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開発エピソード

『鉄拳7』ができるまで(前篇)

開発エピソード第4弾では、「最も長く続く3D対戦格闘ビデオゲームシリーズ」(21年179日)、「最も長く続くビデオゲームの物語」(20年99日)としてギネス世界記録に認定されている鉄拳シリーズより、家庭用『鉄拳7』を前編/後編に分けてご紹介します。
『鉄拳7』は、圧倒的壮快感が人気の世界で最も売れている3D対戦格闘ゲームです。

 
「鉄拳大好き」世代のメンバーが送り出す、最新作『鉄拳7』とは?


大森 靖(おおもりやすし)
インタビュアー
バンダイナムコスタジオ 執行役員

大森: 本日は、バンダイナムコエンターテインメントの製品として、バンダイナムコスタジオが開発している『鉄拳7』について伺います。
まずは鉄拳シリーズの中で『7』がどういう立ち位置なのか簡単に説明してください。


池田: 『7』は主に3つの作品で構成されていて、2015年に鉄拳20周年記念作品としてリリースした業務用の「鉄拳7」から始まり、翌年の2016年に業務用「鉄拳7FR」、そして今回の家庭用の『鉄拳7』という流れとなっています。



池田 幸平(いけだ こうへい)
ゲームデザイナー/『鉄拳7』開発プロデューサー兼ゲームディレクター。

業務用『鉄拳7』では本格対戦格闘ゲームとして初めて全国のゲームセンター同士を店舗間通信対戦で遊ばせてみようという取り組みを行い、『鉄拳7FR』では7~8年前から構想があり、(株)カプコンさんと交渉してストリートファイター(※1)のキャラクターである豪鬼をゲストではなく、宿命の敵として鉄拳の本編に登場させるというチャレンジをしてきました。
そして、業務用の2作品で培った技術を元に鉄拳が好きな人なら誰でも遊んでみたいと思わせる作品を目指して作ったのが家庭用の『鉄拳7』です。
家庭用ならではの要素として今回はストーリーの見せ方やプレイした際の体験にこだわろうと「The Mishima Saga(ストーリーモード)」に注力しました。
孫の代や世界中を巻き込んで争う三島平八と三島一八の親子喧嘩の発端を、初代『鉄拳』より前の出来事から描き、豪鬼もストーリーにしっかり絡み、長く続いてきた三島家の因縁に決着をつけます。
格闘ゲームが苦手な人にも没入感を損なわずにストーリーモードを遊んでもらう為にワンボタンで必殺技やコンボが出せるような工夫をしたり、ギャラリーモードには過去の鉄拳シリーズで語られてきた映像を6時間以上収録してあって、『鉄拳7』さえプレイすれば鉄拳の面白さが分かるようにシリーズの歴史も丸ごと詰め込みました。
鉄拳ファンなら「マストバイ」な製品という位置づけになっているかと思います。

大森: 鉄拳といえば1994年の業務用から始まって、長く続いているタイトルですが、ゲームセンターも昔とだいぶ雰囲気が違うし、家庭用を取り巻く環境も違ってきています。その中でちゃんとビジネスモデルが継続しているっていうのは、けっこう奇跡に近いというか、スゴイ頑張っているな、っていう感じがします。

池田: 業務用のオンラインゲームはそれなりにありましたが、本格対戦格闘ゲームとしてはオンライン対戦に対応した製品はそれまで無かったのです。
『鉄拳7』はちょうどインフラ環境が整ってきたのと、『鉄拳TAG2』の頃にネットワークコードが進化してようやく全国で対戦ができる条件が揃いました。
昔だったらゲームセンターで知らない人に乱入して勝ったり負けたり一喜一憂するのが当たり前で楽しかったのですが、最近の人たちにとってはその行為自体が「怖い」ものだったりするみたいでやり控えを起こしたり、仲間内であっても自分が弱かったら、友達と対戦して楽しいかもしれないけど勝てない。
ずっと勝てない状況が続くと辞めちゃうじゃないですか、こういうプレイを阻害する壁をなくしたかったのです。オンラインの場合、まず対面の人を気にする必要がなくなり、「マッチングシステム」を導入したことで「常に自分と同じような腕前の人と対戦できる」仕組みを提供でき、「いつでも気軽に楽しく対戦ができる」というこれまでの対戦格闘ゲームにはなかった環境と場所が提供できたのが大きかったなぁと思います。
それとやっぱり、ゲームセンターならではのみんなで集まって大会で盛り上がるという文化がまだ日本には残っていて、たまたま良い時期と合致して全国的に盛り上がったのかなと。

大森: なるほどね。鉄拳って昔はほんとにブラウン管で映しているところから始まって、今はネットワークがあって液晶表示の画面です。昔のゲームをそのまま持ってくるにはすごく難しい環境に移行しているじゃないのかなと思います。作っているうえで、難しくなった、あるいは逆に作りやすくなったとかありますか?

中林: 難しくなったことしかない、と思うのですが、そこはプログラマーが一番体感しているのじゃないかな?

