インタビュー

『ソウルキャリバーⅥ』ができるまで(前編)

開発エピソード第9弾では、2018年10月にPlayStation®4(※1)/Xbox One(※2)/STEAM®(※3)で発売された武器格闘アクションゲーム『ソウルキャリバーⅥ』について、バンダイナムコスタジオ側での開発エピソードをご紹介いたします。
『ソウルキャリバーⅥ』ができるまで(前編)では、シリーズ20周年の節目を記念する作品として「リブート」のコンセプトのもとに開発された、本作クリエイターの熱いエピソードをお伝えします。 


『ソウルキャリバーⅥ』の開発を担当するプロジェクトメンバー紹介

小澤 至論 ゲームデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』製品版 開発プロデューサー
数々のタイトルをプロデュースしてきたソウルキャリバー愛溢れる男
高橋 良至 ゲームデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』ディレクター
世界で一番ソウルキャリバーに詳しい男。チーム内でのあだ名は“マステル”
大坂 朋史 ゲームデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』バトルディレクター
世界で一番ソウルキャリバーの実況解説が上手い男
太田 眞敬 プログラムエンジニア/『ソウルキャリバーⅥ』/リードプログラマー
最もフットワークの軽いスーパープログラマー
吉江 秀郎 ビジュアルデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』アートディレクター
初代ソウルキャリバーからのアーティスト
中鶴 潤一 サウンド/『ソウルキャリバーⅥ』サウンドディレクター
サウンド界の巨匠である会社員
高橋 和男 ゲームデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』DLC開発プロデューサー
これからのプロジェクトソウルを背負って立つ男
飯島 弘通 アニメーター/『ソウルキャリバーⅥ』DLCアニメーションディレクター
格闘ゲーム界の新星
矢野 義人 サウンド/『ソウルキャリバーⅥ』DLCサウンドディレクター
サウンド界のムードメーカー

開発スタートまでが、まず大変

小澤: お集まりいただき、ありがとうございます。前編は開発中に皆さんが本作の中で挑戦したことを軸に伺います。

●小澤 至論(おざわ みちのり)
ゲームデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』製品版 開発プロデューサー

小澤: まず開発までの経緯ですが、僕は肩書に「プロデューサー」と付くお仕事を20タイトルやっているんですけど、その中でも立ち上げるのが一番難しかったのが『ソウルキャリバーⅥ』でした。大きな難関が2つありまして、1つ目は圧倒的なボリューム。2つ目はクリエイター不足でした。
1つ目のボリュームなんですけど、6年くらい前でしたか、役職者がブワーっと並んでいる会議室に企画書を持って行って「『ソウルキャリバーⅥ』を作りたいです!」と説明したんです。そうしたら皆がしかめっ面で腕組みしだして「作るモードの量が多い!」「こんなに作れる人員いないよ?」と駄目出しされちゃって……。
バンダイナムコスタジオの役職者はベテランクリエイター揃いですから、想定される開発予算や期間をすぐに弾き出しちゃうんで誤魔化せないんです。
他にも「キャラクタークリエイションモードって本当に要るの?」「格闘ゲームなんだから一人用モードは作らなくても良いんじゃない?」とか。そこで「いやいやいや、ソウルキャリバーは一人で遊ぶお客様を捨てちゃいけないんです!」って言うと今度は逆に「一人用モードがメインなんだったらオンライン対戦いらないじゃん」と言われちゃう。
プロジェクトソウルが20年抱き続けてきた「我々は何を大切にしているのか?」「それを通じて世の中にどう貢献していくのか?」。そういったシリーズの理念から言語化し説得していくのは難しい仕事でした。
2つ目の人材不足なんですけど、『ソウルキャリバーⅤ』を完成させた後にチーム(=プロジェクトソウル)は一度散り散りになってしまったんです。特にバトルを作れる人がほとんどいなかったので「何とか増やさなきゃ!」と、僕と高橋 良至さんが、5年位前に平和島で開催されたソウルキャリバーのゲーム大会にこっそり見学に行きまして、そこでゲームの上手いプレイヤーの後ろから肩をたたいで「あの……急にこんなこと言うのアレなんですけど一緒にソウルキャリバー作りたくないですか?」って一人ずつ口説いていったんです。

矢野: ドラマみたい……。

中鶴: ちなみにゲームプレイが上手い人とゲームを作るのが上手い人って直結するんですか?

