2024年7月19日より無料配信されたVRカードゲーム「Project: JUDGE VISIONS(プロジェクトジャッジビジョンズ)」。
実はバンダイナムコスタジオの社内企画「スタートアップチャレンジ*」から生まれたタイトルで、突如“勇者”として任命された1人の若手社員が中心となり開発されました。
カードゲーマーのロマンを掻き立てる“夢のゲーム”と話題を呼んだ本作の開発秘話を語っていただきます。
*スタートアップチャレンジ:若手社員から選ばれた1名はリーダーとなり、定められた期間と費用をかけて開発を行う社内企画。選ばれた1名は“勇者”と呼ばれる。「ゼロから自分で考えて生み出すクリエイティブ経験」を積む、育成の一環として実施。
タイトル紹介
夢想したカードゲームの姿がここに現実となる──。
VRモンスター召喚カードゲーム「Project: JUDGE VISIONS」。
ダイナミックにカードをドローしたら、手札からカードを使おう。
召喚カードを使うと、実寸大のモンスターがあなたの側に出現する。
モンスターや手札のカードを駆使してコンボを編み出し、勝利への道を切り開こう!
敵を全て倒すと新たなカードが手に入る。
デッキを強化して全3ステージを相棒のモンスター達と共に戦い抜こう。
大迫力のモンスターと興奮必至のカードバトルで、カードゲーマーとしての本能を解き放て!
「Project: JUDGE VISIONS」ストアページはこちら
開発者プロフィール
髙木雄太(たかぎゆうた)ゲームデザイナー
2019年にバンダイナムコスタジオに新卒入社。「ドリフトスピリッツ」の開発・運営に携わったのち、「Project: JUDGE VISIONS」のプロデューサー兼ディレクターとして企画立案を行う。
「君を勇者に任命する」内山社長から突然の一言
―今回は「Project: JUDGE VISIONS」開発の裏側についてお話いただきたいと思います。まずは本作開発のきっかけとなったバンダイナムコスタジオの社内企画「スタートアップチャレンジ」の“勇者”に任命された髙木さんですが、当時の心境を教えてください。
髙木:スタートアップチャレンジについては知っていましたが、まさか自分が選ばれるとは思っていなくて驚きました。
ある日突然上司から「今度打合せさせて欲しい」と言われ、急に予定を入れられたんです。
要件も言われず当日打合せの部屋へ入ると、内山社長がいて「君を勇者に任命する」と。
―本当に突然だったんですね!髙木さんはどのような反応を?
髙木:ぜひやらせてください、という反応だったと思います。
ディレクター兼プロデューサーを任せられる人材だと思っていただけたことが素直に嬉しかったです。
実際に遊び体感したVRゲームの著しい進化
―突如始まった勇者としてのゲーム開発。VRゲームに焦点をあてたきっかけは何だったのでしょうか?
髙木:勇者に任命された後は週に一度“勇者会”と呼ばれる打合せが行われるのですが、その中で上司と雑談形式で何をしていこうか、ということから話し始めていったんです。
後は、社内で話を聞いてみたい人がいたらその人を呼んでくることもありました。
色々な人と話をしていく中で、VRゲームが好きな人とお話をする機会があって。
僕自身、VRゲームは2016年に発売された初代PlayStation VRを発売日に買って遊んでいましたがそれっきりで、しばらく遊べていなかったことを思い出したんです。
そこで、最新のVRゲームがどんなものか知っておくのは良いだろうと思い、当時の最新型だった「Meta Quest 2」を買ってみました。
いざ遊んでみたら、すごく楽しかったんですよね!コードレスでストレスが少なく、ヘッドセットだけかぶれば良くて。
自由に部屋の中を歩き回りながら遊べるところが、体験として新しかったです。
ゲームもすごく新鮮味が感じられて、VRはかなり面白いおもちゃに進化しているなと。
それで、「あ、良いかも。このハードでゲームを作るのはありだ。」と思い、VRゲームの企画に絞っていくことにしましたね。
VRゲームと〇〇 難航したテーマ選び
―VRゲームの企画を幾つか考える上で、他にどのような案があったのでしょうか?
