『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』ができるまで(前編)

開発エピソード第10弾では、2019年1月にPlayStation®4(※1)/Xbox One(※2)/STEAM®(※3)で発売されたフライトシューティングゲーム『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』について、バンダイナムコスタジオ側での開発エピソードをご紹介いたします。     


『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン(以下、エースコンバット7)』の開発プロジェクトメンバー
小柳 匡史 開発ディレクター
夛湖 久治 VRディレクター・DLCディレクター
廣田 慎也 マルチプレイディレクター
岩渕 正樹 エンジニアリングディレクター
相川 将人 リードゲームエンジニア
山本 治由 リードVRエンジニア
菅野 昌人 アートディレクター
糸見 功輔 ナラティブディレクター
反町 信哉 アートマネージャー
渡辺 量 サウンドディレクター

雲からスタートした開発

●小柳 匡史(こやなぎ まさし)
開発プロデューサー

小柳: いつもの慣れ親しんだメンバーですが12年ぶりのナンバリングタイトルという事で、まずは立ち上げの経緯から話していきたいと思います。

菅野: アートが最初に着手しました。企画の中身を決めるに当たってコンセプトアートを死ぬほど描いてました。

●糸見 功輔(いとみ こうすけ)
ナラティブディレクター

糸見: 2012年くらいからなので7年前か……記憶が古すぎて(笑)。7年前にちょうど次のエースを作りましょうって話があって、アサルト・ホライゾン(以下、ACAH)の後ちょっと経ってからですよね。
早い段階で「雲」をコンセプトにすることは決まって、「雲を使って立体的なフィールドを作りましょう」って話は出ていたんですが、その時はまだtrue SKY™(※4)の技術もなくて、夢物語のように話していました。
まずは、雲を出すことで本当に面白くなるのかを検証する必要があって、ACAHの環境をベースに白くて丸いオブジェクトをいくつか空中に置いて、疑似的に雲のフィールドを作ってみました。そこで飛んでみると結構面白かったんですよね。
今までのようにただ空中を飛んでいるというよりは、雲に沿って飛ぼうとか、雲の中を潜り抜けてみようとか、ジャングルジムのような遊びが生まれそうだなっていう感覚はありました。ただ、本格的に開発を進める前に『エースコンバット インフィニティ』を最優先で開発を進めるということに方針が変わったので、『7』は一旦据え置きとなりました。

※4:true SKY™
Simul Software社が開発した革新的なリアルタイム天候生成システムのミドルウェア

反町: インフィニティが2013年の年末にβテストがあって、2014年の春にサービスインしてそこから運営が始まって、だいぶ軌道に乗ってきたかなというぐらいの時に、じゃあまた『7』の構想を再開しようって話になったんですが……。
2014年の夏から、立体的な雲はどういう風に作るのかという技術研究を少人数で始めたのが再スタートの形だったんです。それで社内で技術研究をやっていたんですが、目指すところが高くて結果的にはなかなか難しかったです。
並行して菅野さんにミドルウェアを探してもらっていて、2014年の年末くらいにtrue SKY™でいけるんじゃないかという事になり、2015年に入ってから企画も固めはじめて、あとは開発の座組はシンガポールスタジオ(以下、BNSS)を立ち上げたので、そちらと一緒にやっていく事になりました。

小柳: 企画チームとして考えたのは、ACAHの後にリリースされたインフィニティが、ある程度、原点回帰したキャンペーン(※5)になっていたので、今作もそこは継続しようとしました。それに加えて、楽しさも提供しなければならないんですけど、自分の判断で敵を倒し、難局を乗り越えてエースパイロットになるという『エースコンバット』のコアな楽しさは絶対に担保しようと思っていました。
その上で新しい遊びを探していくという立ち位置でスタートしたプロジェクトだと思っていますし、最後までそこは大事にしました。インフィニティがいろいろな意味で『7』に繋がりましたね。

