イロトカタチ

2020.03.31

「遊びの原点」から生まれたカードゲーム  イロトカタチ誕生秘話

いろいろな⾊のカードを使って「めだまやき」「テレビゲーム」など、お題に出されたものをつくり、周りの⼈が当てて遊ぶ新感覚のカードゲーム・イロトカタチ。ここでは、イロトカタチの考案者であり、バンダイナムコスタジオのゲームデザイナー・澁⾕美幸(しぶや・みゆき)さんに、お聞きしたイロトカタチの4つの誕⽣秘話をご紹介します。

イロトカタチ誕⽣秘話① 有志チーム発⾜!「遊びの原点に」

「誰でも、電源がない場所でも遊べるゲームをつくろう」。2018年8⽉、バンダイナムコグループ内の有志が集まり、業務外のボードゲーム制作チームが⽴ち上がりました。きっかけは「遊びの原点に返ろう」というグループ社員の呼びかけだったそう。これに共感し、チームに加わったメンバーは約40⼈に及びました。

 その約2ヶ⽉後、メンバーが企画コンペで持ち寄った作品の中に、イロトカタチはありました。考案者の澁⾕さんは、過去にクラシックゲーム(1980年代につくられた、絵がドット絵で描かれているゲーム。ファミコンが代表例)の移植に携わっていたゲームデザイナー。その経験から、「抽象的な⾊の集合なのに何を表しているか分かる、ドット絵のようなゲームをつくりたかった」と振り返ります。

また澁⾕さんがこだわっていたのが、「⼦どもと⼤⼈が⼀緒に楽しめる」ということ。⼦どもが楽しめるのはもちろん、⼤⼈も退屈したり、⼿加減したりせずに遊べるということも⼤切にしていました。

他のメンバーから⾼評価を受け、企画コンペで受賞したイロトカタチ。いよいよ制作に向けて動き出します。

イロトカタチ誕⽣秘話② ルールづくりは試⾏錯誤の連続

イロトカタチは当初、今とは少し違ったルールでした。例えば、初めはお題カードがなく、つくる⼈がお題を⾃分で決めて宣⾔し、周りの⼈が「あり」か「なし」か、判定するゲームだったそう。しかし実際に遊んでみると、まず「お題を⾃分で考えて、つくる」というのはハードルが⾼いことが分かりました。

また、周りの⼈に「なし」と⾔われた場合、つくった⼈は否定された気持ちになることもあるのでは、と考えました。そこで、お題カードをつくり、当たらなかった場合は次の⼈にお題を引き継ぐことで、つくる側の難しさや楽しさを共有できるようにしたのです。

 「お題は3⼈まで引き継げます。そうすることで『ああ、これをつくっていたのね』『やっぱりそうなるよね』というふうに同じお題をつくった⼈同⼠で盛り上がったり、⼀体感が⽣まれたりしたらいいなと思いました」と澁⾕さん。

 お題は⼦ども⽤の図鑑などを参考に、ひとつひとつ選定。誰でも知っていて、⾊が分かりやすいものを選んでいきました。簡単そうなお題でも、実際につくってみると⾊のカードが多く必要なこともあり、少ない枚数でつくれるというのも重視。お題は3つの難易度に分け、遊ぶ⼈に合わせて選べるようにしました。

また、イロトカタチのおもしろさは「動かしてOK」というところです。カードを動かすことで、つくる側も、当てる側もわいわい楽しく遊ぶことができます。カードを手で持ち上げたり、つくった形をどんどん変えて伝えたりできるので、「イロトカタチはアクションゲームだ」と話す⼈もいるほどです(笑)

実はこれも、当初はなかったルール。ある時テストプレイでお題をつくっていた⼈が、どうしても伝わらず、⾊のカードを動かし始めました。この様⼦を⾒て、「伝える側の選択肢が広がるし、周りも盛り上がる!」と感じて追加したのです。

