インタビュー

『Goonect』ができるまで(ゲームデザイナー/アーティスト/アニメーター/サウンドクリエイター編)

 
バンダイナムコスタジオでは、新入社員がチームを組んでゲームを作るという、実践さながらの新人研修が行われています。
2人の主人公たちが手を繋いで冒険する、運命共同体協力型アクション『Goonect』は、新人研修で作られた作品ですが、ゲーム販売プラットフォーム「Steam(※1)」で無料配信され高い評価を得ています。新人たちが入社してすぐにゲームを開発できる指導と、これを配信する体制が整えられているわけです。
『Goonect』を通し、バンダイナムコスタジオの新人研修について開発チームに話を聞きました。
座談会はZoomによるオンライン形式で実施されました。(2022年6月実施)
 
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バンダイナムコスタジオの新人研修を受け、『Goonect』開発を担当したプロジェクトメンバー

谷口 大輝
ゲームデザイナー

塙 陽次朗
ゲームデザイナー

高田 桃伽
ゲームデザイナー

横山 かんな
アーティスト

秋田谷 笙
アニメーター

小林 伸嘉
サウンドクリエイター

「お金をもらいながら勉強できるなんて!?」手厚い新人教育

――よろしくお願いします。まずは自己紹介と学歴、入社前にゲーム開発を経験されていたか否かをお願いします。

●谷口:プランナーです。『Goonect』ではディレクターを担当していました。『Goonect』というゲーム自体の立案、仕様の策定などを行いました。ゲーム開発を教えてくれる4年制専門学校の出身で、入社前にゲーム開発を経験しています。

●塙:プランナーです。工程管理、そしてレベルデザインやギミックなどなど、色々とやっていました。ゲームとは無関係の大学から弊社に入ったので、開発経験は一切ありません。

●高田:『Goonect』ではアウトゲーム関連やUIを担当、レベルデザインの一部も行いました。ゲーム系専門学校の出身で、在学中にチームでの開発も経験しています。

●横山:ビジュアルアーティストです。私は新人ではなく2年先輩で、新人にこの職種の人間が足りないので参加することになりました。『Goonect』では主人公たちのキャラクターデザインや、アセットにUIといった2D周りのデザイン、そして、キャラクターの3Dモデルを担当しました。学生時代はゲームとは関係ない普通の4年制大学で英語を専攻していたので、ゲーム制作経験がない状態での入社でした。既にプロジェクトに配属されてはいますが、ゲームはまだ完成していないため、開発~発売及びユーザーからのフィードバックという一連の流れを経験したのは『Goonect』が初めてです。

●秋田谷:アニメーターです。キャラクターのアニメーション全般を作りました。専門学校ではチームを組んで10分ほどの短編CG映画は作っていたんですが、ゲームについては全く知識のない状態で入社したことになります。

●小林:サウンドクリエイターです。音楽、効果音、キャラクターのボイスといった音関係を担当しています。大学院卒で、学生時代は小規模チームで映画やドラマ、アニメの音響制作をしていましたが、ゲーム開発は入社してからが初めてです。『Goonect』のように楽曲がループしたりインタラクティブに変化するものは作ったことがありませんでした。

――6人中ゲーム開発の経験者は2人。ゲーム系学校の卒業者は2人。ゲーム開発未経験、そしてゲーム系以外の学校からバンダイナムコスタジオに入社した人が多いわけですね。『Goonect』チームの特徴・長所をアピールしていただけますか?

●谷口:どれになるんだろう……?

●塙:最初の方に、色々といってたよね?

●谷口:「積極的で、元気なチームです!ガンガンいこうぜ!」という感じですね(笑)。

――結成された当初から、熱量が高くて結束力のあるチームだったのでしょうか?

●谷口:新人研修自体がリモートで行われたので、結成してすぐにこうした雰囲気だったわけではありません。お互いのことを知るところからのスタートでした。

●塙:高田がお絵かきゲームを使ったオンライン懇親会を企画してくれて、そこから結束力が高まったという感じです。

●高田:チームとして集まったからには発起会をやっておいた方がいいだろうと思い、オンラインで集まることを提案しました。これは、学生時代にチームでものを作る機会があったこと、そしてサークル的な組織の運営をやっていた経験が活きています。

――入社前に不安に思っていたことについて教えてください。

●谷口:ゲーム開発というと、大人数のチームを組んで、メンバーが職種ごとにキッチリと仕事を区分した上で進めていくようなイメージがありました。そうした中、僕のようなプランナーは何をすべきか、具体的な部分については分からなかったのが入社前の不安でした。

