インタビュー

『Goonect』ができるまで(エンジニア編)

 
『Goonect』は2人の主人公たちが手を繋いでゴールを目指すゲームです。お互い助け合いながら進まなければなりませんが、道中は山あり谷あり。2人の手はゴムのように伸びますが、あまり離れすぎると繋いだ手が離れてミスになります。思わぬハプニングが起こり、プレイ中も笑いが絶えません。成績によって「なかよし度」が判定されるため、仲良し同士が絆を確かめるのにピッタリです。
そんな『Goonect』は、バンダイナムコスタジオの新人研修として開発されました。新入社員11人がチームを組み、メンターの指導を受けつつ、実際のゲーム制作と同様のやり方で制作されています。
2022年5月27日には「Steam(※1)」で無料配信され、レビューのうち92%が「おすすめ」の「非常に好評」という高い評価を得ています。(2022年6月30日時点)
ゲーム開発では、リリースしてユーザーからのフィードバックを受けることで開発者として成長できます。現在は開発が大規模化し、このサイクルを経験するのに数年かかることもあります。しかし、今回の『Goonect』では、入社してすぐの新人たちがゲームを世に出すことができました。
『Goonect』の開発を通し、バンダイナムコスタジオの新人研修について開発チームに話を聞きました。
座談会はZoomによるオンライン形式で実施されました。(2022年6月実施)
 
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バンダイナムコスタジオの新人研修を受け、『Goonect』開発を担当したプロジェクトメンバー

森 敦史
リードエンジニア

德地 達哉
エンジニア

杉本 直樹
エンジニア

玉置 信義
エンジニア

岩田 晃広
エンジニア

ゲーム開発未経験でも、「自分の作ったゲームで遊んでもらう」目標がすぐに達成できる

――よろしくお願いします。まずは自己紹介と最終学歴、入社前のゲーム開発経験の有無について教えてください。

●森:リードエンジニアの森です。皆のタスク管理や、本作の特徴である“伸びる腕”の実装を行いました。情報系の大学で院まで進んでから弊社に入りました。ゲーム開発経験者です。

●杉本:エンジニアの杉本です。インゲームでのキャラクターの動きを作ったり、企画の方がステージギミックを調整できるようにエディターを制作しています。電気系の大学で院まで進み、画像処理などを研究していました。ゲーム開発経験者です。

●玉置:エンジニアの玉置です。オブジェクトの描画や、これを綺麗に見せるシェーダーを作りました。苦労の甲斐あって、可愛いゲームになったと思います。ゲーム専門学校で2年間プログラミングを学んで弊社に入りました。ゲーム開発経験者です。

●德地:エンジニアの德地です。担当はアウトゲームの部分で、プレイヤーさんがゲームに入るまでの部分やゲーム後のリザルト表示、ネットワークの基礎を担当しました。情報系大学の学部卒で弊社に入り、ゲーム開発は未経験です。

●岩田:エンジニアの岩田です。サウンドさんが作った効果音や曲をゲーム内に実装、音を調整できるような下準備の部分も行いました。高専の情報科ですが、ゲーム開発の授業があったわけではありません。ゲーム開発経験者です。

●※その他運営スタッフ1名:新人研修の運営からゲーム配信までをお手伝い。

――エンジニア5人のうち、ゲーム開発経験者は4人ですが、ゲーム専門学校卒業者は1人なんですね。バンダイナムコスタジオにおける新人研修の概要について聞かせてください。

●運営スタッフ:弊社の新人研修は「プロになるための登竜門」という位置づけで、新人がチームに分かれて7ヶ月ほどをかけてゲームを開発し、チームでものを作る大切さや素晴らしさを学んでいきます。昨年は40人ほどが4つのチームに分かれて開発を進めていきました。開発の流れ自体は現場のプロと同じです。新人にはメンターが付き、マンツーマンで指導やケアを行っていきます。

――なるほど。ゲーム開発者として成長するためには、ゲームを1本完成させてリリースし、ユーザーからのフィードバックを受けるのが大事です。バンダイナムコスタジオでは新人研修の段階で、現場と同じ流れで開発を進めていく体験ができるわけですね。

●運営スタッフ:そうですね。若く鋭い感性が、伸び伸びとゲームを開発できるわけです。

――新人研修でのチーム分けはどのように行われるのでしょう?