⼀⽅で、ルールが複雑にならないようにすることも重要でした。決まりが増えることでルールが難しくなれば、「誰でも楽しめる」というイロトカタチの根幹が崩れてしまいます。ルールを検討する作業は「どこまでいっても終わりが⾒えない作業だった」と澁⾕さんは話します。

イロトカタチ誕⽣秘話③ 「シンプルでかわいい」デザインへのこだわり

イロトカタチのデザインは、バンダイナムコスタジオのビジュアルチームが担当しました。年齢や性別関係なく、幅広い層に届くように「かわいくて、シンプルなデザインにしたかった」と澁⾕さんは話します。「⼦どもっぽくなりすぎても駄⽬でした。⼤⼈の⼥性も『かわいい』と思えるデザインにしたかったんです」

完成したイロトカタチのパッケージは、⽩がメイン。カラフルなドット絵でできた「たんぽぽ」や「エビフライ」などの⼩さな「お題」が規則正しく並んでいます。またカードには、小さなアリのイラストが。イロトカタチのデザインは、「ハキリアリが⾊のカードを運んで、みんなで当て合いっこをしている様⼦」をモチーフにしており、アリはいろいろなところに登場します。

遊ぶ際に下に敷くプレイシートは草むらをイメージし、⻩緑⾊。当初プレイシートはありませんでしたが、お題をつくる時に「どちらが上か下か分からない」という声を受けて⽤意しました。もちろんここにも、⼩さなアリが登場。澁⾕さんの⾔葉通り、「シンプルでかわいい」デザインになっています。

イロトカタチ誕⽣秘話④ 初めての販売!ゲームマーケット

ボードゲーム制作のチームが⽴ち上がってから1年余り。2019年11⽉に、国内最⼤級のアナログゲームのイベント「ゲームマーケット」にイロトカタチを出展し、テスト販売を実施しました。すでに幼稚園や⼦ども向けのイベントなどで、テストプレイを何度も重ねており、確かな⼿応えを感じていたイロトカタチの制作チーム。しかし、販売するのはこれが初めてでした。

ゲームマーケットに先⽴ち、イロトカタチの宣伝はほとんどしていませんでした。つまり「その場で遊んで、おもしろいと思ってもらえるかどうか」がすべてです。アナログゲームのファンが多く集まるイベントということもあり、澁⾕さんは「前⽇の夜は不安で眠れなかった」と笑います。

しかし、いざゲームマーケットが始まると、⼦どもから⼤⼈までたくさんの人が!
幅広い世代の⼈が集まり、楽しそうにイロトカタチで遊んでいる様⼦を⾒て、澁⾕さんは⼤きな喜びを感じたといいます。

そして「売れない時は10個も売れない」ゲームマーケットで、イロトカタチ300個以上を完売。中には企業の研修⽤に買っていく⼈もいて、後⽇実際に使⽤したそうです。「コミュニケーション能⼒や発想⼒の強化、社員同⼠の関係性向上にも役⽴つ」という意⾒をもらったそう。澁⾕さん、よかったですね!

わいわい遊べる!イロトカタチ

様々な局⾯を乗り越え、ついに完成したイロトカタチ。お題のカードには英語訳があり、⽇本語が分からない⼈でも遊べるようになっています。英語を勉強するゲームとしても活⽤できそうですね。

イロトカタチは「おしゃべり推奨」のゲームです。「ここがこんなふうに動くよ」「こういう形もあるよ」「惜しい!」など、お題の核⼼に迫ることでなければ、つくる⼈がヒントを与えることができ、また当てる⼈もつくる⼈に質問できます。

澁⾕さんは「たくさんおしゃべりをして、みんながイロトカタチを通して仲良くなれたらうれしいです」と話しています。

イロトカタチで遊んでみたい!と思った方、ぜひ「育てたい」ボタンを押してくださいね。イロトカタチの応援をよろしくお願いします!


(C) Bandai Namco Research Inc.

このページは、バンダイナムコ研究所×TRINUSの共創プラットフォーム「asobiza」閉鎖に伴い、当サイトへ移転した2020年当時の記事です。

一覧へもどる