションRPG『コードヴェイン』について、バンダイナムコスタジオ側での開発エピソードをご紹介いたします。

今回のインタビュアーは、開発プロデューサーの吉村が担当します。

この1年を振り返ってみて

●吉村 広(よしむら ひろし)
ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター・開発プロデューサー

■吉村:『コードヴェイン』が発売されて1年余り経ちました。いまも世界中で色々な方に遊んでいただいていますが、開発者の皆さんは、振り返ってみていかがですか?

依田:僕はよくTwitterで公式のハッシュタグを見ているんですけど、キャラクタークリエイト(以下、キャラクリ)を遊んでいただいている方を今でもよく見かけます。特にキャラクターへの思い入れが強い方達に根強く遊んでもらっていて、アートの魅力が強い作品だなと思いました。
ゲーム中の場面を撮れるフォトモードを入れた効果もあり、沢山写真を撮ってもらっていて、ありがたいです。

●板倉:開発を始める時は、我々が技術的に製品の目標レベルに足りているのか、不安もあったのですが、お客様に楽しんでいただけて、100万本を超える大ヒットになったので、すごく躍進できたんだなと思っています。

●小林:1年経ってみて、私もキャラクリのスクショはよく見るなあと思っていました。『コードヴェイン』を発売した頃は、お客様が、その当時のご自分の好きなキャラクターを再現したものが多かったんですが、現在は、後発のコンテンツや最近のゲームのキャラクターを再現したものが増えているのが、時間の動きが見えて面白いですね。

吉村:長期間新たなユーザーさんが増えているからこその変化ですね。

●小林:それで、私も販売本数を聞いてびっくりしました。キャラクリもそうなんですけど、海外の方がプレイしてくださっていて、開発の最初は、日本のお客様向けというか、純粋に『ゴッドイーター』の延長なのかなと思っていた部分もあるんですけど、日本だけでなくて、世界中のお客様に届いたんだなと思っています。

吉村:茅くんはどうですか?

●茅 頓(まお とん)
ゲームデザイナー/『コードヴェイン』プランナー
ゲーム調整・ローカライズ・グローバルコミュニケーション担当

茅:私は『コードヴェイン』の開発の後半から参加したんですけど、バンダイナムコスタジオ(以下、BNS)に入社する前から『コードヴェイン』の予告を見て魅力的だなと思っていたので、開発チームに入った時はワクワクしました。
最近の「死にゲー」としても『コードヴェイン』はかなりユニークで、私が普段見ている海外のYouTuberの方も配信していて、プロジェクトに参加できて良かったと感じています。

●板倉:期待以上に海外の方に高く評価していただいているので、凄い結果だなって感慨深いです。

吉村:私も、1年経ってもプレイしてくださるお客様が増えているということが、とてもありがたいですね。おかげさまでこうして座談会にも呼んでもらえて(笑)。

開発の経緯

■吉村:『コードヴェイン』プロジェクトは、ここにいるメンバーだと、最初は私と小林、依田の3人でスタートしました。『ゴッドイーター』を一緒に立ち上げた株式会社シフトさんと、今回もパートナーを組んで、また新しいものを作ろうと立ち上げたプロジェクトです。

依田:懐かしいですね。

■吉村:最初に企画を考える上で、中心にあったのは、『ゴッドイーター』シリーズを立ち上げて、長い間たくさんのお客様に遊んでいただいたので、次は日本でも海外市場でもしっかり受け入れられるコンテンツを作りたいという思いでした。
ゲーム業界は非常に進化の流れが速くて、現状を維持しているだけでは、自分たちが置いて行かれるという危機感がありましたね。

依田:新しいゲーム体験を生み出すチャレンジをしなければと思いましたね。

■吉村:約6年前がスタートですね。2015年3月の見積もりから見ると圧倒的に内容が増えましたね……(笑)。僕の構想としては、ちょうど『ゴッドイーター2レイジバースト』の開発の後半くらいから、次のチャレンジとして新規タイトルの企画を少しずつ作っていました。
当時は、社内の風潮として新規のタイトルの立ち上げよりも、既存のシリーズ物を成長させるという方針があって、いきなりまったくの新規タイトルを立ち上げるというよりは、我々『ゴッドイーター』チームが作る新しいタイトルという形でのスタートでした。
その時、自分たちがどうワールドワイドで戦っていくかという事を考えて最初にやったのは、我々の持っている強みの整理整頓でした。加えて、その強みを持って、どのジャンルに行くか。結論として、強みの一つはキャラクター性、プレイヤー自身が主人公になれるという点でした。

●小林 くるみ(こばやし くるみ)
アーティスト/『コードヴェイン』キャラクターデザイナー
プロジェクト立ち上げ時はアートディレクションも担当

小林:キャラクターカスタマイズですね。『ゴッドイーター』シリーズでも続けていましたし、求めているお客様は世界中に一定数はいるだろうという確信が強みにつながりましたね。
それと、プレイヤーと一緒に旅をするキャラクターも強みになると思いました。

■吉村:あと一つの強みは、手触りの良いアクションです。この3つを強みとして、「探索アクションRPG」、いわゆる「死にゲー」にチャレンジしようというのが、始まりです。

小林:世界観的には、一番初めは、吸血鬼モチーフが良いっていうのと、ギャングが良いっていうのがあって、そこはぶれないようにずっと考えていました。

■吉村:そうですね。ゴッドイーターはアラガミに喰い荒らされた世界観でしたが、崩壊した世界の新しい切り口として、ダークで魅力的な吸血鬼のキャラモチーフと串刺しにされた未来っていう提案をして、小林さんにまとめてもらったのが、こちら ですね。

ⒸBandai Namco Entertainment Inc.

