第2スタジオ / Sスタジオ
背景アーティストインタビュー

背景制作から見えたバンダイナムコスタジオの魅力とは

第2スタジオ / Sスタジオ背景アーティストインタビュー

  • 谷口 幸宏

    谷口 幸宏
    第2スタジオ第1プロダクション、 Sスタジオ Wプロダクションで背景リードを担当。
    『リッジレーサーシリーズ』を始めとするレース系の作品の背景制作を担当し、その後『GO VACATION』『大乱闘スマッシュブラザーズfor 3DS / Wii U』『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』の背景リードを担当。
    現在の主な業務は、背景班全体の取り回しやスケジュール管理、チェック作業。
  • 上山 智保

    上山 智保
    SスタジオWプロダクションで背景モデル制作を担当。
    『鉄拳』『SOULCALIBURシリーズ』『GO VACATION』『大乱闘スマッシュブラザーズfor 3DS / Wii U』『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』の背景制作に携わる。
    現在の主な業務は、背景モデル制作の他、シーンのとりまとめやタスク管理など。
  • 鍵﨑 恵

    鍵﨑 恵
    SスタジオWプロダクションでリードアーティストを担当。
    『GO VACATION』『SOULCALIBURⅤ』『塊魂ノビータ』『大乱闘スマッシュブラザーズfor 3DS / Wii U』『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』『マリオカート ツアー』に携わる。
    現在の主な業務はレイアウト・レベルデザイン。
  • 寺島 敏勝

    寺島 敏勝
    第2スタジオ第6プロダクションで背景モデルの制作と監修を担当。
    『リッジレーサーシリーズ』『マリオカート8 デラックス』『ARMS』『マリオカート ツアー』などのタイトルに携わる。
    背景モデル制作の他、レベルデザインやタスク管理も行う。

1背景制作のあれこれ

――まずはじめに、背景制作の魅力についてお聞かせください。

谷口
背景は、その作品をユーザーに印象付ける「絵」を提供するという面がとても魅力的ですね。プレイヤーが受け取る画面からの情報は背景が最も多く、作品によっては画面の90%ほどの面積を背景画像が占めています。
ある場所で見た景色や、風景を伴った体験が記憶に残り、その作品の世界観を感じさせることができる点が魅力的だと思います。
寺島
私も谷口さんと同じく、作品の世界観を構築できることに魅力を感じます。
ゲームではキャラクターが注目されがちだと思うのですが、画面を占める面積が広い背景は十分にゲームの顔になりうる存在だと思います。
鍵﨑
そうですね。私の場合も「世界観の構築」と重なりますが、自分のこだわりのつまった、この世にない唯一無二の空間を作り出せる点が魅力的だと思っています。さらに、その空間を歩いたり、乗り物で走ったりと、インタラクティブに味わうことができる。これはアニメや映画にはない、ゲーム背景ならではの体験ですね。
そうやって自分がこだわって作ったところが褒められていると、「伝わった!」と嬉しくなります。心が通じたような気持ちになります!

――プレイする側としても、背景のこだわりを発見できると嬉しくなります。具体的には、皆さんは背景制作においてどのような部分をこだわったり大切にしていたりするのでしょうか?