※5 キャンペーン
ストーリーのミッションをクリアすることを目的に一人でゲームを進めていくこと

菅野: インフィニティの成功っていうのは大きかったと思いますよ。お客さん同士がつながったというのもありますし、ACAHで大きな賭けに出て紆余曲折あったけれど、 そこでエースコンバットのメカニクスを見直す機会を得られることになって、『7』にたどり着く道としては良かったと思います。

反町: プレイステーション・エクスペリエンス(以下、PSX)での発表は、true SKY™を使ったティザーも出していて、なかなか早い時期に発表していましたね。

小柳: エンジニアからは、ゲーム画面としてはまだ表面的なものでしかないから……ってきつく言われていた時期ではありますね(笑)。

糸見: まだあの時はシナリオもできていませんでしたし、「最終的にこういうものを作りましょう」というゴールの共有化を目的としたティザーでした。
製品版ではエンジニア的にもクオリティがたどり着いているのは素晴らしいですよね。

反町: 最初にBNSSのことを話しましたけど、BNSSのアニメーターの方に、糸見さんが戦闘機の挙動等を指導しましたが、すぐに応えられるくらい技術が高くて、 true SKY™やUnreal® Engine(※6)も使って、ティザーのトレーラーとしては良いものができたと思います。見た目としては(笑)。

菅野: 一番最初の絵が分かりやすく出ちゃったので、途中からプロジェクトに入ってきたアーティストやエンジニアはもうゲームができてると思ってましたね。 なので、まだコンセプトを立てた段階でしかないからと伝えて、ミッションやシナリオのアイデアを練ったり物語を作ったり。そうして2016年の頭くらいに片渕監督にシナリオをお願いしたんですよね。

糸見: そうですね。片渕監督とのお話しが進む前に、すでにティザーを制作し始めていましたし、一部はティザーをもとに構成を組み立てていきました。

反町: 「軌道エレベータは出したいです。王女を出したいです。雲は立体的に表現するんです。」と。

糸見: 落語の三題噺状態ですよね。お題は決まっててここからどう成立させるか。2015年のPSXの時のトレーラーのシーンも最初は繋げなくてもいいかなと思っていたんですけど、河野ブランドディレクターから突っ込みがありまして(笑)。

©ACE COMBAT™ 7:SKIES UNKNOWN & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

反町: 完成を目前にしてようやくつながったんですね。

糸見: あれはイメージでいいんじゃないですかね、という話をしたんですけどダメでしたね。よく覚えていたなーと。

海外スタジオとの協業

小柳: 開発体制の話になりますが、今回は海外拠点となるBNSSと初めて協業しましたね。

●反町 信哉(そりまち しんや)
アートマネージャー

反町: BNSSをアジアのハブにするという会社の方針があって、うまくいくかは未知数でしたが面白い試みでした。我々もシンガポールの人たちの技術力の高さがわかったし、こちらのフローがいかに日本的過ぎたのかも理解できました。彼らの技術力の高さに助けられ、最初のティザーもBNSSのスタッフがいなければ作れなかった。
すごく勉強になりましたし、現在も続いている関係性でもありますので、これからもお互いに勉強し続けられれば、と思っています。

菅野: 職分がきっちり分かれているというのが、いわゆるウエスタンスタイルの仕事の仕方だなと思いましたね。一人のエンジニアがなんでも面倒を見るというのが日本的なプロジェクトスタイルだと思うんですけど、 全然そういうことが無く、レベルデザインのツール一つ取っても作業分担が分かれていて、あとはエンジンの改造を行う時はまた別々にとか。
多分今まで日本のエンジニアの万能っぷりに慣れていたんだと思いますね。そういう仕事の仕方は日本的だったんだなとこのプロジェクトを通してわかりました。

反町: ツールもHansoftやshotgun®等は今でこそ良く目にしますが、当時は海外はこんなソフトを使っているんだということも分かりましたし。新しくチャットツールを使ってみたりと、コミニュケーション手段もいろいろ試しましたね。 チャットツールに翻訳botを入れてみましたが、頂点カラーというものがクライマックスカラーという訳し方になったりしたので、結局全然使わなかったですけど(笑)。