小林:はい。

■吉村:あとはギャングですね。吸血鬼×ギャングっていう、ちょっとアウトローな人たちが廃墟に住んでいる。ただ、暗いだけでなくて、楽しんでいる感じがあっても良いよね、って話を広げていきました。

小林:ゲームモデルの事を考えていなかった絵なので、滅茶苦茶こじんまりしていますね(笑)。

ⒸBandai Namco Entertainment Inc.

■吉村:製品の最終的なキャラクター表現と、ラフではずいぶん違いますね。
大きな開発フェーズとして、第一評価版という最初の段階で、主にビジュアルの見せ方を検討していきました。
当時我々はゲームエンジンをどうするか検討していたんですけど、ワールドワイド市場を目指す上でこれまでより上の表現を実現するためにUnreal® Engine(※4)を採用して、新しい絵作りを模索し始めました。

小林:自分のイラストがUnreal® Engineに乗った時に、絵であるけどリアリティと没入感が出るというのは、描いている時は理解できていなかったですね。完成した時に、物凄く実在感があって、びっくりしました。

ⒸBandai Namco Entertainment Inc.

板倉:(上記写真を見ながら)これはルイの首に首枷がついている時代ですね(笑)。

■吉村:この時からルイ役は石川界人さんに演じていただいていたんですよね。

依田:絵の表現が今と違いますね。

■吉村:まだまだ絵の情報量も密度が全然足りなくて、プロトタイプって感じですよね。
ここあたりまでが、半年強やった結果かなと思います。また、リアル路線なのかアニメ路線なのか、模索している感じです。
発売された『コードヴェイン』は、この後の第二評価版がベースになっています。第一評価版で色々と頑張って検討した結果、世界観もキャラクターも非常に魅力的なものができてきたので、次にそれをどう最先端の作り方で実現できるかという模索を第二評価版ではやっていきました。

■吉村:その頃の技術的な話について、みなさん何かありますか?

●板倉:吉村さんから先ほどお話があったとおり、コードヴェインはUnreal® Engine4を採用しました。大規模で遊びごたえのあるダンジョンを作るという想定があり、それが可能になるだろうという期待があっての採用でした。
ただ、どうしても標準的な機能だけではフォトリアルに寄りがちでしたので、我々が目指したい、ちょっとアニメテイスト、イラストテイストのキャラクター表現を行うため、エンジンに手を加えたり、シェーダーで工夫をする必要がありました。そういう意味で、第二評価版は Unreal® Engineを使った新しいやり方に我々が慣れていくための、検証しながらの開発でした。

■吉村:ただ、それで上手く開発していくためには、いままでやっていなかったアセットの作り方がたくさんのハードルとして立ち塞がっていて、どう突破するかの悩みの連続でしたね。
いわゆるモダンな開発にチャレンジしようという、作り方を含めての挑戦でしたね。

●依田:絵作りの話だと、最初はミアのテストはUnityソフトウェア(※5)を使っていましたよね。それを、どうやってUnreal® Engineで表現するのかをごりごり検討していましたね。

第二評価版

■吉村:では、次は本格的に『コードヴェイン』の開発が始まったと言っても過言ではない、第二評価版のことを語りましょうか。
キャラクターの絵作りで、強力なコンセプトを打ち立てるところは苦労しましたね。

●小林:第一評価版と比べると、かなりイラスト的というか、独自のタッチになった印象があります。そこをゴールにしたいと皆に共有して進めていきました。あと、背景の馴染みとかエフェクトとか、牙装の可動とかもがっつり入っているので、トータルの映像で、キャラクターをどう格好よく見せるかが大変でした。

●板倉 耕一(いたくら こういち)
アーティスト/ 『コードヴェイン』アートディレクター
ダンジョン関連を担当

●板倉:第一評価版からの課題で、Unreal® Engineの標準的な機能だけで作るとフォトリアルになっていきがちなんですが、それだと他の製品に埋もれてしまうので、独自性を出したいと考えていました。
我々の強みを出したいと思い、『ゴッドイーター』で培ったアニメ的イラスト的なデザインを目指して検討しました。

■吉村:トゥーンシェーダーのようなものも検討しましたよね。

●板倉:はい。トゥーンだと光と影を二値化するんですけど、背景は没入感のあるフォトリアルな雰囲気にしたかったんです。そうすると、背景とキャラクターの肌の部分が合わないとか、キャラが浮いてしまうとか、絵作りがまとまらなくて苦労しました。

■吉村:そこでキャラクターモデル制作をお願いした株式会社フライトユニットさんからご提案があって、髪の毛やあごの下の落ち影を2D的に落として、肌の陰影は抑えつつも3Dシェーディングさせてみるとか、そうやってバランス取っていきました。

●板倉:そうですね。ただ、それだけだと画面のメリハリが弱くなったり、背景とキャラが分離したような絵になるので、背景とキャラと、どちらもリムライトで強調して、画面をまとめました。

■吉村:コンセプトとしては、アニメ的イラスト的なキャラクター表現ではあるけれど、情報量としては格段に多い絵作りをしようと決めました。
私の中でこだわったのが、肌の影の中の情報量です。光が当たっている部分は情報を飛ばして、影の中で質感や立体感を表現しています。

ⒸBandai Namco Entertainment Inc.