●運営スタッフ:新人プランナーたちがそれぞれ企画を立ててプレゼンを行い、他の職種の新人たちは、どの企画で開発をしたいか希望を出します。その上で、弊社のベテランたちが、新人それぞれの尖った個性を補えるようチーム編成を行いました。

――チーム編成の時点でベテランたちがしっかりと導いてくれるわけですね。

●運営スタッフ:私は企画メンバーをアサインしたのですが、『Goonect』の発案者に対し、チーム全体を活性化させるプランナー1人とマネジメント系に強いプランナー1人を組ませています。プランナーに対しては、自身の長所やチーム内で期待される役割を教えていますが、この辺りは職種によってやり方が違うようですね。

●玉置:エンジニアの場合、上長から教えてもらえるというよりは、新人研修を通して個性を見出して磨いていこうという感じでした。

――新人研修がスタートするまでに不安はありましたか?

●玉置:凄く不安でしたが、新人研修でのサポートは凄く手厚かったです。先輩方が色々と教えてくださるので、毎日仕事が楽しかったです。

●杉本:上長との面談が毎日行われるので、そこでアドバイスをいただけるのも助かりましたね。

――ゲーム開発を専門に勉強していなくても、バンダイナムコスタジオには入れるものなのでしょうか?

●杉本:そうですね。僕らエンジニアの開発経験は、授業で教わったというよりは「個人でちょっとしたものを作っていた」というレベルの者が多いです。ゲーム開発をしたことがなくても心配せずに来て欲しいと思いますね。

「自分たちが作ったものを遊んでもらえるのが嬉しい」と、早くも芽生えたクリエイターとしての自覚

――『Goonect』の開発において、エンジニアとして苦労した場所があれば教えてください。2人のプレイヤーがオンラインでアスレチックアクションを遊ぶ。かつ、2人の間に“腕”が伸びて障害物に引っかかるなど、相互作用がある。新人研修で作るにしては技術的なハードルが高そうな内容ですが。

●杉本:このリモート時代ですし、『Goonect』をより多くの方に手にとって欲しかったので、オンライン対応は当然という感覚で、技術的なハードルや難しさを気にするようなことはあまりなかったです。とはいえ、オンラインですから、通信速度や応答の安定度の違いによって、再現性のないバグや自分の環境で確認できないバグも出てしまいます。再現性のあるバグに関してもデバッガで自由に調査できないこともあり、原因の特定に時間がかかるケースが多くありました。

●德地:オンラインのアクションゲームを開発すること自体が初めてだったので、「完成させられるかな?」という不安は多少ありました。しかし、研修ということもあって、チャレンジができるという楽しみの方が大きかったです。苦労した点はやはりオンラインであることに起因していて、問題が発生した際の切り分けですね。ネットワークの遅延、通信が関係した処理の順序によるバグ、そしてオンラインに関係ないゲーム自体のバグなど、色々なところに注意する必要があったのが印象的です。

●森:そもそも、『Goonect』チームの誰もオンラインゲームを開発した経験なんてありませんでしたから「新しいことに挑戦できる!」とワクワクする気持ちの方が大きかったです。でも、実際に開発を進めていくと、ここまで大変だとは思っても見ませんでした。中でも伸びる腕に関しては苦労しましたね。仲間の救出アクションなど、ゲームの面白さに深く関わる機能ではあるものの、開発当初はゲームの面白さをかなり阻害してしまう位のクオリティしかなかったんです。しかし、開発初期から検証を始め、終盤までブラッシュアップを続けた甲斐あり、最終的には狙った操作感と挙動をするところまで改善できて良かったですね。

●玉置:自分は描画プログラムが得意かつ、ネットワークの部分は全くの無知だったので、自分の得意な部分を担当する気満々でした。エンジニアたちの中では、唯一オンラインかどうかはあまり影響を受けなかったです。しかしながら、『Goonect』はステージ攻略型の3Dアクションゲームという、オブジェクトの物量が必要になるタイプのジャンルです。『Goonect』チームには圧倒的に素材と人手が足りませんでした。最終的にはアセットを購入した上で、その見た目を『Goonect』の世界観に合わせるためのシェーダーを作るなど試行錯誤し、なんとか期間内に求められた品質以上の画面を用意することができたんです。

●岩田:「オンラインゲームを作る」と聞いた時は、期間内に開発を終えられるとは思いませんでしたね。僕の仕事はサウンドの実装だったんですが、メニュー画面でBGMのパートがだんだん増えていく処理や、場面が切り替わってもBGMが残って後からフェードアウトする処理に苦労しました。

――『Goonect』が配信されてからしばらく経ちますが、感想は?