工藤: 業務用の時はね、発売できてよかったね。という感じ。

池田: 業務用『鉄拳7』はほんとに奇跡のようなことしか起きてなくて。
一番の奇跡は初回のロケテストですね。
ここでは語りきれないくらい色んな出来事があって…、中でも最も危機的状況だったのは「ロケテスト前日にオンライン対戦がまともに動いてなかった」ことですね…。

工藤: 会社だと問題なくオンライン対戦が出来たのですが、ゲームセンターでオンライン対戦をやると何故か繋がらないって…。

池田: ロケテストの1週間前になって「もう現地に行って泥谷さん(工藤の上司)がROMをビルドするしかないですよ!」って話になり、人間ドック帰りに出社してきた泥谷さんに対して「すみません、1日だけ大阪行って来てください!」と伝えたら、「オレ、バリウムさっき飲んできたばっかりなんだよ!」って。
でも結局そのまま下剤持って新幹線に乗り大阪に行ってくれて、1日のはずが1週間以上帰れなくなってしまったのです。でも、そのおかげもあってプロジェクトの総力をあげて対応した結果、前日までまともに動いていなかったオンラインが深夜になって「繋がりましたぁあああああ!!!!!」と報告がきて、諦めなければ奇跡は起きるのだなと実感しました(笑)
そこからロケテスト期間中はプロジェクトスタッフがずっと張り付いて見守ってなんとか乗り切ったのですが、あの時が一番しんどかったかもしれないね。

工藤: あれがもう、誰がいつ逃げ出してもおかしくないぐらいの状況で。

大森: 当然ながらエンジニアがすごい苦労するのは解かったのだけど、企画面では問題は無かったのですか?通信仕様を入れたことで、ちょっとした遅延が起きるとか、今までの技が使えないとか。



中林 康貴(なかばやし やすき)
ゲームデザイナー/『鉄拳7』リードプランナー

中林: 家庭用では5DRのPS3(※2)移植ぐらいからオンライン対戦が入りまして、当時、ラグが大きく対戦品質が悪いという意見が多く、その頃からモーションのフレームの練り直しを行ったり、バトル部分の技の発生や攻防含めてオンラインを意識するように考え方を変えないといけないところが都度発生していました。
今回はそこまでの苦労は無かったですけど、オンライン対戦をメインと考えて投げや投げ抜けのフレームや下段の発生など部分的にココはこうしないとダメだよねみたいなちょっとした改良は日々ありました。

池田: 一方、企画的に良かったこととしては、昔から大会ではじゃんけんで決めていたような「どっちが1P(右向き)でどっちが2P(左向き)でプレイするか?」というプレイサイドの優位性問題(※3)について、業務用が1筐体1基板になったことでゲームの処理はそのままでレンダリングカメラを反転させることで、どちらも同サイドで遊べるようにプログラマーの工藤くんと検証しながら、新しいカメラシステムを実現できたことが大きいですね。「これでフェアな対戦が出来る!」とプレイヤーの皆さんにすごく評価していただけましたね。

※3:プレイサイドの優位性問題
プレイヤーにとっては「自分のキャラクターが右向きとなるか左向きとなるか」によってレバー/ボタン入力の向きが変わるなどの得意不得意が生じていた。


“時間感覚の密度を操る”技術を結晶させて実現した、「スーパースロー演出」

大森: 今回の『7』で大きくジャンプアップしたところや、ここがウリという部分はありますか。

池田: 原田さん(バンダイナムコエンターテインメント 鉄拳プロジェクト チーフプロデューサー)が鉄拳5の頃からずっと実現させたいと言っていた、「決着の瞬間の直前」をリアルタイムに先読みして、映画のクライマックスのように魅せる「スーパースロー演出」です。
ボクシングや格闘技でいうリプレイのスロー再生では無くて、ゲームならではの、まさしく対戦している最中の「殴り合う瞬間」「技と技が当たりあう瞬間」を先読みしてスーパースローにして、ギリギリの攻防から生まれるクライマックスの瞬間をプレイヤーと観戦者を同じ気持ちにして共有させてあげるための演出です。
鉄拳はライトな層からコアな層まで幅広く遊ばれていますが、「スーパースロー演出」は腕前や技の大小に関わらずすごく盛り上がる瞬間、ものすごくかっこいい瞬間に見えるんですね。誰もが一緒に盛り上がれる瞬間を作り出す、格闘ゲームの進化です。

大森: 「スーパースロー演出」は、決着の時しか起きないのですか?