■吉村:今見るとすごいね(笑)。キャラクターはアニメ的な表現だけど、牙装や背景はリアルな表現になってる。アニメとリアルの良いところ取りをしようとした結果がこれですね。この辺りの答えにたどり着くまでに半年くらいかかったよね。

●板倉:第二評価版自体が半年くらいかな。2016年の1月から始めて、5月までですね。

■吉村:この第二評価版の映像で、キャラクターの表現が良いと評価されて、社内でも応援モードになってきました。
『コードヴェイン』が世に出せたのは当時「ロシア帽ちゃん」って呼んでいたミアが、上手く表現できたからといっても過言ではありません。彼女が開発予算を持って来てくれたようなものなので、起死回生のキャラクターですね(笑)。

ダンジョン制作

■吉村:こうしてキャラクターについては目途が立ったんですが、実際にゲームを作り始める段階で、物凄く苦労したのが、探索するダンジョンの制作でした。

●依田 優一(よだ ゆういち)
ゲームデザイナー/『コードヴェイン』ディレクター
主にアクション関連を担当

●依田:まず、制作のフローを組んで進行する時点で大変でしたね。簡易な箱型アセットでダンジョンを作ってみて、これでいける!となったら、本番アセットで作り込むというフローだったんです。でも、本番アセットに差し替えてみたら、想像以上にダンジョンの景観が変わってプレイフィールが違う…という事が結構あって。開発フローやルールを定めても、想定どおりにならないことが沢山あったのが、大変でした。

■吉村:『ゴッドイーター』の戦闘フィールドは、フィールド内の場所ごとにゲーム性の住み分けがしやすかったんですね。
ここはアラガミと戦う場所、ここは通路、と場所の役割を決めて役割を満たすように作れば良かった。
コードヴェインは探索アクションRPGという事で、順序だててユーザーの感情曲線を誘導するレベルデザインが非常に重要で、簡単なルールで要素を切り分けられるものではなかった。

●依田:ゲームデザイナーと、レベルデザイナー、ビジュアルアーティスト、エンジニア、色々な職種の方が、それぞれ連携していく必要がありました。

■吉村:そういうモダンなゲームの作り方のノウハウを、ほぼ持っていない状態でのスタートでしたので、その獲得がプロジェクトとしての命題でしたね。

●依田:板倉さんは、このダンジョン制作はどうでした?

板倉:みんな経験が全く無い状態でスタートでしたので、遊び甲斐のあるダンジョンを作る、絵を当てはめる、それがちゃんと作れるのかっていう、悩みの連続でした。
第二評価版の時にはダンジョン制作フローの検証をスタートしていたんですが……。

■吉村:一回失敗しちゃいましたね(笑)。

板倉:作ろうとしていたダンジョンが奇抜すぎたかもしれませんが、まともに制作フローを進行できませんでした……。ただ、並行して進められていた検証作業に救われましたね。今はBandai Namco Studios Malaysiaにいる永田さんから当時、アセットの制作とブロックアウトされたアセットをちゃんと組み立てるっていう技術の獲得もしておきたい、という提案があって、そちらも並行して進んで行いました。それが、今でいう「崩壊都市 地下区域」のエリアのような雰囲気の場所です。それが、第二評価版の発表の時期になんとか間に合って、乗り切ることができました。

■吉村:『ゴッドイーター』の開発チームには無かったノウハウだったので、他のプロジェクトの経験者、Unreal® EngineのプロフェッショナルであるBNSのメンバーに、『コードヴェイン』の開発に参加してもらって、助けてもらいました。
他にも、株式会社シフトさん、株式会社イルカさんといった、様々な方に助けていただきました。

 


オフィシャルサイト
https://www.code-vein.com/

販売元:バンダイナムコエンターテインメント
Bandai Namco Entertainment Inc.

※記載されている会社名・製品名は、各社の商標、または登録商標です。
(※1)“PlayStation”は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
(※2)Xbox Oneは米国Microsoft Corporationおよび/またはその関連会社の登録商標または商標です。
(※3)©2019 Valve Corporation. Steam 及び Steam ロゴは、米国及びまたはその他の国のValve Corporation の商標及びまたは登録商標です。
(※4)Unreal® is a trademark or registered trademark of Epic Games, Inc. in the United States of America and elsewhere. Unreal® Engine, Copyright 1998 – 2019, Epic Games, Inc. All rights reserved.
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「CODE VEIN™」
CODE VEIN™ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

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