高橋(良): 必ずしも直結しないんですよ。それに、開発に入るとチーム作業をしなきゃいけないじゃないですか。だから、きっとこの人ならチーム内でも上手くやっていけそうだなっていう人を中心に声をかけていきました。

中鶴: じゃあ余計に人選が難しかったですね。

小澤: タイミングもありますね。会場で急に話しかけると、当然「うわっ!?」ってビックリされちゃうんです。しかも割と会場の隅っこまで隠れるように移動して「一緒にどうですか?」って聞いて回っていたので、今思えばかなり危ない人でしたね(笑)。

大坂: フードコートの端っこに連れていくんですよね。

小澤: そうそう!

一同: すごい……(笑)。

小澤: チームビルドの観点から「リブート作品(=焼き直しでは無い。再構築の意味。)」にはどうしても若い才能が必要でした。その点、開発未経験者とはいえ熱狂的なファンにはすでにソウルキャリバーの理念が備わっている。あとは会社にどう言われようと僕が新人を入れるリスクを背負って制作する場を用意するだけ。今いるベテランの方達をコアメンバーに、新しい風を投入することを忘れてはいけないですね。

エンジニアへの挑戦

小澤: プログラマーさんにお聞きします。今回『ソウルキャリバーⅥ』を作る上で太田さんのチャレンジした部分を教えていただけますか?

●太田 眞敬(おおた まさのり)
プログラムエンジニア/『ソウルキャリバーⅥ』/リードプログラマー

太田: 『ソウルキャリバーⅤ』はPlayStation®3とXbox 360®でリリースされましたが、『ソウルキャリバーⅥ』になるとPlayStation®4、Xbox OneとPCと、どれも今まで開発した事がないハードでした。普通だったら新ハードになると色々研究をしないといけないんです。ただし、今回はUnreal® Engine(※4)を採用させて頂き、絵が出るまでは本当に早かったですね。
そしてバトル制御なんですけど、全てをUnreal® Engineで作ってしまうと今まで20年間続いているソウルキャリバーっぽくならないので、今までの20年間の資産……例えばアニメーションだったりバトルスクリプトだったりっていう複雑なものを活かしつつ、どうやってUnreal® Engineに移して綺麗な描写をするかってのは心を砕きました。

※4:Unreal® Engine
Epic Games社より開発されたゲームエンジンのこと

小澤: マステルさん視点から見て、EVO Japan(※5)で初めてプレイアブルな『ソウルキャリバーⅥ』を、目の肥えたプレイヤーの方たちに遊んでいただいた時の手応えはどんなものだったんですか?

※5:EVO Japan
Evolution Championship Series(以下、EVO)は、長い歴史を持つ世界最大規模の対戦格闘ゲームトーナメント。世界中の格闘ゲームプレイヤー達がラスベガスに集まり、公平なルールと競技精神、そしてそれまで磨いてきた最高の技術で競い合う。日本で開催されるEVO Japanはその理念を受け継いだ、もう一つの世界大会。

●高橋 良至(たかはし よしのり)
ゲームデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』ディレクター

高橋(良): ソウルシリーズは初代『ソウルエッジ』から『キャリバーⅥ』まで20年の歴史があって、一作一作の操作性が違うんです。なので一言で手触りって言ってもすごく難しいんです。今回太田さんには「『キャリバーⅡ』のアクション性の高さと『キャリバーⅤ』のバランスの良さの両方をやりたい。良いとこ取りしたいです」と伝えていました。

太田: それがスタートだったよね。

小澤: 太田さんは良いとこ取りしたいって言われた時にどう思いました?