髙木:自分で遊んでみて感じたVRゲームの魅力の一つが、リアルと地続きのスケール感だと思ったんです。
例えば、モンスターを実寸で登場させることはVRゲームでしかできない。他の媒体だとモニターの中に収めなきゃいけないですよね。
でもVRゲームはヘッドセットをかぶったら目の前に空間が広がるので、椅子にしろテーブルにしろ、現実と全く同じサイズで登場させることができる。
現実に則したスケールで再現できるので、そこから得られる臨場感や迫力、没入感が強みだと感じたんです。
であれば、企画を立てるときも、そこをちゃんと活かした企画にしようと。
そこで一番最初に出した案は「自分が変身して巨大になって、巨大な怪獣と戦う」というものでした。
色々課題があり見送りとなりましたが・・・。(笑)
―そのような案から始まったんですね!それでは最終的に、「Project: JUDGE VISIONS」のメインテーマであるカードゲームに行きついた経緯を教えてください。
髙木:実は勇者会の中で、「椅子に座りながら遊べるVRゲームがあったらいいね」という話になったんです。
VRはコードレスなので基本的に部屋の中を歩き回ったりして遊ぶゲームがそこそこの数を占めています。
勿論そういうゲームはすごく楽しいんですが、疲れるのも間違いない。長時間遊ぶのが結構きつかったりするんですよね。
じゃあ座りながら遊べるゲームって何があるだろう?と考えた時にぱっと思い浮かんだのがカードゲームでした。
―「座りながら遊べるカードゲーム」と聞くと落ち着いた印象を受けるのですが、「Project: JUDGE VISIONS」のテーマ“モンスター召喚カードゲーム”へはどのように繋がっていったのでしょうか?
髙木:さきほどお話しした、巨大な怪獣と戦うゲームを企画していた時も、その怪獣を下から見上げられる迫力や臨場感はぜひ自分でも体験してみたいなと思っていたんです。
企画が見送りとなった後も、その願望を抱いたまま色々な企画を考えていて。
カードゲームを軸に考えていた時、ふと「カードバトルのアニメみたいにカードから召喚したモンスターが実寸大で登場すれば、モンスターを見上げられるじゃん!」とひらめいたんです。
―髙木さんが秘めていた願望と、カードゲームというテーマが融合したんですね。
髙木:はい!色々アイデアを膨らませて、結果的にこのようなゲームになりました。たくさんの人と話して、要所要所でヒントをいただきながら、自分の想いと組み合わせていった感じです。
決してシンプルな道ではなかったのですが、壁打ちの大切さは学ぶことができましたね。
“カードゲームの第一世代”かつて自分が抱いた憧れを現実に
髙木:実はこの企画でいきたい!と思った理由の中ですごく大きいのが、ゲームを遊んで欲しいと思うターゲット層がはっきりと見えたからなんです。
僕らの世代って小学生の時に色々なカードゲームが登場し始めた時期なんですよ。
学校でもクラスメイト皆が夢中で遊んでいました。俗に言う“カードゲームの第一世代”ですね。
なので、同じ20~30代で自分のようにカードバトルのシチュエーションに憧れを抱いている人は多いのではないかと考えたんです。
主に同世代の方へ夢のようなゲームだと感じていただけるものが出せると思い、このテーマで行こうと決めました。
その読みは幸い当たっていたみたいで、実際発表したら“夢のゲーム”と言っていただけることが多かったです。
―髙木さんと同じく憧れを抱く方が多くいらっしゃったんですね。
アニメーターや背景担当がいない開発チーム…人材配置の難しさ
―テーマが決まり「Project: JUDGE VISIONS」を世に出すまでは、どのような苦労があったのでしょうか?