糸見: ACAHでもアートに関しては海外のアーティストにキャラクターデザインをお願いしたり、パフォーマンスキャプチャをアメリカで撮影したのですが、プロダクション全体のレベルで海外と協業するのは今回初めてだったんですね。 例えば、普段ストーリーボードに使用している用語が通じないなど、日本との文化の違いを肌で感じることができました。伝えるためにはどうやって説明しようとか、コミュニケーションについて勉強になりましたね。

反町: 海外の外部委託会社にも我々は通訳を介してやり取りをしたんですけど、シンガポールの方は直接英語でやり取りしてくれるので、その方が効率的だなと思いました。

小柳: エンジニア視点で岩渕さんは何かありますか?

岩渕: 日本的な作り方っていう話になるかと思いますが、海外のような作り方に切り替えが出来ていなかったところが反省点ですね。 マルチプレイなどの専門的なところは、だいぶBNSSで作ってもらって助かりました。

小柳: いろいろな仕様においても重視するポイントに最初はズレがありましたね。今作のエースコンバットはどうあるべきかを、もっと早い段階で全員に細かいところまで共有できている状態に持っていくべきだったと反省しています。

廣田: マルチプレイの開発に関して、最初のうちは日本式のやり方とは違う部分があって試行錯誤の連続でした。途中、日本のネットワークエンジニアの方に入っていただいたあたりから、意識をどんどん共有できるようになっていって、最終的には同じ目標をもって作業できたのではないかと思います。

Unreal® Engineとボーダレスになる開発について

小柳: 今回初めて取り入れたUEについてはどうですか?

●相川 将人(あいかわ まさと)
リードゲームエンジニア

相川: BNSSと協業する事に決めた時点で、UEを採用することは決まっていました。 まずはエースコンバットのコアとなる部分を移植するところから始めました。UEでエースコンバットが求める広くてきれいなマップや大量のオブジェクトを処理しきれるのか不安だったんですが、早い段階でプロトタイプを作ってその不安を払拭できたのは良かったです。
実際に開発してみると、イテレーションが早いし、グラフィックもクオリティの高いものがすぐに確認できる環境だったのでスタッフのモチベーションという面ではUEを採用して良かったと思います。 ゲームの中身については、協力していただいたエースコンバット開発経験のないBNSSのエンジニアスタッフに英語で仕様を説明したり、レビューして手直ししてもらうコミュニケーションが個人的には一番大変でした。

小柳: 企画視点だとミッションのレベルに関して、こうやったら楽しんじゃないかというアイデアをレベルデザイナーがある程度短時間で手触りを確認できる形で実現できたり、試せる範囲が広がった点は助かりましたね。 面白さのパフォーマンスをUEで確かめてみようって、短いスパンで試行錯誤を繰り返すことができるのはメリットですよね。

夛湖: VRはUEで助けられたところが多いですね。作る人が必ずしもアーティストじゃなくても、アートに近いこともできて自分でデータを作ったり、自分の好きなものを表現できるのが良かったですね。

反町: ビジュアルとしてはtrue SKY™がUEのプラグインとしてあったので、よかったなーと思っています。それも込みで最終的なルックをかなり早い段階で決められたので、初期段階でビジュアルのメンバーにこういうルックを目指します、という方針提示ができたのは大きかったと思います。

菅野: 今振り返ると機能の実装待ちみたいなものはなかったですしね。最終的にはレベルデザイナーに助けられましたね。

小柳: いろいろできるようになって良かったですねーとレベルデザインに言うと、苦労するのはこっちなんだよって怒られちゃうんですけどね(笑)。
話は戻りますけど、サウンドで量さんの技術的な工夫とかトライってありますか?