寺島
私の場合、背景物のディテールや経年劣化が、どのような過程で生じたものなのかを考えながら制作することがこだわりであり、好きなところです。ただ、背景は全体の統一感が何より大切なので、そこのバランスを崩さないことは大切にしています。
上山
わかります!私も、背景を作っているときには全体的に徐々に統一感やクオリティを上げていくことは意識しています。
・・・と言いつつ、つい細部まで作りたくなってしまうので、「細部は後で」ということを自分に言い聞かせることは大切にしています。気を抜くと先に細部に手を出そうとする自分が居るので、自分との闘いです。
鍵﨑
背景は画面比率が大きいので、全体の統一感はとても大切ですよね。また、ゲーム仕様を理解することも同じく大切だと考えています。
どんなに美しくゴージャスな背景でもそれだけでは50点で、仕様意図に適した表現になっているかが何よりも重要です。背景の美しさも「ゲームをおもしろく遊べること」を満たすための一要素であるという自覚が大切だと思っています。
谷口
仕様の理解は、私も常に心がけています。
具体的な例を挙げると、私の場合はプレイヤーキャラが移動する足場・路面をユーザーが認識しやすいように制作することを意識しています。
歩く足場、掴む場所などは、特にアクションゲームやレースゲームの場合、プレイヤーが感じる楽しさや快適さ、ストレスに直結します。ここは何においても重要な場所だと考えています。
上山
なるほど……。私も改めて勉強になります!
あとは個人的に大切にしているのは、まずは自分が楽しんで作ることです。制作者が楽しんで作っている部分がユーザーに伝わり、良い印象を与える、ということは多々あると思います。

――仕様の意図などを汲み取りつつ、バランス良くクオリティを上げることが大切なんですね。ゲーム開発が大規模化している中、そうしたクオリティの維持は課題の一つかと思います。みなさんは、背景制作は今後どのようになっていくとお考えでしょうか?

谷口
ゲームハードの性能が上がってくるなかで、一つ一つの3Dモデルアセットの制作にかかる工数は年々高くなっています。作り手の人数が限られているなかで質と量をこなすには、配置やパターン出しのプロシージャル化を進める必要があります。実際、アセットの生成や配置などの自動化に、Houdiniのようなツールは必須になってきています。
また最近はAIでの2D描画が盛んですが、コンセプトアート制作だけでなく3DモデルにもAIが絡んで来るのではないでしょうか。
鍵﨑
そうですね、これからはAIを含めた技術の進歩によって高品質化していくアセットを、いかに活用するかが重要になってくると思います。
昔は高品質なアセットを作れるスキルが強みになる時代でしたが、これからはそれに加え、そのアセットを使ってどんなオリジナリティを生み出せるのかという、プロデュース能力が重要になっているように感じます。
上山
鍵﨑さんがおっしゃるプロデュース能力に近いですが、私もアイデア力がこれまで以上に求められるようになると思います。
様々なツールが開発され、個人で背景やゲームを作れる時代ですので、似たような絵柄のものが増えるかもしれません。そんな中、これからはより一層アイデア勝負になっていくのではないでしょうか。

――AIや制作ツールの技術が進歩するとともに、そうした技術を使いこなし、オリジナリティを生み出すことが今まで以上に求められるようになるのですね。

22スタ / Sスタにおける協業のありかた

――それでは次に、「2スタ / Sスタで働くこと」についてお聞きしようと思います。まず、他社様との協業の魅力をお聞かせください。

谷口
やはり、様々な世界観の風景を作れるところですね。
最新のフォトリアルなものからレトロテイストなものまで、それぞれの魅力を解析し、表現しています。
その実現はとても難しい作業ではありますが、楽しく魅力的な作業でもありますね。
鍵﨑
様々なタイプの背景を制作することは、自分の引き出しを増やすことにも繋がりますよね。他には、他社様のものづくりの姿勢を垣間見ることができるのが、とても貴重な経験だと思います。ノウハウを教えていただけることもあり、自社開発では得られないような方法を知ることができます。
寺島
確かに他社様の開発への姿勢を知ることができるのは、とてもおもしろいです。社内でも他部署の方々とお話しする機会があると良い刺激になるのですが、協業する中ではそうした外部からの刺激をとても大きく感じます。

――「他社様との協業だからこそ得られた知見」について、詳しくお聞きしてもよいでしょうか?