●森:自分たちが作ったものをYouTubeなどで実況しつつ遊んでもらえるのが嬉しいですね。『Goonect』は主人公が足場から落ちた時に叫ぶ感じというか、2人のユーザーさんがわちゃわちゃしつつ遊べるように作りましたので、こうした意図通りに遊んでもらえているのを見て「ちゃんと作って良かった」と感じています。全体的にもポジティブな感想が多くて感動です。

●玉置:自分たちが作ったものを受け入れてもらえるかどうかという心配がありました。でも、リリース後はVTuberの方に「『Goonect』を遊んで欲しい」と勧めてくださる方も結構おられたんです。「自分は人に勧めたくなるようなゲームを作れたんだ」と感慨深かったですね。

●杉本:弊社を志望する人は「誰かを楽しませるゲームを作りたい」という願いがあると思います。『Goonect』では、本当のユーザーさんからのリアルな感想をもらえ、楽しんでもらえたことが感動的でした。

●德地:ユーザーさんから「新人研修とは思えないクオリティだ」とお褒めいただけたのが嬉しかったですね。そこは開発時からの目標でしたから。

●玉置:運営スタッフさんがユーザーさんの反応をまとめて持ってきてくれるのも嬉しかったですね。みんなで見ながら喜んでいましたよ(笑)。

●岩田:知り合いにプレイしてもらうのも嬉しかったです。感想を見てニヤニヤしていましたね(笑)。

●玉置:僕はチャットアプリで色々なコミュニティに参加しているんですが、そこでは『Goonect』の開発に携わっていることを明かしていないんです。でも、コミュニティでは『Goonect』が「こんな面白いゲームが出たよ」とおすすめされていて、嬉しかったです。

――『Goonect』は新人研修のゲームが世に出たわけですが、目標としているダウンロード数やユーザー数はありますか?

●運営スタッフ:私が知る限り、そうした目標は設定されていないです。新人のみんなが作品を世に出して評価を問うことがゴールですね。

――なるほど。新人は先輩のアドバイスを受けつつ、クリエイターとしての創作意欲が赴くままにゲームを作って研修できる。そして、作られたゲームはバンダイナムコスタジオとPhoenixxの力でパブリッシングされ、新人はリアルなユーザーの感想を得て成長できる。アマチュア開発ではできない経験ができるわけですね。

「コミュニケーションが取りやすく、頼ることが上手くなっていく」新人育成環境

――皆さんは『Goonect』の開発を終え、いまはそれぞれの現場に配属されています。その後のお仕事において、『Goonect』チームの仲間とコミュニケーションを取ったりすることはありますか?

●玉置:『Goonect』チームに限らず、同期の仲間とはコミュニケーションを取っています。僕たち2021年卒は横の繋がりが強いことが特徴で、配属後の仕事においても困ったことがあれば互いに助け合っています。こういう現状だからこそ、絆が消えてしまうことが怖かったという感覚があるんです。森なんかも、僕らの後輩に当たる2022年卒の人たちとの会合を頻繁に開いてくれます。新型コロナウイルスでコミュニケーションが不足しているところを埋めようとしてくれているわけです。オンラインの開発だからこそ、密接に話し合えるところもありました。
『Goonect』の開発時も、他の新人研修チームにテストプレイをしてもらって意見を募るようなこともありました。僕らのチームが『Goonect』を作った……というよりは、同期に助けられながらの開発だったと思います。

――最後に、バンダイナムコスタジオへの入社を考えている人に向けてメッセージをお願いします!

●森:「自分の作ったゲームで遊んでもらう」という目標が、こんなに早く達成できるとは思ってもいませんでした。ユーザーさんからの感想をいただき、自分の名前がクレジットに載る。こうした体験は、普通のゲーム会社なら入社から3~4年かかるものなので、この違いは大きいと思います。

●杉本:たとえ応募時はゲーム開発未経験であっても、ベテランである先輩方の指導を受けることで、他の市販ゲームに見劣りしないものを作れるのがバンダイナムコスタジオです。入社半年で『Goonect』を作れるようになりますので、初心者でも安心してください。

●玉置:同期も先輩方も、凄くあったかい会社です。困った時は誰かが助けてくれるので、仕事していくうちに頼るのが上手くなっていくんですよ(笑)。なので、いま自信を持てなくても、入社すればゲームクリエイターとして成長していけると思います。

●德地:この状況で入社する人は、先輩との関係を築けるかどうか不安を覚えていると思います。弊社の新人研修では、新人1人に先輩1人がメンターとして付いてくれます。新人研修を通してコミュニケーションを取りやすい形が整えられていて、いい会社だと感じられました。

●岩田:僕自身がダメもとで応募したようなものなので、それでもなんとかなりますよと伝えたいですね。

――ありがとうございました!

(ライター:箭本 進一)

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オフィシャルサイト
https://store.steampowered.com/app/1850360/Goonect/

※記載されている会社名・製品名は、各社の商標、または登録商標です。

(※1)©2022 Valve Corporation. Steam 及び Steam ロゴは、米国及びまたはその他の国のValve Corporation の商標及びまたは登録商標です。

「Goonect」
©Bandai Namco Studios Inc. Published by Phoenixx Inc.

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