●渡辺 量(わたなべ りょう)
サウンドディレクター

渡辺: ひとつめはエンジン音を、サウンドライブラリで有名なドイツのBoom Libraryという会社の作った「TURBINE」っていうソフトウェア開発と、協業しながら音色を作って採用したというのは大きな試みですね。
向こうの会社から戦闘機を扱っているゲームといえばエースコンバット、是非うちの技術も使って欲しいとお話をいただいて実際にサウンドプリセットを協同で作っていきました。 過去シリーズでは実際に戦闘機の取材に行って音を録っていたんですが、ここで着陸してくださいとかそんなことは言えなくて(笑)。「TURBINE」でスロットルの状態とかを制御できるようになって、より狙ったエンジンの音が出せるようになったのがトライの一つですね。
もうひとつは「Wwise」っていうサウンドミドルウェアを導入したところですね。デザイナーがエンジニア側に一つ一つお願いしていた演出を、サウンドだけで完結できるっていうソフトで、できることが増えたので積極的に色々試したんですけど、結果的に自分の仕事がめちゃくちゃ増えました(笑)。その「Wwise」を使って実現したインタラクティブミュージックっていうのも糸見さんにご意見を聞きつつ作っていきました。

糸見: 本当に大変なことになっちゃってすみません(笑)。でも、効果は高かったですね。 ミハイが初めて登場するシーケンスで、作曲の大久保さんとBGMにリアルタイムにコーラスをかぶせることを試していただいたら、うまくハマって、これ全編に使おうってなったもんだから、えらいことになりました。

渡辺: 糸見さんって音楽も編集されるじゃないですか。動画をプレビズで編集してて、完全に音楽的な視点から「ここで切ってね」ってサウンドに渡してくださるんですけど、これどうやって実現しようって……。

糸見: もともとは『エースコンバット6』のトレーラーを作っている時に、作曲の小林さんとの曲の打合せでデータのやり取りが多くなって、じゃあステム(パートごとに分けられたトラックデータ)頂戴ってお願いしたんです。僕のほうで楽曲も一回編集するからあとで調整してね、と。 一回映像に合わせてから再度楽曲を調整してもらったことに味を占めたんですよ(笑)。これなら完全に映像と合わせることができる。この手法をどうにかしてゲームでやりたいなぁと思っていました。

渡辺: サウンド業界的には「ステムください」っていわれるのが一番嫌がられるんですよ(笑)。でもそこで渡すって事は小林さんとすごく信頼関係があるんだなと思います。

糸見: 最高のものを作ってもらっておいて、ぶち壊すってことですからね……。

菅野: 逆に言い換えるとPhotoshopのレイヤー全部くれ、サウンドが全部直すからって言っているようなものなので、ちょっと嫌な感じですよね(笑)。

渡辺: サウンドには無い発想なので「ここで曲切るんだ!?」っていうプレビズ映像で鳥肌が立つっていう体験もして、逆に音楽の可能性を教えていただいた気持ちもあります。

糸見: どんどん作業量が増えていったね。

渡辺: そうそう(笑)。あとエースコンバットのフライパスあるじゃないですか。すれ違い音。あの仕組みを中西さんから引き継いで実装していたんですけど、 あれはどの方向からオーバーヘッドしているかとか入射角とか機体とか見ながら、テーブルからサウンドを選んでその結果を補正するっていう技術なんですけど、エースコンバット3の時から特許としてあったのですが、先日特許が切れたそうなんです。20年ぐらい前から技術的チャレンジをしてきたんだなという事を改めて感じましたね。

キャンペーンの開発で気を付けている事

小柳: プレイヤー自身の判断で攻略、考察して撃墜するというシリーズのメインコンセプトにはこだわりました。キャンペーンのミッション仕様やレベルデザインで気を配ったのは、例えばエルジア側はこういう考えでいるんだから戦況の変化によってこういう行動をとるはずだとか、軍事作戦としての整合性を取りながらも一機の戦闘機の活躍をトリガーとして盛り上がるシチュエーションを作るところですね。
その上でミッションごとのギミックやレベルも、面白かったり気持ち良かったりするものでなければならないってところは苦労しました。さらにこれらにシナリオも乗ってくるという。この三つともきちんと融合させないとエースコンバットとして面白いミッションにならないですから。