鍵﨑
私の場合は、シリーズのタイトルに何作も関わっているベテランの方から、ステージやフィールドづくりのノウハウを丁寧に教えていただきました。
徹底したものづくりへの姿勢からは学ぶことも多く、いろんなタイトルに応用が利く知見を得ることができました。
上山
確かに、そのゲームの特徴をしっかり把握しているからこそ、ならではの魅せ方であったり、作り方など知見が多く得られました。
寺島
ゲームの特徴という意味では、「らしさ」の見せ方は本当に勉強になります。IPへの考え方やディテールの付け方、デフォルメの方針など日々学ぶことが多いです。
谷口
そうですね、たくさんの事例を持っている他社様との協業では、多くの気づきを得ることができます。ゲームの背景として何が重要か、どこにこだわりをもって進めるべきか、またどこを省略し、どこに注力すべきなのかなどなど……。すべて「プレイヤー視点で考える」というところは、自分の中でも再確認できました。

――開発経験の蓄積から学びを得られるのは、協業ならではですね。それでは逆に、社内でのスキルアップや技術情報交換はどのように行われていますか?

上山
業務以外に、平行して技術研究(以下、技研)に参加していますので、そこで知らない技術やツールについて調べて実践し、メンバーと相談しつつ情報交換をしています。フォトグラメトリやHoudini、HDRI撮影など今後の制作に必要な技術について知ることができます。このように本業務以外でも様々な機会がありますよ。
寺島
私も技研のチームに参加させていただいています。所属するプロジェクトでは採用していない技術の習熟や、他部署の方々との意見交換をさせていただきました。
また、社内のSlackで技術情報の共有に活用されているチャンネルに参加し、いろんな情報を吸収できるようにしています。
鍵﨑
私も寺島さんと同じくSlackの色々なチャンネルを見ていますが、他のプロジェクトの背景担当者にも気軽に悩みやトラブルについて質問できる体制になっていますね。プロジェクトにとらわれない背景職同士の情報のやりとりも盛んだと思います。
それと、技研に限らず、参加自由なツールの学習やミドルウェアの研究会などは定期的に開催されていますね。私の場合は勤務時間の10%をUE5の研究に充てています。
谷口
他にも、グループ会社からの制作事例の紹介や意見交換会もあり、時にはアニメの現場の手法についても学んだりする機会もあります。
また社外での講習会への参加も積極的に推奨されています。CEDECにはビジュアルメンバーはほぼ全員参加し、GDCやSIGGRAPHなど海外でのカンファレンスへ参加できるチャンスもあります。私は両方参加させていただきました。

――なるほど、2スタ / Sスタに関わらず社内での知識の共有は積極的にされているのですね。谷口さんはCEDECに登壇されたことがあると聞いています。その経緯や、やってみて良かったことなどお聞かせください。

谷口
『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』において、この作品の開発により学んだことをCEDECで共有しようという話がチーム内からあがりました。背景セクションもこれに賛同し、ディレクターの監修の中で得られた多くの知見を共有するために登壇することにしました。
発表の内容としては、アクションゲームの背景制作で気をつけるべき基本事項を述べました。ただこの基本が開発中は難しく、実践するのに苦労したことを噛み締めながら資料を作ったのを覚えています。 講演の効果については直接はわかりませんが、聴講してくださった方もゲームを制作するときのヒントになったのではないかと思っています。

また、登壇した目的として、学びの共有以外にもバンダイナムコスタジオが同作品を受託開発しているということを知ってもらうという側面もありました。
このことはあまり一般には知られていないのではないかと思っていますが、この登壇をきっかけに少しは弊社の認知度アップに貢献できたのではないかと思います。