太田: 「ははっ」って思いましたね(笑)。

小澤: 余裕って事ですか?

太田: いやいや……。

高橋(良): 突破口になったのは、太田さん自身が”格闘ゲーマー“という事でした。プログラマーは技術面に寄りがちな方もいますが、太田さんは遊び手としてのパッションを持って取り組んでくれた。
バトル班というくくりの中にプログラマーの太田さんが入っていたのが良い結果に繋がりましたね。

小澤: 太田さん、どうですか?今、ディレクターの太鼓判をもらいましたけど。

太田: プログラマーって結局プログラムを触っている時間の方が圧倒的に多いんですけど、色々な格闘ゲームを触っていると「バトル班の人たちが想像しているアレはこの事なんだろうな」みたいな事がパッと出てくるようになって、物凄く仕事効率が良いんですよ。
そういう意味では、自分がこの製品に関わっているのは、やりやすいというか作りやすいかなと思いました。
そして自分は単純に格闘ゲームが好きで20年以上プレイしているんですけど、もちろん小学生の頃に将来仕事として格闘ゲームのプログラマーをやるとは想像してなかったんですが、それが今回は活きて良かったなとは思います。
この会社の格ゲー作っているチームって、上手いプレイヤーがいたら声かけますからね(笑)。面白い会社ですよ。

©Bandai Namco Entertainment Inc.

バトルを盛り上げるための挑戦

小澤: 大坂さんは本作で挑戦した事はありますか?

●大坂 朋史(おおさか ともふみ)
ゲームデザイナー/『ソウルキャリバーⅥ』バトルディレクター

大坂: 今回新しいバトルシステムを取り入れるに当たって、最初にまず大会の盛り上げも考えて、バトルの中身とビジュアルの見せ方を連動させようって話しました。
そして「剣術の達人って究極の命のやり取りをしているときに時間が止まって見える」ってよく漫画とか映画であるじゃないですか。あんな感じのが格闘ゲームでもできたら面白いんじゃないかっていう話があって、それが発生すると大ダメージが期待できる。ビジュアル的に見ても素晴らしいエフェクトが出ますし、その瞬間だけ特別なカメラワークになってキャラクターがかっこよく映るんです。
そうすると大会を見ている人は「ソウルキャリバーやった事ないけど、今すごく格好良く敵を吹き飛ばした!だからこれをやった選手は上手いに違いない!!」ってなって必ず盛り上がるんですよね。こういう風にバトルシステムとビジュアルを連動させるっていうのが今回の挑戦でした。(=リバーサルエッジ、リーサルヒット)

小澤: 実況も盛り上がるように作ったという事ですか?

大坂: そうなんですよ。僕が実況・解説をやっていただけに、実況で声を張るのはいつか、お客様が何をやってどこで拍手するかもわかるんです。なので、それに沿ったバトルシステムを作っています。

小澤: 実況しやすいゲームって大事ですね。

大坂: 大事ですねー!とても大事です!

キャラクターの背負った重みを表す音響演出

小澤: サウンドチームは何か挑戦したこととかありますか?

矢野: 効果音でいいますと、リバーサルエッジなど通常のバトルとは違う駆け引きが発生するところは、音の演出を派手にするなど、普段のバトルとは空気感を変えました。

●中鶴 潤一(なかつる じゅんいち)
サウンド/『ソウルキャリバーⅥ』サウンドディレクター

中鶴: 最初にリバーサルエッジのプロトタイプを見せてもらったら、今までのソウルキャリバーにはない見栄えでした。一方で僕や矢野さんはソウルキャリバーシリーズを長いあいだ担当してきて、今まではバトルのテンポ感を重視してきました。そこに演出としてスローが入る事によって、時間の流れがそこだけ変わる訳です。
最初は違和感があったのですが、慣れてくるとこういう演出が入る事によって、より感情の起伏も実況も盛り上がるし、バトルの抑揚もつくので、効果的だな、と思いました。
だったら、ここでは音楽も特別な事をやって時間の流れの変化を演出しないと盛り上がらないだろうなと思いましたので、今までやってこなかった音楽にも変化をつけてみました。

小澤: どの辺に変化があるんですか?