池田: スーパースローが起きて、死ななかった!また継続します!!ということも起きるんです。9割はそのまま決着するのですが、残り一割ぐらいはそのままスーパースローから通常の速度に戻って対戦が始まって、またスーパースローが起きるとか、そういうアナログ的なところも残っていることが、さらに盛り上げています。ちょっと狙ってはいたけど、いろいろ偶然会重なって起きる瞬間のスーパースローが面白いです。



工藤 径(くどう けい)
プログラマー/『鉄拳7』リードプログラマー。

工藤: プログラム的には「スロー機能」というものを作って、それをいつでもどこでも呼び出せるような形にして、トリガーがいろんな条件がある、という形で実現しています。
スーパースローが一つと、あと相討ちの時に一瞬バシッとなって、ちょっとグアアアとスローになって、また普通に戻るだったりとか。あと、キャラごとのカウンターヒットとか。
魔神拳とか代表的な技が当たった時にちょっとスローをキュッと入れると重たいヒットみたいになるので、いれています。普通のKOの時とか、要所要所入れてます。

池田: 鉄拳で一番大事にしているのが技の当たった時の「壮快感」で、そこをもっとより気持ち良くしてあげようとして、カメラのズームやゲームスピードを変更することでほんとに短い、0.5秒にも満たないようなヒットストップのような演出にも一瞬スローを使っていたりもします。
3D格闘ゲームは技が多いので、「今強い技が当たった、今すごいことが起きましたよ」という事をプレイの流れを阻害することなく、もっと増幅させてあげたい思いで、僕、工藤さん、中林といろんな検証をして実装しました。
個人的には『鉄拳7』が演出的にも派手で一番気持ちよく、技を当てたときの壮快感も最高になっていると思います。

大森: 結構、ゲーム性に影響しそうですね?挑戦だったのでは?

池田: いったん、長い尺のヒットストップを入れてみました、演出として。
ただそうすると、バトルの調整班のほうが、「この尺だとすごくコンボ入れづらい」だとか、「そのあと動きづらいです」とか報告があったので、演出時間を調整して業務用のロケテスト時にユーザーの反応を伺いながら最終的にこの尺ぐらいでいいなってことがちゃんと実感できたところで今の状態になりました。

大森: ユーザーの反応を観て反映できるのは、業務用と連携してやっていて良かったところですよね。



船田 純一(ふなだ じゅんいち)
サウンド/『鉄拳7』サウンドデザイナー。

船田: サウンドの演出としては、普段BGMやSEが沢山鳴っている中、スローになるタイミングでBGMにローパスフィルターを掛けています。
徐々にBGMがこもって、引っ込んだ感じになるのですが、あえて音の情報量を減らしています。
スーパースロー演出になると、「おっ、決まるか?決まるか?」と、みんな画面に食い入るじゃないですか。その画面に食い入る”目”の感覚に集中してもらえるように、耳に入る情報を少し控えめにしています。

池田: 音の情報量を減らすとともに、カメラが寄った瞬間に、被写界深度をちょっとボカしてキャラクター2体が一番目立つようにしています。そこでさらに音も一気にOFFってもらい、総合的に作りあげたものです。観ている人はみんな(スーパースローが)起きると「ウウォッー!」と食い入るように画面を観て、「アアッ、スゴイのきた!」「ヤッター!」みたいな。

大森: なるほどね。モーション的にはスローになることでまずいとこが見えちゃったなんてことは無かったのですか?

池田: そこは正直に言うと、いちばん割を食ったところですね。
鉄拳はモーションがキモの部分で、結構昔ながらのモーションをそのまま残しているんですよ。

山岸: 既存のモーションに微修正を入れる時間があるなら、新しいモーションで遊びを追加していく方針なんです。ただ、古いモーションがスローで再生されると足が腕にめり込んでいたり、腰がねじキレそうになっていたり、本来は見えなかった部分も見えてしまう。文句は言ったのですが、「そういうもんだ」と一蹴されて。

(一同笑)

池田: 当時は「ゴメン、スローだし仕方ない。そういうものだから!」と。
でも本当に気になるものはモデルとモーション担当が「これだけは」というものを修正して、だんだん直していきましたね。

山岸: ちょっとは直しているのですが、直しきれないんですよ、データが膨大過ぎて。

池田: 下手に直すと、あのカッコ良かったモーションを返してくれ!みたいな声(反応)が色んな所からでてくるんです。

中林: 気持ち良さがね。

大森: わかるわかる。アニメーションって勢いが重要で、リミテッドアニメなんかが典型的だけど、意図的に崩しているものの方がカッコ良かったりもする。

山岸: めり込んでいるところが重要だったりして、思いっきり振った腕がヒザを貫通していたりするのですが、その振りの勢いが気持ち良さを表現していて。
だから直せないのです。それを今風に変えると、「ぬるくなった」とか「気持ちよくない」とか。

池田: 20年以上遊んでいるものだから、そこはなかなか…「秘伝のたれ」みたいなもんだよね。

山岸: だから、そこはもう「いじらない」。いじっちゃいけない部分なのです。

 

※記載されている会社名・製品名は、各社の商標、または登録商標です。
(※1)「ストリートファイター」はCAPCOM U.S.A., INC.の登録商標です。
(※2)" PS3"は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。

「鉄拳7FR」
TEKKEN™ 7 FATED RETRIBUTION & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
©CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIGHTS RESERVED.
「鉄拳7」
©CAPCOM U.S.A., INC. ALL RIHGTS RESERVED.
TEKKEN™ 7 & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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