髙木:「Project: JUDGE VISIONS」の開発チームは一番多くて10名、少ない時は僕とエンジニアの3名だけだったんです。
限られた人員の中で進めるのが一番大変でしたね。
僕自身初めてのプロデューサーだったので、人材配置のことも何も分からずで。沢山ミスをしました。(笑)
今思えば、絶対必要なパートの人がいなかったり…アニメーター、背景担当とか。
でも予算も限られているので、増やせない。であれば、チームの中でなんとかするしかない、という感じでした。
チームメンバー全員がそれぞれ新しいことにチャレンジしていたと思います。
―定められた期間と費用をかけて開発を行う「スタートアップチャレンジ」ならではの苦労ですね。
開発メンバーの殆どがVRゲーム未経験だった
髙木:あと、VRゲームって日本国内では開発事例がとても少ないんです。
「Project: JUDGE VISIONS」の開発チームに関しても、僕を含めて全員VRゲームの開発経験が無かった。
もっと言うと、VRゲームを遊んだことが無い人もいたんです。
VRゲームはUIなど何から何まで他媒体のゲームと全く違うので、そこの認識を統一していくのはとても大変でした。何度もやり取りを重ねましたね。
そして僕もプロデューサーとしてもディレクターとしても経験がないので、試行錯誤しながら進めざるをえない。
経験から得られる「こうすれば上手くだろう」という感覚も一つもない状況の中で進めていくので、他のメンバーにたくさん迷惑を掛けてしまったと思います。
数々の失敗を繰り返し、多くの人に支えられながら作り上げたタイトルと言えますね。
いざ試遊出展へ!プレーヤーの反応を見て気付いた視点の違い
―苦労して作り上げた「Project: JUDGE VISIONS」は後に「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT(トーキョーインディーゲームサミット)2024」などで試遊出展されましたね。試遊された方々の反応はどうでしたか?
髙木:すごく良かったです。
アンケートも取らせていただいたんですが、遊びに来て下さる方は想定した通り20~30代が多くて。
「夢のゲームですね」と言っていただけたのが嬉しかったです。
殆ど全員から、ポジティブな反応をいただくことができました。
正直、開発過程の中で上手くいかなかったこともあって、メインコンセプトをしっかりゲームへ反映できているか不安がありました。
でも遊んでいただいた方に喜んでいただけて安心しました。
―髙木さんがゲームに込めた想いがしっかりと届いたんですね。初めてプレーヤーの生の反応を見て気付いた課題などはありましたか?
髙木:そうですね、良い意味でもあるんですけど「Project: JUDGE VISIONS」のコンセプトは“実寸大のモンスターと戦えること”だと考えていたのですが、どうやらそうではなく、“カードバトルのアニメに入り込んで自分が主人公になったかのような体験ができること”が喜んでいただけているんだと気付いたんです。
視点が少しだけ違っていたんですよね。
将来、もしも製品化することがあれば、モンスターだけに注力するのではなく、ジェスチャーなどを含めた“カードバトルの主人公になったかのような体験”という没入感を突き詰めていきたいと思っています。
あえて難しいルールにはしなかった
―その他、「Project: JUDGE VISIONS」に込めたこだわりなどがあれば教えてください。
髙木:実はカードゲームのルールにも方針があって。
VRのカードゲームはそもそも世にあまり出ていないので、操作方法や画面の見せ方、UIなどについてはどうしても(プレーヤーにとって)新しいもの、見慣れないものにならざるをえないと思っていたんです。
そこに、カードのルールまで斬新なものを入れてしまうと遊べる人が限られてしまうので、オーソドックスなものにしています。
レベルアップやモンスターの属性などは入れず、すんなり理解できそうな要素を厳選したルールに仕上げています。
もちろん奥深い戦術も体験できればそれも良いと思いますが、それ以上に大事なのが実寸大のモンスターを召喚できる臨場感と主人公になれる体験なので、難しいことはしないという方針にしていました。
―最後に、本記事を見ていただいている方へメッセージをお願いいたします。
髙木:「Project: JUDGE VISIONS」はカードゲーマーはもちろん、大人になってからはカードゲームをしていない方でも没入感が得られ、楽しんでいただけるゲームです。
ぜひたくさんの方に遊んでいただきたいと思っています。
また、感想や「こういう風にしてほしい」などのご要望も大歓迎です。X(旧Twitter)などで教えてください!
製品化を希望して下さる方はぜひ応援のお声をお寄せください。
皆さまのお声で、製品化に進みゆく可能性もあります。
何より、「Project: JUDGE VISIONS」を通じて皆さまがかつて抱いた夢を実現いただければとても嬉しいです!
―ありがとうございました!
「Project: JUDGE VISIONS」ストアページはこちら
GYAAR Studio(ギャースタジオ)公式X:https://x.com/gyaar_studio
「Project: JUDGE VISIONS」公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@ProjectJUDGEVISIONS
©Bandai Namco Studios Inc. Published by ADOOR Inc.