中鶴: リバーサルエッジが発動した時に、それまで流れていた音楽を止めるのではなく、その音楽が変化します。例えばあるステージだとリズムの楽器だけになったりとか、もしくは他の音が足されてより盛り上がる形にしたりといった音の変化を今回は取り入れました。

小澤: 剣豪同士の緊張感って事ですね?

中鶴: 緊張感が高まる時って盛り上げた方が良い場合もありますが、逆に引き算をして必要なものだけにして緊迫感を高める方法もあります。それはシチュエーションに応じて、使い分けて盛り上がるようにしています。

●矢野 義人(やの よしひと)
サウンド/『ソウルキャリバーⅥ』DLCサウンドディレクター

矢野: 状況によっては効果音が大事な時がありますので、効果音のキーとなる駆け引きの音が鳴った時はBGMを下げたりする事をこっそりやっています。戦っている時にずっとテンションの高い音楽、テンションの高いBGMだとバトルのストーリーの中で緩急がつかないので、キャラ同士が離れた時はクールダウンという事でリズムテンポを下げたりして緩急をつけています。
それによって、戦況のムードが変わるに従って、音のムードも変えられたらいいなと思って、色々試行錯誤しています。

中鶴: 緩急で音が静かになった時に、結構リバーサルエッジって印象的なセリフを言うんですよね。あれがもっと映えるんです。やっぱり音楽がガンガン鳴っているとセリフも埋もれがちで。とても印象的な事を言っているので、その掛け合いも良くわかるし、キャラクターの心情もバトルをやりながらわかるっていうのが良いシステムだなーと思いますね。

高橋(良): このキャラとこのキャラってライバル関係なんだって知るきっかけにもなりますし、今回の仕様に関してサウンドさんが意図を汲み取って、より良い形にしてもらえたのがすごくありがたいですね。

矢野: バトル中の掛け合いをきっかけにキャラのバックボーンに興味を持ってストーリーモードをプレイしてもらう。サウンドとしてはバトルとストーリーをつなげるというのが目標の一つでしたね。サウンドが演出の助けになっていれば、嬉しいですね。
ドラマチックな演出って感動しますよね。戦いつつストーリーが感じられるっていう。このキャラはこういう気持ちで、こういう目標を持って戦っていたんだってわかると、サウンド演出としてはやりがいがありますね。

中鶴: バトルシステムとストーリーモードって大体両立しにくいものなんですけど(笑)。それもクリエイター側の課題だと思いますが、ストーリーをやりたい人にとってはバトルに特化させても困るし、逆にバトルがやりたいプレイヤーからすれば、ストーリーはそんなに気にしませんってなりますし。そういう意味ではすごくいい形で作れたのかなと思います。

矢野: このキャラは大変な運命を背負っているなーと……エイミとか泣きそうになりながら実装していましたよ。


オフィシャルサイト
https://sc6.soularchive.jp/
販売元:バンダイナムコエンターテインメント

※記載されている会社名・製品名は、各社の商標、または登録商標です。
(※1)“PlayStation”は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
(※2)Xbox Oneは米国Microsoft Corporationおよび/またはその関連会社の登録商標または商標です。
(※3)©2019 Valve Corporation. Steam 及び Steam ロゴは、米国及びまたはその他の国のValve Corporation の商標及びまたは登録商標です。
(※4)Unreal® is a trademark or registered trademark of Epic Games, Inc. in the United States of America and elsewhere. Unreal® Engine, Copyright 1998 – 2019, Epic Games, Inc. All rights reserved.

「SOULCALIBUR Ⅵ」
SOULCALIBUR™ Ⅵ & ©Bandai Namco Entertainment Inc.

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