●塙:僕なんかは、不安しかないというような状態でしたね。ゲーム開発と無関係の大学出身で、ゲーム開発のゲの字も分からなかったですから、不安も谷口のような高レベルのものではなかったです(笑)。でも、新人研修に入る前に行われた職種ごとの専門研修では、同じプランナーの先輩から基本を教えてもらえました。「これでお金をもらっていていいんだろうか……?」という位に手厚い指導で、基本は一通り頭の中に入ったという状態にできました。続く新人研修は実戦編のような感じでしたね。新人研修が始まってからは、メンターは干渉するわけでも放置するわけでもない、適切な距離感で指導をしてくれるのもありがたかったです。新人プランナー同士で話をしている時も「お金をもらって勉強できるなんて、バグじゃね?」って(笑)。

●高田:私たちの入社時には新型コロナウイルスが流行していて、「リアルに集まって、みんなで顔を合わせて……」というような既存のやり方が全くできなくなっていました。入社したあとも、みんなに会うこともなくフルリモートでの勤務で、チーム制作としての熱量を保てるのかという点でも不安がありましたね。ただ、新人研修のチーム編成は基本的に志願制で、新人プランナーが提示したいくつかの企画に対し、自分が作りたいものを選ぶ形式でした。『Goonect』を作りたいという熱意あるメンバーが集まったので、フルリモートの開発でも熱意が保てたんじゃないかと思います。

●小林:私の場合ですと、学生時代は映像制作をしていてゲーム開発を経験していなかったので、ゲームの中で音を鳴らすことそのものを学んでいく感じでした。パソコン用のゲームだと、スペックによって音が鳴るタイミングが変わってきたりもするんですが、これなどは映像制作ではありえなかった現象ですし。アイデアはあるけれど、他の職種の方にどう伝えればいいかが分からずに不安でしたが、各種の研修ではお金を払ってでも受けたいようなカリキュラムや、ベテランの方に相談する機会が用意されていて、実務的な部分や、他の職種の方とのコミュニケーションの仕方を教えてもらえました。おかげさまで、ストレスフリーで新人研修の開発を進めることができましたね。 

ベテランのメンターが、新入社員たちをプロフェッショナルへと導いていく

――メンターからもらったアドバイスで心に残ったものはありますか?

●谷口:『Goonect』の企画書を書いている際、「文章にインパクトを付けたらどうか」とアドバイスいただいたのが印象に残っています。いわれた時はピンとこなかったんですが、実例を示してもらうことで、内部の人に向けた企画書であっても、アイデアを伝える上で言葉の言い回しも大切なんだなと実感できました。

●塙:新人研修に入る前、専門研修の段階で、先輩が3時間くらい付きっきりで指導してくれたことがありました。私が出した企画に対し、「この企画のコアになる部分はここで、コンセプトはこうで……」と読み解いた上でアドバイスをくれたんです。こうした考え方は、新人研修を終えて配属されたいまでも役に立っています。

●高田:『Goonect』を作っていく上で、谷口が書いた企画書を皆でブラッシュアップしたんですが、その際にメンターからいわれたのが「企画書とは、100人が読んで100人が同じゲームを想像できるものがいい」というひと言でした。企画書を発表する場には多くの人たちがいますから、見る側のことも意識しなければならないということを教えてもらいました。

●秋田谷:これまでCGアニメで作ってきたのは人間のキャラクターばかりでした。『Goonect』では人間以外のキャラクターを作ったんですが、それだけに動物の動きとして正しいモーションを付けることに執心していた時期がありましたね。しかし、動物の動きとしては正しくても、ゲームキャラクターの動きとしては地味なものになります。自分でも納得いかない日々が続いていたんですが、メンターから「君が付けるモーションはゲームを盛り上げるためのもの。正しいことはもちろん大事だけど、ユーザーさんが操作して気持ちいいかどうか、魅力的に見えるかどうかが大切なんだ」とアドバイスをもらい、その後の制作もやりやすくなりました。

●小林:弊社ではサウンド制作者それぞれが異なる個性や特技、得意とする制作ジャンルを持っていて、各々の仕事がパズルピースのように組み合わさる音作りをしています。私の場合は映像音楽や歌モノなど、特に音楽制作への興味が強く、他の専門分野に対する知識が浅いところがありました。そんな中で研修を進めていったんですが、そこで効果音を得意とする先輩から「どんな音にも力があり、足音一つでキャラクター性を伝えたり、決定音一つで登場人物がどんな気持ちを持っているのかを表現できる」と教えてもらいました。音に関する新しい視点を与えていただけたわけで、この言葉はいまも大事にしています。

●横山:私は新人ではないのでメンターは付かず、この新人研修をコーディネイトする先輩側の人たちからアドバイスをもらう感じでした。その中でも『Goonect』とは別チームをお世話している、同期のコンセプトアーティストからコンセプトアートの描き方を教えてもらいました。「コンセプトアートは、自分が好きな綺麗な絵を描くところではない。その企画のコンセプトやターゲット、ベネフィットを伝えられるかどうかに気を配らなければならない」ということに気づくことができたんです。

――入社する前のアマチュアとしてのモノ作りと、入社後のプロとしてのモノ作りで違いを感じたことはありましたか?