©ACE COMBAT™ 7:SKIES UNKNOWN & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

菅野: たまに来るちゃぶ台返しとか(笑)。

小柳: ちゃぶ台返しもうやりすぎているなと思いますね。ブリーフィング信用されないじゃないですか(笑)。

反町: 信用できないですよね。「逆をいけ」みたいな。

小柳: DLCミッションでもユーザーさんから「対艦ミサイル持っていったのにえらい目にあったと」という声がありましたし。

菅野: 潜水艦が相手ですから、それはもっていきますよね。

糸見: で、本当に空戦だけだったと。

反町: 初見はブリーフィングを信用しますよね。

糸見: え、それは信用していないから対艦ミサイルをもっていったんじゃないの?

小柳: どうせ潜水艦と戦うんでしょ!鹵獲(※7)とか言ってるけどって。

※7 鹵獲
敵の軍用品・兵器などを奪い取ること。

岩渕: オオカミ少年になっちゃったんですね……。

小柳: 自分でやったという達成感を担保しないといけないのが苦労した点ではありましたね。各国上層部や軍の思惑が通っているかは考慮しつつ、その中でトリガーが何を成功させて達成感を得るのか、遊びの面でもシチュエーションの面でも足りていない時期があって、全てのミッション内容を大きく見直しました。当然必要だったとは思ってはいますが、最初からもっと深く考慮した上で作るべきだったと反省しています。

反町: 今回は立体的な雲で、空を見せたいというのがありますが、その中で対地と対空とバランスのとり方って工夫したんですか?

小柳: 対地、対空、対艦ともに連続しすぎると飽きてしまうので、ミッション単位ではなくフェーズ単位で連続しすぎないようには気を付けています。 あと、効率的に破壊しようと思うとどうしても近い対象物を破壊したくなる。けれどもそれだとつまらなくなるので、特に対地をやっている時は空からのちょっかいや撃ちたくなるような戦闘機の割り込みが発生するようにはしています。あと一歩こうできていれば、という視点では開放感が大きな対空戦を増やせば良かったかなと。そこはDLCのほうで生かさせていただきました(笑)。

菅野: 製品版を遊んでいただいて、ユーザーの意見を聞いてDLCに反映するっていうことはインフィニティで培われた経験になるんじゃないですかね。

小柳: 演出側として糸見さんはどうです?

糸見: まずは12年ぶりのナンバリングタイトルっていう事が大きいですね。過去のプレイ体験が守られて、かつ向上しているということを大事にして、エースコンバットのお約束はきっちり作りこんでいます。 ブリーフィングひとつとっても、インフィニティから担当していただいている株式会社flapper3の鈴木さんに、ものすごく高密度のブリーフィングムービーを作っていただきました。まず期待されている部分はきちんとクリアする、それプラス、BGMなどで新しい試みもいくつか導入しました。DLCでは更に向上した形になっているかと思います。

菅野: 幕間とかもそうですけど、表現の幅が広がりましたよね。今回は実写とCGキャラクターあるいはイラストとモーショングラフィックスだけとか。

糸見: インフィニティが起点となっていることが多いですね。インフィニティは、ブリーフィングだけでストーリーを展開していこうという試みだったので、モーショングラフィックスを主体にしました。エースコンバットは、毎回カットシーンの手法を変えています。3はアニメ、4は片渕監督による静止画とナレーションの映像、5はフルCGアニメ、ゼロは実写合成と、とにかく幅が広いです。今回はその集大成になっていると思います。

反町: 幕間のムービーも片渕監督のシナリオをどうムービーに落とし込むのかっていうところから始まって、実際限られたバジェットでどう作るかをILCAさん(株式会社ILCA)と考えて、最終的に実写の撮影とCGの撮影を構成してうまくできたんですけど、かなり大きなロケ隊を組んでいただき、海外も含めていろんなところに撮影に行きました。

糸見: 打ち合わせの時に、ロケハンはどこならいけるか、どこがイメージに合っているかとかを皆で検索しましたね。その後、本格的な撮影が開始されてILCAさんと一緒に、吉﨑監督や撮影監督の深澤さんには、アメリカ、北九州、大島、千葉、吉祥寺などに行ったりしていただきました。

オンラインマルチプレイとVR開発

小柳: オンラインマルチプレイの開発について、廣田さんどうですか?

