いろいろな⾊のカードを使って「めだまやき」「テレビゲーム」など、お題に出されたものをつくり、周りの⼈が当てて遊ぶ新感覚のボードゲーム・イロトカタチ。誕⽣秘話では、イロトカタチ制作の経緯や裏話を取り上げました。ここでは、イロトカタチの考案者であるゲームデザイナー・澁⾕美幸(しぶや・みゆき)さんに話を聞き、イロトカタチに込めた思いを探ります。

イロトカタチデザイナーインタビュー「子どもと大人が一緒に楽しめるゲームを」
「⼦どもと⼤⼈が⼀緒に楽しめることだと思います。イロトカタチで遊んでみると、意外と⼤⼈より⼦どもの⽅が強いことが多いんです。⼤⼈がお題をつくると、いろいろな情報があるせいか迷ってしまうようで。使いたい⾊が手元にない時にも柔軟な発想がしにくい傾向があります。でも⼦どもは、何でもパッとつくりますね。迷いがないんです。
『オムライス』というお題だった時に、カラフルなオムライスをつくった⼦どもがいました。『これはブルーベリー味、これはイチゴ味』って。それを聞いて、『⼦どもには⼤⼈には⾒えない世界が⾒えるのだなあ』と感じました。当てる側になっても、⼦どもは驚くようなひらめきで当ててきます。⼤⼈が⼿加減することなく、対等に楽しめるのがこのゲームのいいところですね。
もちろん⼤⼈だけでも楽しめます。私たちは会社の飲み会でよくやりますね(笑)⼈がどんどん集まってきて、毎回盛り上がります」
確かに「オムライス」をつくるのに、⻩⾊と⾚のカードがなかったらパニックになりそうです(笑) 澁⾕さんには3歳のお⼦さんがいるそうですが、⼀緒にイロトカタチで遊ぶことはありますか。
「まだ3歳なので、普通のルールで遊ぶのは難しいですが、彼は彼なりに楽しんでいます。私がニンジンをつくって、『これ、なーんだ?』と聞いて当ててもらったり、今度は彼が真似してニンジンをつくったり。息子と遊ぶ時は色カードはランダムではなく、好きな色を選んで遊んでいます。
こちらで推奨のルールは⽤意していますが、参加する⼈に合わせてルールを簡単にしたり、難しくしたり、みんなが楽しめるように変えて遊んでくれたらいいなと思います」
イロトカタチに込めた様々な思い
澁⾕さんは、ボードゲーム制作を⽬的としたバンダイナムコグループの有志チームのメンバーでした。しかしそれまではデジタルゲームが担当で、アナログゲームづくりには関わったことがなかったそう。なぜチームに加わろうと思ったのでしょうか。
「『シンプルな遊び』を考えてみたいと思ったからです。最近のゲームはどんどん進化していますが、同時に内容が壮⼤で複雑になっているようにも感じます。そこがおもしろいところである⼀⽅で、ゲームや遊びの根幹は『シンプルなもの』であり、そこから発展させていくというのが、あるべき姿だと考えていて。⼀度原点に⽴ち返ってみたいという思いがありました」
確かにイロトカタチは、ルールがとてもシンプルですよね。
「あとは、相⼿の⽬を⾒て遊ぶことができるというところもアナログゲームの良さだと思っています。デジタルゲームも複数⼈で遊ぶことはできますが、相⼿の⽬よりは、画⾯を⾒ていますよね。場を囲んで、おしゃべりしながら和気あいあいと遊べるものをつくりたかったというのも参加を決めた理由のひとつです」
アイディアを考える上で、こだわっていたことはありますか。
「イロトカタチの魅⼒と重複しますが、⼦どもも⼤⼈も同じ⽴場で⼀緒に楽しめるというところです。難しいゲームでは⼦どもは楽しめないですし、簡単すぎるゲームでは⼤⼈が退屈してしまいます。そうではなくて、誰でも同じように楽しめて、お互いが仲良くなれたらいいなと思っていました。
振り返ってみると、⾃分が⼦どもを育てるようになってから『誰でも楽しめるゲームをつくりたい』という思いがより強くなった気がしますね」
「会社に⾏く途中、橋の上を歩いている時に思いつきました(笑)私は以前、クラシックゲーム(主に1980年代につくられた、絵がドット絵で描かれているゲーム。ファミコン が代表例)の移植を担当したことがあり、今もパックマンのチームにいます。そうした経験からドット絵のようなゲームをつくれないかなと考えていました。
ドット絵って、8×8とか16×16のマスに⾊が付いているだけですが、何を表しているか分かるじゃないですか。『抽象的な絵だけど何か分かる』みたいなゲームがつくれればと考えていて、ある⽇ふと思いつきました」
確かに⾊のカードでつくった「エビフライ」や「おにぎり」は、ファミコンを連想させますね!続いて、澁⾕さんの職業である「ゲームデザイナー」のお仕事に迫ります。
イロトカタチ考案者の澁⾕さん ゲームデザイナーってどんな仕事?
澁⾕さんは15年以上、「ゲームデザイナー」として株式会社バンダイナムコスタジオに勤めています。そもそもゲームデザイナーとはどんな仕事なのでしょうか。
「ゲームをつくる仕事で、プログラミング、⾳と絵の制作以外はすべて携わります。まずゲームの企画を考え、市場を調査し、企画が決まれば中身を考えつつ、販売までのスケジュールや予算の管理もします。仕事は多岐に渡るため、雑⽤も多いですよ(笑)」
プログラミング、⾳、絵以外全部ですか!つまりゲームのプロデューサーのような仕事ですね。
「はい、プロデューサー、ディレクター、シナリオライターなども、全部ゲームデザイナーの仕事です。具体的な仕様を考えるのもゲームデザイナーの役割で、例えばゲームに登場するキャラクターの細かな動きや、メニュー画⾯の構成なども決めます。それらをプログラマーや絵を描くビジュアルアーティストに伝え、相談しながら形にしていきます。ゲームづくりの始めから終わりまで関わるのがゲームデザイナーです」
なかなか⼤変ですね・・・。ゲームデザイナーを⽬指されたきっかけは何だったのでしょうか。
「⼤学時代に短編⼩説を書くゼミに⼊っていて。ものをつくることが好きだったので、何かを⽣み出す仕事に就きたいなと思い、ゲーム業界を志望しました。またこの仕事は企画書などで⽂章を書くことも多いので、大学時代に養ったスキルがいかさればいいな、という思いもありました。ただ⼩説と企画書はスタイルが違うので、⽇々勉強ですね」
ゲームデザイナーをしていて「楽しい」と思うのはどんな時ですか。
「できあがった商品が⼈の⼿に届いて、楽しんでいる姿を⾒た時です。今回イロトカタチの制作を通して、アナログゲームでは得られる喜びが特に⼤きいと感じました。
というのも、デジタルゲームをつくっている時は、⾃分の⽬の前で遊んでいる⼈の姿を⾒る機会があまりありませんでした。イロトカタチのテストプレイでは、多くの⽅に『おもしろい』『楽しい』と直接⾔ってもらうことができ、本当にうれしかったです。アソビザでも、1⼈でも多くのユーザーの⽅にイロトカタチを知ってもらい、魅⼒に共感してもらえたらうれしいです」
澁谷さん、ありがとうございました!
(C) Bandai Namco Research Inc.
※各映像で使用されているバンダイナムコグループのロゴマークは2020年3月時点のものです
このページは、バンダイナムコ研究所×TRINUSの共創プラットフォーム「asobiza」閉鎖に伴い、当サイトへ移転した2020年当時の記事です。