3働く場所としてのバンダイナムコスタジオ

――ずばり、「バンダイナムコスタジオだからこそできること」という点があればお聞かせください。

鍵﨑
様々なやりたいことに挑戦できる環境が整っています。もしかすると、「背景を作りたい!」と思って入社しても、「やってみたら違ったな」とか、「あっちの職能のほうが興味あるなー」ということもあるかもしれません。
バンダイナムコスタジオではそんな場合でもサポートが可能です。自分の心の赴くままに、興味を広げてみてください。
寺島
職種間の垣根が低いのは、うちの良いところの一つですよね。職種を超えた交流がしやすく、デザイナーとは別の視点の意見を取り入れやすい環境かと思います。
また、自社IPも豊富なので関連する仕事がしたいという方にはチャレンジできる場があるのは大きいと思います。
谷口
そうですね、作品の幅の広さもバンダイナムコスタジオの強みだと思います。IPの豊富さもそうですし、開発タイトルの対象ハードは、モバイルからハイエンドコンシュマー機・PCをカバーしています。また、インディーから誰もが知るメジャータイトルまで幅広く開発しています。
アートスタイルとしては、スタイライズされたものから、リアル系のものまで揃っています。ここまで幅広い範囲の作品を制作しているデベロッパーはうち以外ないのではないでしょうか。

――職種を超えた繋がりや、開発タイトルの幅広さが「バンダイナムコスタジオらしさ」なんですね。そんなバンダイナムコスタジオでは、どのような人物像の方が求められているのでしょうか?

谷口
プロジェクトでは長い期間作業を共にするので、個々の意見を尊重できる協調性のある方が理想だと思います。その上で、その人なりの強みを活かせるとより良いですね。
鍵﨑
私も協調性のある方や柔軟な価値観を持った方と働きたいです。うちでは様々な考え方の人が働いているので、自分と異なる価値観を認められることは大切かな、と思います。
寺島
異なる価値観を認めつつ、自分の価値観や意見を伝えてくれる方だと嬉しいですね。
そうした方と職種を跨いでコミュニケーションをとり、それぞれの得意分野を発揮してチーム全体で良い作品を仕上げていきたいです。
上山
得意分野がある方は、チームで開発する上で心強いですよね。
最新技術の導入が好き、ライティングには自信があるなど、それぞれの得意分野を持っている方と一緒にお仕事をして、どんな化学反応が起こるのかが楽しみです。
あとはやはり、前向きな方でしょうか。
谷口
そうですね。プロジェクトは常に順調に進むとは限らないので、そのような状況でも前向きに物事を考え行動できる、というのは大事だと思います。

――開発が大規模化していることもあり、チームワークを重視した意見が多いように感じました。みなさんご自身は、バンダイナムコスタジオで今後どのように成長していきたいと考えていますか?

谷口
これまでは、規模が小さなものから大規模開発まで幅広くプロジェクトを経験でき、また有名な製品に多く携わることができました。
今後もより多くのお客さんに触れていただけるような製品に携わりたいと考えています。
また、これから先も常に制作の中心、現場の作業に携わっていたいと考えています。
上山
まず、自分の思い描いている画を思い通りにアウトプットできるようになりたいと思っています。なので、毎年目標を掲げ、それをクリアしていくことで少しでも成長していきたいと思っています。
鍵﨑
私は、巨大バジェットで達成したハイエンドなゲームも好きですが、より心惹かれるのは、限られた条件の中で工夫を凝らしたような、新しい感性が感じられるゲームです。
自分でもそういった表現をしてみたいですね。最近はプライベートで遊ぶゲームもインディーズが多いです。うちでもGYAARスタジオという新しい流れもありますね。
寺島
背景制作のスペシャリストとして新しい技術を取り入れながら、プロジェクトの大小に関わらず良いモノを作っていきたいです!

――最後に、入社を検討している方に向けてメッセージをお願いします。

谷口
多くのタイトルを制作しているスタジオですので、様々なスタイルの背景を作りたい方には、ぜひおすすめしたい職場です。バンダイナムコグループ外の会社様と関われる機会もあります。
上山
バンダイナムコスタジオは風通しが良く、自由にチャレンジできる楽しい職場です。新しい技術を試したい、自分の技術を伸ばしたいなど、やりたいことがある方は、弊社でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
鍵﨑
背景作るの楽しいですよ!あなたのこだわりをぜひ世界に発信してください!
寺島
能力を活かしながら、多くのことを学べる環境が整っています。一緒に良い作品を作って世界に発信していきましょう!

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