●廣田 慎也(ひろた しんや)
マルチプレイディレクター

廣田: オンラインは全世界のプレイヤー達と一緒に遊ぶので、どこの人と対戦しても極力プレイフィールが変わらないように制作を進めました。日本だけじゃなく海外ともテストしたりした点はこだわりというか慎重に行った点です。 また今回はプラットフォームも複数あったのですがどのプラットフォームで遊んでも面白いように、プレイフィールが変わらないように注意しました。
その他こだわったところは、キャンペーンでできることはマルチプレイでもできなければいけないというところです。今回ポストストールマニューバ(※8)という新しい仕様が入って、それがマルチプレイではできませんだと、お客さんとしては「何で?」ってなってしまうと思うんですよね。通信負荷は高いんですがそれはやるべきだろうと判断しました。実際プレイしているユーザーさんが対戦で戦術に利用している動画を見ると対応して良かったなと思いました。

※8 ポストストールマニューバ
失速した状態で機体を操縦する“失速後機動”のこと。エースコンバット7では一部の戦闘機においてゲーム上級者が操作テクニックをより極める新要素として実装

相川: 台本用意してきたんですか(笑)?

小柳: 話がまとまり過ぎてて突っ込みどころがないので次に行っちゃいます(笑)。
続いてVRについてですが、VRは本当に評判が素晴らしいですよね。

山本: 最初の頃、キャンペーンモードはPS4で60フレームと聞いていたんですが、実は30フレくらいで……、と後から聞いてVRは難しいなと思いましたね。 その頃からキャンペーンとデータを分けてVRはVRで特化していく事になったのですが、分けて良かったなと思います。

夛湖: VRは音周りでも、プレイヤーがゲーム中に置かれている環境の臨場感を出すのが、すごく大変だったと思うのですが、量さんどうですか?

渡辺: はじめはキャンペーンの音と同じものを載せるつもりだったので1か月くらいでできると思っていました。でも、いざVRゴーグルを被ってキャンペーンの音をそのままVRモードで聞いてみると、ものすごいしょんぼりしたサウンドに聞こえて……。その時にこれは大変だと理解しましたね。 そこからVRの没入感を演出するために、立体音響で聞かせたり、目に見えていない箇所も全部音を鳴らす必要があるのでキャンペーンよりも大変で、最終的にはキャンペーンとは全く別のゲームになるくらいサウンド調整を行いました。

糸見: エースコンバットBGM、コックピットの音、無線の音等、同時に複数のサウンドが再生されます。そのバランス調整はある程度シリーズでの知見があるのですが、VRのような空間では今までのセオリーが通じないんだなと痛感しました。

渡辺: VRサウンドのプレゼンテーションとしてやっていたのは、まずコックピットからどういう音がしているかは動画とかDVDとかを半年間くらい見まくりました。結論としてはものすごい恐怖や孤独と戦いながら無線の情報を頼りに戦っているっていう事で、それをリアル寄りでやりつくしてしまうとエースコンバットならではのケレン味が味わえないって事も見えていたので、フライトシューティングとしてのキャンペーンとリアルなVRの落としどころを探しながら作りました。

©ACE COMBAT™ 7:SKIES UNKNOWN & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

山本: 量さんすごいなと思うのが、ハンガーで流れているBGMが最初は自然に流れていて、自分の気持ちの盛り上がりと同時にどんどんBGMも盛り上げてくれて、最後に出撃の時は一気に押さえてエンジン音だけになるのが気分と合っていて、あれが一発で出てくるのがすごいなって思いました。