●横山:私は本気で絵を描き始めたのがかなり遅かったので、企画が伝わるような商業的な絵と、インディープロジェクトらしい尖った絵のバランスを取るのが凄く難しかったです。商業的なところに寄りすぎてしまうと、企画の尖ったところが伝わらないし、決していいものにはならないんです。

●秋田谷:自分でいいと思っているものが谷口に気に入ってもらえなかったり、ゲームに実装した際イマイチな出来映えだったりといったことがありましたね。でも、『Goonect』チームの皆は積極的にフィードバックをくれるので、そうした意味ではメンバーに恵まれて制作を進めていけました。学生時代に作ったものをいま見直すと、自分が好きなもののアニメーションに偏りがちで、「まずいな……。あのころの自分って、これでいけると考えてたのか……」と思ったりしますね(笑)。

●塙:アマチュア活動の経験がないので、入社してからの制作も、仕事としてアプローチしていた側面が強かったと思います。でも、みんなの姿を見て「遊び心を入れないといけない」と気づかされました。普通のプログラム作りでは納期が最優先になってしまい、新しい仕様やアイデアを取り入れるにも萎縮しがちです。しかし、ゲーム開発、特に『Goonect』チームではエンジニアが仕様外で作ってくれたものが正式に取り入れられたりもして、こうした柔軟さや熱気を「凄くいいな!」と思いました。

●谷口:僕は入社前からアマチュアとしてゲーム開発を経験していました。その時のゴールは、友達に遊んでもらったり、外部にちょっと出展する位でした。でも、新人研修を受けている間「自分はお金をもらってゲームを開発している。作ったものを買っていただき、楽しんでもらわないといけないんだ」という意識が芽生えてきたんです。ここから自分をどう変えていくかには悩みました。面白いゲームを作るというところはアマチュアでも同じです。でも、プロの場合はお客さんがいますから、しっかりとしたものを作らないと失礼ですし、マイナスの気持ちを与えたくない。こうした意識改革によって、各種の仕様やアイデアをお客さん視点で見ることができるようになったのは学びでしたし、楽しいとも感じています。

たとえ新人であってもチャンスを掴め、クリエイターとして成長できる

――『Goonect』が配信されましたが、自分の作品が世に出たことの感想、もしくはユーザーさんからの反響で、心に残っているものはありますか?

●谷口:率直にいって、作品が世に出たのは凄く嬉しいです。思った以上にいい反響が多くて、中でも「友達と盛り上がりました」とか「笑えました」というお声は、『Goonect』の企画として狙っていた部分だったので嬉しかったですね。

●塙:自分自身も含めて「ゲーマーって、厳しめな評価を付けるものだよな」と思っていたんですが、配信されたらお褒めの言葉を多くいただけて感動しました。『Goonect』の企画を立てる際、どういうところを狙うかは沢山議論した覚えがあります。ユーザーさんからのレビューも、僕らの狙いを汲み取ってくれたものなので、そこはちゃんとやれたんだなと思いました。身近な人に遊んでもらうのも嬉しくて「ほんまに出たんやな……」と感慨深かったです。

●高田:配信日のお昼ごろにみんなで集まって、『Goonect』の評判をエゴサーチしていたんです。いい反響がありましたし、配信を待ち構えてくれた方もいらっしゃって、凄く嬉しかったですね。配信後に、専門学校時代の友達に「このゲーム、私が作ったので遊んで見てください」とプレゼンしたら、「実はそのゲーム気になってたんだよ!」っていってもらえたことがあったんです。友達が作ったから遊ぶのではなく、純粋にゲームとして面白そうだと感じてもらえるものを作れた。嬉しかったですし、感動しましたね。

●小林:実況配信などで、音楽を口ずさんでくださる方が多かったのが凄く嬉しかったです。自分の作ったものが人に影響を与えているんだという実感がありましたね。このゲームでは、おもちゃをフィーチャーしたテーマパークのようなステージで冒険します。そして、テーマパークには楽しい音楽がつきものですし、帰りの電車で思い出に浸りつつ曲を口ずさむような体験は凄く感情を動かすものです。なので、『Goonect』でも「楽しい経験を思い出すようなきっかけになれればいいな……」と願いながら曲を作りました。「サントラが欲しい」という方もおられて、凄く嬉しかったです。