渡辺: あれは、インタラクティブにパートを重ねていくっていう方法をとっています。最初はハンガーでは曲が無くてもいいんじゃないかっていう話もあったんですが、それで遊んでみるとただのフライトシミュレーターになってしまったんです。 でも、小林さんの曲や開発チームの作った曲を載せてみると、これがエースコンバットだ!と思いました。それは自分だけじゃなくプロジェクトの人にもそう思ってもらえたと思うんですが、改めて曲の力って大きいなと感じました。

菅野: CEDECでも量さんが話していましたが、エースコンバットの持っているお約束ごとみたいなのをVRに引き込んでいくために、ものすごい工夫や苦労をしているんですよね。音が鳴ってないとエースコンバットじゃないとか。

渡辺: そこも一回外してみてってところですよね。外してみてやっぱり必要だったとわかったりするので。

菅野: 爆発のドップラー効果のタイミングもリアルじゃないけど、こっちの方が理解しやすいとかもありましたよね。

渡辺: そうですね。これについてはVRもキャンペーンもやっているんですが、菅野さんからはとにかく空間を感じさせるサウンドを頼むよ、って言う大きなお題を任されていました(笑)。 本当に距離を感じさせる遅延だったりとかドップラーがきっちり再現されていたりとか、物理的にこうなっているんじゃないかっていうのはプログラマと検証して入れてみました。
面白かったのは、実際の数値を入れてみると全然エースコンバットらしくなく、フライトシューティングゲームの大前提である爽快感やケレン味が失われてしまうっていうのを自分の席で体験できたので、最終的な落とし所へ調整をかけていけました。

菅野: おかげでVRは今までエースコンバットに興味なかった人や、本職のパイロットの方も興味を持ってくださったり宣伝していただいたり、いろんな企業さんにも注目していただいて、VRってまだまだいろんな発展ができるプラットフォームなんだなと改めて思いました。

反町: あれで全ミッションやりたかったよね。

渡辺: VRのカットシーンもMAまで終わっていたのに、操作できないのはダメって河野さんから言われカットになりまして……(笑)。

糸見: 最後の最後まで揉めたけど結局使わなかったよね。

音から生まれる臨場感

小柳: エアショーではサウンドで特別なことをやっているんですか?

渡辺: そうですね。エアショーにとても詳しい中西さんや河野さんがいるので……(笑)あそこだけ特別に音を作っているんです。最初は「VRと同じでいいですから」言われたんですけど、何度作ってもやり直しになって。 本当に耳が割れんばかりのエアショーの音響の「どこから飛んでくるのかわからなくて近づいてきたらわかるっていう定位感を全部再現しなきゃダメじゃん!」って言われて、そこだけで3か月くらい割いた記憶があります(笑)。最終的には、デジタルクリップ寸前まで音量の幅を使い切った、中々こんなゲーム無いんじゃないかというくらいの音量感と迫力にトライしました。

菅野: あとエコーとかですかね。

渡辺: そうですね。甲板で鳴っている音楽も、休日皆でエアショーを見ている設定だって聞いていました。エアショーと言ったらロックンロール、僕の好きな『エースコンバット2』の曲を引っ張ってきて、ロックンロールが甲板スピーカーで鳴っているようなエフェクトをかけながら作っていましたね。

菅野: ファミリースキー(※9)ってあるじゃないですか。あれが僕大好きで、スキーっていう題材を表すために、普通だったらスキーのエッジとか形とかストックの振り方とかを工夫するとか、ロケーションも雪の質感などにこだわったりすると思うんですけど、一番最初に聞こえるスピーカーから流れている曲がゲレンデで反響して鳴っていて、それを聞いた瞬間に「臨場感って結局こういうところだよなぁ」っていうのをVRのエアショーモードの曲で思い出しました。音が形成している世界って大きいですよね。

※9 ファミリースキー
2008年にバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売されたゲーム。

渡辺: ファミリースキーはまさにサウンドディレクターの大久保さんがそこにすごくこだわったところで、僕も「ここだな」と思って今回取り入れました。


オフィシャルサイト
https://ace7.acecombat.jp/

販売元:バンダイナムコエンターテインメント
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