●秋田谷:個人的な感覚なのですが「自分の作品に対し、アニメーターの仕事に関する言及がないほど嬉しい」んです。アニメーションだけが目立っても、ユーザーさんがゲーム世界に没入する上でのノイズになります。もちろん、質が低いとなおさらです。ですから実況配信を見ても、アニメーションに関して何かいわれないことが嬉しいんですよ(笑)。
でも、アクションそのものに没入していただけるなら話は別です。相棒を引っ張って大きく飛ばす「ひっぱりジャンプ」ではキラキラ光りながらびゅーんと飛んでいくんですが、その際に「おお!」「こんなに飛ぶんだ!」と声を上げていただいたのは嬉しかったですね。
アクションに没入して、動きそのものに爽快感を味わってもらえるというのはアニメーターとしてとても嬉しかったです。

●横山:キャラクターに沿って作っていただけたアニメーションなので、私も大好きですよ(笑)。正直なところ、自分が手がけたゲームが世に出たというのは夢なんじゃないかと思っています。自分の描いた絵が実況配信のサムネイルに使われているというのは、もう意味が分からないくらい興奮しました(笑)。配信者さんご自身の絵と私の絵を合わせていただいたりと色々工夫しておられて、それを見て『Goonect』が世に出たことに現実感が伴ってきた……という感じです。とてもありがたいです。

――では最後に、バンダイナムコスタジオにエントリーしようと考えている、未来の後輩に向けてアドバイスをお願いします。

●谷口:たとえ新人であっても、チャンスをくれる会社です。新人1年目でディレクターを経験でき、作ったゲームが世に出たというのは夢のような経験でした。学生のうちはゲームをプレイしてその面白さを研究し、「面白いゲームを作りたい!」という熱量を蓄えて欲しいと思います。今後はこうした熱量の高い人が求められていくでしょうし、チャンスも掴めると思いますから。

●塙:僕は何の経験もない状態で入社し、先輩方に追いつこうとしている段階ですが、追いつくために必要なものは懇切丁寧に教えてもらえます。ゲーム開発というのは職業としても面白いと感じますし、不安を感じた人も挑戦していただければ、弊社のみならずゲーム業界全体のためになるのではないかと思います。

●高田:バンダイナムコスタジオにはアットホームな雰囲気があります……こういうと何だかブラックに聞こえるかも知れませんが、そんなことはありません(笑)。谷口は「チャンスをくれる会社だ」といってましたが、私たちが「ゲームを作りたい、販売したい」とどん欲にアピールしたからこそチャンスをもらえたのかなとも思います。ですので、皆さんも前に前に出る勇気を持って欲しいです。

●小林:入社1年目で音の演出までやらせてもらえた上、その作品を世に出してもらえるというのはなかなかないことだと思います。昨今のゲーム開発は大規模化・長期化しているだけに、こうした経験ができるのは大きな魅力ではないでしょうか。バンダイナムコスタジオは制作の上流に携わることが多く、そこでは音の演出についてプランナーさんたちと考えていける、クリエイティブな仕事ができます。個人の特技ややってみたいことを最大限に活かしてくれる会社ですので、自分の好きを突き詰めた「これなら任せてください!」といえる人材にはピッタリだと思います。

●秋田谷:私が入社1年目に感じたのは、人から意見してもらうことや、自分が作ったものを人に見てもらうことの大切さでした。自分も含めて、デザイナー志望の人は技術の習得に執着したり、自分の作りたいものを突き詰めるあまりに視野が狭くなりがちなところがあります。でも、作品は見せた回数だけ良いものになっていくものです。技術の習得も大事ですが、自分の作ったものを見せて意見をもらい、これを取り入れていくことを心がけてみてください。

●横山:私は絵を学び始めたのが遅かった上、3DCGも未経験だったので、弊社を受けた際も入社できないんじゃないかと思っていたんです。なので、採用通知が届いた時も、嬉しいのと同じ位不安でした。でも、いざ入社してみると、先輩方に穏やかな上に面倒見が良い人が多かったんです。先輩方がお仕事中にもかかわらず、私はずっと質問していたんですが、凄く丁寧に教えていただいたおかげで、モデラー兼デザイナーとして成長することができました。専門職を志望される人は「自分には無理なんじゃないか」と思いがちですが、私のような例もあるので、やりたいと思ったら是非挑戦してみてください。

――ありがとうございました!

(ライター:箭本 進一)


オフィシャルサイト
https://store.steampowered.com/app/1850360/Goonect/

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(※1)©2022 Valve Corporation. Steam 及び Steam ロゴは、米国及びまたはその他の国のValve Corporation の商標及びまたは登録商標です。

「Goonect」
©Bandai Namco Studios Inc. Published by Phoenixx Inc.

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